2020年09月12日

ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー/BOOKSMART

 これもまた去年のハリウッド・エクスプレスで紹介されていた映画。 オリヴィア・ワイルド初長編監督作品ということで・・・役者だけでなく映画制作もやるんだ、と興味を覚えて。

  ブックスマートP.jpg 最高な私たちをまだ誰も知らない

 高校生のエイミー(ケイトリン・デヴァー)とモリー(ビーニー・フェルドスタイン)は一流大学への進学を決め、明日の卒業式を控えている。 しかし遊び放題で内心バカにしていた同級生たちもレベルの高い大学や企業に進路を決めていて愕然とする。 勉強しかしていないのに高校生活が終わってしまうことを悔い、学校の人気者ニック(メイソン・グッティング)が留守の叔母さんの家で開く卒業パーティーに殴り込み、青春を一晩で取り返そうと誓う・・・という話。
 BOOKSMART=紙の上では秀才、ガリベンの意。 話の進み具合がとてもパンク。 

  ブックスマート1.jpg 学校でいけていない人たちなのかと思ったら。
 モリーは生徒会長をやっていたし、エイミーは夏休みにアフリカでボランティアをしたりと日本の地味な高校生とはレベルが違うんですけど(自分の高校時代を思い返しても何一つ重ならない)。 しかもトイレが男女兼用(性別の区別がない)だったりと、もしかしてこの高校のレベルが無茶苦茶高いのでは?、と思わされ。

  ブックスマート3.jpg ま、こんなことをしてたやつらには負けたくないよね。
 特にこれといったエピソード満載ではないのに、ひとりひとりのキャラが立っているので、「こういう人、いるよね〜」とニヤニヤしてしまう。 ちょっと大袈裟にはしてあるけど、ステレオタイプではない個性。 エイミーもモリーもただの真面目キャラじゃないので(むしろ、結構ずれているところあり)、観客としてはどの視点で見るかによって変わってくるけれど、「どれも自分ではない」というのも他者を理解しようとするためには必要かも。 誰しも一面だけでは判断しきれないものを持っているから。

  ブックスマート4.jpg 演劇オタなこの人たちの話も観てみたい。
 いまどきらしく、LGBTQは当たり前視点が心地よい。 彼がカラオケで熱唱するのがアラニス・モリセットだなんて、胸が熱くなっちゃったわ(2019年に高校を卒業する人たちもアラニスを聴くのかと)。 いや、この話が2019年卒業とされたことに意味がある。 あんなバカ騒ぎ的パーティーができる最後の年かもしれないから。

  ブックスマート5.jpg 超お金持ちの息子ジャレッド(スカイラー・ギソンド)も愛すべきキャラ。 神出鬼没のジジ(ビリー・ロード)も面白すぎ。
 青春成長もののジャンルとしては特に新しくはないのだけど、現在的フラット視点で女子を主人公にしているところが推しポイント。 逆に、ごりごりマチズモな人には理解・共感ポイントがないかも。 若い人たちの未来には希望があふれていると(あふれていないといけないと)思います。
 帰って来てからアラニス・モリセットの『jugged little pill』をフルで聴き直しちゃった(映画に使われているのは“You Oughta Know”)、名盤!

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2020年09月11日

今日は11冊(2020年9月10日時点)。 その2

 新刊がいっぱい出た続き。

  ミステリと言う勿れ7.jpg ミステリと言う勿れ 7/田村由美
 もう7巻とは早いなぁ。 新しいエピソードに突入、山荘モノに。 でも第一巻のインパクトを超えることはなかなか難しいのか。 やっとカレーをつくる久能くんの姿が。 久能くんの過去ってこれまで出てきたっけ?、とこれまでの巻を読み返さないといけない場面も。

  秘密0−09.jpg 秘密 season0 /清水玲子
 8巻からの続きのエピソード、この巻で終わっていない感じ。 若干間が空いているので、前を読み返してからのほうがいいかなぁ。

  13・67 1.jpg13・67 2.jpg 13・67/陳浩基
 <華文ミステリ>というジャンルをつくった著者の、現時点での代表作の文庫化。 上下巻にする必要はあったか・・・あぁ、700ページぐらいはいいんじゃないの、とあたしの感覚は多分麻痺している。

  ラウィーニア ルグイン.jpg ラウィーニア/アーシュラ・K・ル=グウィン
 ル=グウィン最後の長編、文庫化。 古代イタリアを舞台にした神話的世界。 2018年になくなったと改めてびっくり、もっと前のことのような、つい最近のことだったような。 今9月だとわかっているけど、体感的には6月よりも前の感じがするし。

  癌病船応答セズ.jpg 癌病船応答セズ/西村寿行
 先月の『癌病船』に続き続編も復刊。 というかこっちが本命だったのかなぁ、致死率100%の新型ウイルスが・・・って話だから。

ラベル:マンガ 新刊
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2020年09月10日

今日は11冊(2020年9月10日時点)。 その1

 ついにアンソニー・ホロヴィッツの新作が発売!
 ミステリ豊作の秋がやってきた!
 自分の体感的には全然秋ではないけど・・・最低気温は20℃を切ってくれないと。

  その裁きは死 アンソニー・ホロヴィッツ.jpg その裁きは死/アンソニー・ホロヴィッツ
 『メインテーマは殺人』の続編。 “わたし”(アンソニー・ホロヴィッツ)が語る探偵ホーソーンとの日々と次の事件。 今年の翻訳ミステリの本命、登場!
 『カササギ殺人事件』の続編は来年刊行予定だそうな、またしばらくホロヴィッツブームは続きそう!

  娘を呑んだ道 ガラスの鍵賞2019.jpg 娘を呑んだ道/スティーナ・ジャクソン
 小学館文庫から新たな北欧ミステリ。 2019年ガラスの鍵賞、2018年スウェーデン最優秀犯罪小説賞、2019年スウェーデンブック・オブ・ザ・イヤーの三冠をとっているそうで・・・賞がすべてではないですが、期待できそうな感じ。 でも訳が田口さんということは、英語版からの翻訳だな。

  ストーンサークルの殺人.jpg ストーンサークルの殺人/M・W・クレイヴン
 2019年英国推理作家協会賞最優秀長編賞(ゴールド・ダガー)受賞作。 勿論賞がすべてではないですが、ゴールド・ダガーは当たりじゃないとまずいし、今の時代も反映されてるはずだし、期待しちゃうよ。 連続殺人犯モノだ!

  時間旅行者のキャンディボックス.jpg 時間旅行者のキャンディボックス/ケイト・マスカレナス
 帯に「過度の時間旅行はあなたの精神を損なう恐れがあります。」とあるのにぐっと来てしまう。 時間SF+ミステリの感じ。

  それまでの明日 原りょう.jpg それまでの明日/原ォ
 <私立探偵・沢崎>シリーズ最新作、待望の文庫化。 『そして夜は甦る』や『私が殺した少女』って読んだの90年代ではなかったか・・・すごいな、時間って振り返ると15年前も25年前もあまり変わらない気がする。

  レベル4致死性ウイルス.jpg レベル4 致死性ウイルス/ジョーゼフ・B・マコーミック&スーザン・フィッシャー=ホウク
 CDC特殊病原体部の部長となった公衆衛生の専門家が、アフリカでエボラ出血熱やラッサ熱の感染経路を調査した30年間の記録、ハヤカワノンフィクション文庫。 COVID-19のおかげで90年代後半のエボラ以後のノンフィクションが復刊されているのはうれしいのだがうれしくない。 結局、ヒトは学べないのか・・・。

ラベル:新刊
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2020年09月09日

ガーンジー島の読書会/メアリー・アン・シェイファー&アニー・バロウズ

 去年公開の映画『ガーンジー島の読書会の秘密』で存在を知る。 映画は時間が合わなくて観に行けなかったんだけど、近々WOWOWにて放送予定なのでそれで観るつもり。 なので原作であるこちらを先に読むことに。 絶版(品切・重版未定)のため、図書館から借りました。

  ガーンジー島の読書会1.jpgガーンジー島の読書会2.jpg 中身はほぼ全編手紙のやりとり。
 筆名で第二次世界大戦中の出来事を面白おかしく書き記す記事を書いていたジュリエットだが、彼女が描きたいのは人間のリアルな感情の動き。 手に入れた本にあなたの住所と名前が書いてありました、とガーンジー島に住む人からジュリエットに届いた手紙がきっかけで、ジュリエットはガーンジー島の住人たちと文通を始める。 ガーンジー島は大戦中ナチスに支配されていて島民は不自由な生活を強いられていたのだが、“読書とポテトピールのパイの会”の存在が島民の心を支えていたという。 ジュリエットはその会のきっかけを作ったエリザベスという女性に会いたくてたまらないが、エリザベスはナチスの収容所に連れていかれて行方不明だという・・・。

 往復書簡で成り立つ物語といえば『あしながおじさん』だけど、本作はジュリエットを中心に様々な人が書く手紙(ときどき電報)が入り乱れる(宛先がジュリエットばかりではない)。 最初は人物関係がわからないけれど、手紙を読んでいくうちにわかってくる。 相手への好意とか、信頼とか、そしてそれを書く書き手の気持ちとか。 一通の手紙がそれほど長くはないので、短い章の積み重ねでタペストリーをつくるかのごとし。
 ガーンジー島の人々が経験した苦難、戦争の決して隠せない爪痕、終戦前に生まれた子供が今は元気に育っていく様子、ジュリエットの恋模様(フェミニズム仕様)、秘密の手紙などなど、多くの断片がほぼ等しい重さで語られる。 重苦しく悲しくなりすぎず、ハッピーでも浮つきすぎず、強く印象に残るのは希望を失わず自分の信条を偽らないで生きようとする人々の姿なのだ。
 読書会で、「本のことを誰かと話せるのがうれしい」と言った人がいた。 それだよね! 本が好きでもきらいでも、そういう話ができることがうれしいという気持ち。 <読書会>って憧れるけどいまいち正体がつかめない(どう実施したらいいのかわからない)あたしにとって、「それでいいんだ!」と気づかせていただきました。
 ただ、読書会自体の描写は少なくて・・・ジュリエットと島民たちの交流のほうにページ数は割かれている。 いや、それはそれでいいんだけど。

ラベル:海外文学
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2020年09月07日

グッバイ、リチャード/RICHARD SAYS GOODBYE

 いかにもジョニー・デップありきの企画だよなぁ、どうしよう、と少し悩んだ。 しかし最近のジョニー・デップのリアルな感じを表現していることに価値があるわけで。 同時代を生きているというか、近い世代のスーパースターだから。

  グッバイ、リチャードP.jpg 人生はくそったれで、愛おしい。
  余命180日。残された時間をありのまま生きる男が見つけた人生の答えとは――。

 大学教授として文学を教えるリチャード(ジョニー・デップ)は、がんで余命六ヶ月であることを告げられる。 驚愕するリチャードだが、残りの人生やりたいことをやることにする。 毎日飲んだくれ、タバコも吸ってみて、学生からマリファナももらう。 講義の学生も選びに選んで少人数で実施。 娘のクレア(ゾーイ・ドゥイッチ)は急激に変わった父親にあきれつつ、何かが変だと思い始める・・・という話。
 思っていた以上に“小品”のつくりだった。 ジョニー・デップはほぼ出ずっぱりなのに“熱演”とか感じさせず、程よい力の抜け具合。

  グッバイ、リチャード1.jpg 受け入れられずにパニックになるリチャード。
 章立てのつくり、会話が中心で進む感じ、シニカル度合いなど、イギリスっぽいんだけど・・・でもアメリカかな?、と悩む。 大仰な構図とか、顔のドアップをあえて避ける感じとか。 あえて感情移入をさせないつくりにしているのだろうか。
 余命宣告されて人生をひっくり返す設定なら『ブレイキングバッド』が思い浮かぶけど、あれに比べればリチャードのやることは小者感丸出しなので冷たい目で見てしまうのだろうか。

  グッバイ、リチャード3.jpg ゼミ発表も外でやる。
 学生たちは以前のリチャードを知らないので、彼の無茶苦茶なやり方に「ぽかーん」なところはジェネレーションギャップそのものなのかしら。 学生たちがリチャードに触発されていい方向に成長、みたいな流れにもならないので、「そんなんでいいのか!」と思う。 特にある場面では、「それ、男ならいいのか?!」(女であればヤバイ―男であればいいという問題ではなくない?)とモヤっとしてしまった。

  グッバイ、リチャード2.jpg 親友のピーター(ダニー・ヒューストン)が超いいやつ!
 リチャードは病気のことを同僚のピーターにだけ話すんだけど・・・このピーターが繊細ではないけどすごくいいヤツで、彼の直球な言動がリチャードのひねくれ具合を照射する。 死を目前にしても、五十歳過ぎてても、人間はそう簡単に変われないという皮肉なのであろうか。 若い頃はいろいろあったけど、その後落ち着いたよね〜、と思われたジョニー・デップがまさか中年の危機で若いセクシー美人に走るなんて、やっぱり若い頃の感じは変わっていないのか、的な。
 そう感じられてしまうのはちょっと残念なんだけど・・・個人的には「モロ文系の人の苦悩って感じで合理性が見えなくて意味不明」って思えてしまったのがよくなかった(今ひとつ話に入り込めなかった)かなぁ。 ときどきいいことは言うんだけど、あまり心には刺さらない。
 というか、あのラストだと途中でリチャードが見つけたものが全否定されないかな? それでも、一度決めたことを貫き通すことに意味があるということなのか。 考えさせられはするけど、いまひとつ腑に落ちない映画だった。

posted by かしこん at 18:11| 兵庫 ☁| Comment(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年09月06日

インフルエンス/近藤史恵

 そういえば、近藤史恵で「これは読まねば!」というやつがなかったっけ、と思い出す。 もう何年か経つかも、そろそろ文庫が出てもいい時期かもしれない。 でも思い出してしまったので、図書館蔵書を確認したら予約を待たなくてもすぐに借りられる状態だった。 これはもう読むしかないのである。 発売は2017年11月のようです。

  近藤史恵 インフルエンスA.jpg近藤史恵 インフルエンスB.jpg ほんとは背表紙ともつながっているのだが。
 小説家の“わたし”のもとに、自分と友人ふたりの関係を基に小説を書いてくれないかという趣旨の手紙が届く。 一笑に付した“わたし”だが、いろいろと考え直して手紙の主に会ってみることにする。 友梨と名乗る女性は“わたし”と同年代、大阪の大規模な団地で育った子供時代からの話をはじめる・・・という話。

 “わたし”と作者をあえて同一視させる流れ、作者とあたしは大体同年代なので「こういうこと、あった」と感じさせられて(実際、子供の頃のことをいろいろ思い出してしまった)、すっかり物語に引き込まれてしまった。 一年ぐらいだろうか、あたしも団地のようなところに住んだことがあったから、余計に。
 学校に行く前から親しい幼馴染と学校で新たに生まれる友人関係との兼ね合いなど、忘れたふりをしているが今でもどこか引っ掛かりを持ち続けていることを突きつけられる。 昔、うまく構築できなかった人間関係を埋め合わせるように今はいい距離感をつくることに苦心してきたのかも。 それでもときどき失敗してしまうけど、それでも昔よりましになったと思う。 そう思えることは、しあわせなのだ。
 友梨と里子と真帆の関係は、その中に自分がいるようだ。
 中学生の時のエピソード、もっと読みたかった。 ソフトカバー300ページ以内なんかではなく、もっと長く読みたかった。
 「彼らの逸脱は、不良とかそういう言葉で言い表せない、狂気に近いものなのだ」と表現される中学校で露骨に荒れ始める人たちのことに戦慄する。 近くにはいなかったけど、同学年には確かにそういう人たちがいた。 多分すべての年代で、大なり小なり。
 あたしはこういう近藤史恵が好きなのだ。 だから中学生パートがもっと読みたかったのだろう。
 三人のその後の物語は、あまりに強引に思えるが必然だ。 金田一耕助が言っていた「一度殺人を犯してしまえば、別の機会にも容易にその手段を用いてしまう」そのままだもの。
 救いがない中の、わずかな救い。
 あぁ、なんだか、野沢尚の『深紅』を読んだときのような気持ちに。

ラベル:国内ミステリ
posted by かしこん at 17:03| 兵庫 ☔| Comment(0) | ☆ 読んじゃいました | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年09月05日

赤い闇 スターリンの冷たい大地で/Mr. Jones

 旧ソ連関係のものが続いている感じ。 そういうタイミングってあるよね〜、ということで観てみることに。 ピーター・サースガードがどんな役回りなのか気になるし、ポスター右側の女性には明らかに見おぼえがあるし。

  赤い闇P.jpg 皆、狂うほどに飢えている――

 第一次世界大戦と第二次世界大戦の間の時期。 ジャーナリストとして身を立てたいイギリス人のガレス・ジョーンズ(ジェームズ・ノートン)は、少し前にはヒトラーへの単独取材もしたことがあるのに今は政治家のブレーンの一人にすぎない状態。 世界恐慌のさなか、ソ連だけが好景気である謎を知りたくてジョーンズは単身モスクワへ向かい、ピューリッツァー賞を受賞したことのあるジャーナリスト、デュランティ(ピーター・サースガード)と知り合う。 モスクワにいるジャーナリストたちの生活ぶりに疑問を覚えたジョーンズは、ソ連当局の監視をかいくぐってウクライナを目指すが・・・という話。
 冒頭、謎の人物がタイプライターを叩いている。 それがジョージ・オーウェルで、書かれているのが『動物農場』であるとわかることで「はっ!」っとさせられる。

  赤い闇2.jpg <退廃>を絵に描いたようなモスクワ生活。
 ピーター・サースガード、いかにも何か含みがある人。 デュランティの同僚(アシスタント)のエイダ(ヴァネッサ・カービー)は社会主義の理想を信じている人。 見たことあるはずである、彼女は『M:I/フォールアウト』で慈善家を名乗りつつ実は闇の顔役だったあの女性ではないか。
 主な舞台はソ連なんだけど、心情の見える登場人物はソ連人ではないという。 権力側と報道機関の“協力”という名のおぞましい関係は、国民不在。 そんな中でジョーンズの“空気の読めない行動”がその異常さを炙り出していく。

  赤い闇5.jpg 極寒のウクライナ。
 まるで色のトーンを何段か落としたかのように、ウクライナの色は薄い。 ひたすら雪の白、それ以外はくすんだ灰の色。 まだまだ暑い時期であるが、ウクライナのシーンだけは観ていて寒さがガンガン伝わってくる。 しかしその寒さと飢えは命を奪うもので・・・ただ「涼しい」と喜んではいられなくてただただつらいのだ。
 だから能天気なイギリス人として普通に振舞うジョーンズに「それはまずいだろ!」と動揺しまくる。

  赤い闇3.jpg 彼が恐ろしい場面に出くわして実情を心底理解するまで、観ている側は彼の言動にハラハラドキドキすることになる。
 情報がないということは、こんなにも見えないのか。 同時代人のジョーンズよりも未来を生きるあたしたちのほうがソ連の、スターリン政権下のヤバさを知っているから彼の振舞いに非常識さを感じてしまうけど、それが当たり前なのだ。 そのこともまた恐ろしい。
 ウクライナの状況はまるでホロコーストのようだった(実際、ホロドモール ‐ ホロドが飢饉、モールが疫病の意 ‐ と呼ばれているが、これまで物語であまり描かれたことがない。 あたしも『チャイルド44』で知ったし)。 この場面に制作側の心意気を感じた。

  赤い闇4.jpg デュランティは現代人の象徴のようだ。
 かつては理想を夢見ていたけれど、あきらめて、受け入れて、自分の利益と保身だけを望む。 心身ともに蝕まれているとわかっていても。 エイダはまだあきらめていないけど・・・ソ連の監視を「Big Brother」と呼ばせるところにも現在視点の作為を感じますよ(ジョージ・オーウェルの『1984』で監視する権力をそう呼ぶ)。
 ジョーンズが実在の人物なので描けなかった部分もあって消化不良の面もあるけれど、実在の人物であるが故にエンディングテロップの衝撃が。 ジャーナリストとしての矜持が彼の中で芽生え、その気持ちで生きていったのか。
 最近、1935年には日本でも当時のウクライナ飢饉について著作が出ており言論界では知られていたという研究結果もあり、いくら隠蔽しようとしても事実は外に出てしまうことは明白なのだが、隠蔽しようとする側の存在が事態を悪化させることもまた明白。 それは常に起こり、これからも起こるのだ。 1933年ぐらいを描きながら、これもまた今を描いた映画。

posted by かしこん at 18:54| 兵庫 ☔| Comment(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年09月04日

お久し振りの洋食屋! @ ぐらたんはうす ぱん

 先日、髪を切りに行ったのである。
 いつまでたっても暑いなぁ!、ということでばっさり切ってもらう(といっても髪形がもともとショートカットなので、伸びて広がった分をばっさり、という感じ)。
 ヘアサロンを出たのが14時半くらい。 うーむ、ランチをどこかで食べたいが、どこがいいかな?
 しかし、「ここはどうだろう?」というお店はなんか人がいる・・・そんなのが二軒続き・・・「あ、ずっと行っていない洋食屋があったじゃないか!」と思い出す。 センター街の地下にある、小さな洋食屋さん。 おそるおそるのぞいてみたら・・・あった! あったよ! ちゃんと営業してた!
 テーブルクロスやカトラリーは変わっていたけど、人を悩ませる豊富なメニュー展開は健在。 そうだ、あたしはいつもこの店で悩んでいた・・・。
 マイセットUをオーダー、その枠の中からいろいろ選びます。

  20200826ぐらたんはうすぱん1.JPG 本日のパスタ:キノコの和風パスタ
 特別な材料を使ってる感はないのだが、味はまろやかで安心感ありつつ、さりげなく細かい仕事をしているのですよ。 キノコたっぷり、やさしい味。 あ、この前にミニサラダが来ました、フレンチドレッシングで(多分自家製)。

  20200826ぐらたんはうすぱん2.JPG チキンのチーズはさみ揚げ
 いくつかあるおかず欄の中から一品選びまして。 チキンのチーズはさみ揚げという名前からくるイメージとは違うものが来た! 鶏肉は胸肉で、ロール状に巻かれています(中心のチーズはとろけております)。 無雑作にかかっているトマトソースも、タマネギやニンニクの味がする。 揚げたて、あつあつ! 衣は最初サクサクだけど、どんどんソースを吸ってしんなり、おかげで最後までソースをしっかり食べられる(衣はパン代わりなのか)。

  20200826ぐらたんはうすぱん3.JPG パンプキンプリン&アイスティー
 デザートとドリンクも選べます。 パンプキンプリンはちゃんとカボチャの味がしっかり。 舌触りなどもいかにもカボチャプリン! 安定のお味です。
 これで1050円って、5年前くらいと値段が変わってない気がするんですけど! 大丈夫ですか!
 お店の方もあたしの記憶通りの方だった・・・シェフはちょっとご高齢の感じだったのよ、でもあまり変わっていない気がした。
 このお店の味、結構好きだったのに何で来なくなったのかしら・・・あ、定休日と知らなかったのと閉店時間を過ぎていたのと、二回続けて行けなかったことがあって、ちゃんと調べなきゃと思って、そのあとタイミングがなくて忘れてしまっていたのだ・・・。 だいたい行くのは映画の前の時間だったから、ここ何年か映画の時間にギリギリでお店に寄る余裕がなかったからか・・・あぁ、なんかすみません。
 コロナ禍で営業も大変だったことでしょう。 しばらくはちょこちょこ通わせていただきます! ぐらたんはうすなのに、今回グラタンを食べてないし! グラタンもおいしかった記憶ありなんで。

posted by かしこん at 02:10| 兵庫 ☁| Comment(0) | ごはん・お茶の時間 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年09月03日

カーテンコール!/加納朋子

 宮部みゆき、近藤史恵ときたら、次は加納朋子であろう。
 翻訳ものを中心に読んでいると、日本人作家、しかも前からずっと読んでいる人の文は読みやすくてしょうがないというか、がんがん読めてしまうんですよね。 だからちょっと物足りないというか、もっと読みたい気持ちになってしまうのだろうか。

  カーテンコール! 加納朋子.jpg アンコールではなく、カーテンコールであることがポイント。
 私立萌木女学園は歴史のある女子大学。 しかし学生減少により閉校が決まった。 最後の卒業生を出す年、このままでは卒業できない学生たちをどうにか卒業させようと半年間の特別補講合宿をすることに。 集められた十人ほどの学生は、みなそれぞれに問題を抱えたものばかり・・・という話。

 これまた連作短編形式。 単位を取れない学生たち一人一人の事情がそれぞれの視点で語られていくのだが・・・これが最近の悩みだよね〜、という。 いや、昔からあったことだけど、最近明確化されたこと。 ただ連作短編形式なので、一人一人のキャラに深まりがないというか・・・そもそもそんなに深みはないのかもしれないけど。 ひとつの悩みが大きすぎて、まずはそれだから。
 そんな成長物語なのかといえばそれだけではなく・・・いや、成長物語ではあるんだけど。
 これは宮部みゆきの『絶対零度』(『昨日がなければ明日もない』収録)でもそうだったんだけど、「気立てのよい女性が不条理なまでのひどい目に遭い、誰も助けられなくて、彼女の死でまわりの人間が何が起こっていたか気づく」っていうのつらすぎるんですけど! ・・・それが、時代的に女性という存在に割り振られていた役割による弊害だというのはわかっていますし、だからこそ現在から未来にはそんなことがあってはならないのだから語り継ぐことは必要だけれども・・・これ以外に方法はないのか、と。
 それを受け止めて立ち上がる学生たちだから未来を信じることができるし、「ただのいい話」で終わらせないためには必要だったのかなぁ。
 一気読みしたし、ほのぼのできる部分もあるんだけど・・・『絶対零度』と続いたのでやりきれなさが残るわ。

ラベル:国内ミステリ
posted by かしこん at 02:43| 兵庫 ☔| Comment(0) | ☆ 読んじゃいました | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年09月02日

震える教室/近藤史恵

 図書館から一緒にこれも借りてきてしまった。 『マカロンはマカロン』もあっさり読み終わってしまったので、近藤史恵要素に物足りなさを感じて(「近藤史恵要素とは何か」といわれると難しいが、宮部みゆきとはちょっと違う感じの後味の悪さである)。

  近藤史恵 震える教室.jpg この装丁は文庫版。
 大阪、心斎橋にある私立凰西学園は歴史のある女子高。 公立高校の受験に失敗した真矢は、内部進学9割のこの高校に入学した。 心細かったが、ほどなくして同じく外部進学の花音と仲良くなる。 何故かはわからないが、真矢は花音とふれあうと不思議なものが見えるようになってしまうことに気づき・・・多くの少女たちが集ってきた学園にまつわる謎に向き合う真矢たちの一年間。

 連作短編形式。 ミステリかと思ったら結構ホラー。 後半の『捨てないで』からミステリ度が強まり、ホラーとの融合が高まる。 最初からこのトーンで行ってくれたらもっと盛り上がったかも・・・でも答えの出ない不可解さが残るのがホラーテイストのよさだから、そのバランスはむずかしい。 短編だから「あまり語られない」、高校生の真矢たちには事実の追及をしてしまうともっと恐ろしいことがわかってしまうから、あえて追求しないという選択肢があり、だから謎は謎のままという余韻がホラー要素を高めているのだけれど、短編の数が少ないので「もうちょっと・・・」と期待してしまう部分あり。 そう、もうちょっとページ数が欲しかった!
 でも、その「短いところでバサッと切り、あとは余韻で」というのが近藤史恵的なところでもあるんだよな・・・。
 この物足りなさ(言葉を尽くしすぎずに、全部言わない、行間で感じさせる)が、個性なんですよ。 でももうちょっと踏み込んでほしい・・・それが読者の妄想をかきたてます。 だからクセになっちゃうのかな。
 霊よりも、コワいのは人間の妄執というか。
 続編というか、高校2年生になった真矢たちのことも読みたいんですけど・・・。

posted by かしこん at 01:40| 兵庫 ☀| Comment(0) | ☆ 読んじゃいました | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年09月01日

20周年記念メニュー @ Vis-a-Vis

 8月はフレンチレストラン“Vis-a-Vis”のオープン記念月ということで、毎年スペシャルメニューが組まれる。 しかしこの状況故、行けるかなぁ、どうしようかなぁ、とぐずぐずしているうちにもう月末が近づいている。 いかん、とりあえずお店に相談してみよう、31日ディナータイムでも大丈夫でしょうか。
 あたしの体調が大丈夫なら大丈夫ですよ、ということで、スペシャルメニューを駆け込みで堪能する。

  20200831ヴィザヴィ (1).JPG 食前のお楽しみ
 あっさりピクルス、という感じか。 食欲が増進します。 ぺろりと食べちゃった。

  20200831ヴィザヴィ (2).JPG 前菜:ハモと季節野菜のサラダ
 葉も特にこだわっていないこともなく、食べ応えたっぷりのサラダでもあり。 青じそっぽい味がするんだけど、見たことがないバジル系の何か? ラビゴットソースとバルサミコ酢がかかっていますが、バルサミコ酢が強くてラビゴットソース単独の味がよくわからない。 鱧は軽くて、ちょっとジューシー。

  20200831ヴィザヴィ (3).JPG スープ:冷たいトマトのクリームスープ
 バジルとオリーブオイルのソースがかかってます。 全部ざっくり混ぜてどうぞ、とのことなので混ぜまくりました。 トマトとバジルとオリーブオイルの味が口の中でそれぞれ主張、でも喉を通るときにはすっきりまとまって残らない。 おいしいんですけど!

  20200831ヴィザヴィ (4).JPG メインのお料理:牛ロース肉のポアレ 玉葱とキノコのソース
 とにかくでかい、牛ロースがでかい!
 メインはヒラメのオリーブオイル焼きと迷った、すごく迷ったけど「メインは肉がいいなぁ」とこちらを選んでしまったけど・・・なんですかこの迫力(もしヒラメを選んでいたらどういうことになっていたのか知りたい・・・)。 野菜、甘い! ソース、うまい! 牛、うまい、キノコ、最高!

  20200831ヴィザヴィ (5).JPG デザート:フロマージュのポット・ド・クレーム
 ソルベはマンゴー、これが後味ものすごくさっぱり。
 ポット・ド・クレームにかかっているのはハチミツ。 ちょっと一瞬くせがあってすごいハチミツなのかと思ったら、「アカシアのハチミツですけど・・・別に特別なものではないですよ」と言われてしまった。 フロマージュ部分はチーズがめっちゃ濃い。 濃いレアチーズケーキみたい。
 本日もたっぷりいただきました。 ごちそうさまでした!

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2020年08月31日

昨日がなければ明日もない/宮部みゆき

 図書館からお呼び出しを受ける。 結構長い間待っていた本の順番が来たそうだ。
 まだまだ予約の列は長いだろうからできるだけ早く返さなければ。 でも読み始めたらすぐ読み終わってしまうんだろうなぁ、いつものことだが。 シリーズ物は続きをすぐ待ってしまうから困る、面白いほどに次を待つ時間が長く感じるから。
 そんな宮部みゆきの<杉村三郎シリーズ>、『誰か』・『名もなき毒』・『ペテロの葬列』・『希望荘』に次ぐ第5弾。

  昨日がなければ明日もない 宮部みゆき.jpg 私立探偵開業後としては2作目。
 連作中短編集、『絶対零度』・『華燭』・『昨日がなければ明日もない』収録。
 杉村探偵事務所にやってくる人々は普通に善良な方々か、かなり困った方々かにわけられる。 杉村さんがかかわることになる事件も、結果的に微笑ましいものもあるけれど、大変後味のよくないものもある。 本作では読後最悪・ほどほど・最悪の順。 でもこのシリーズは後味の悪さがウリなので・・・。
 それにしても、『絶対零度』と『昨日がなければ明日もない』の後味の悪さはちょっと種類が違う。 『絶対零度』はもっと突き詰めれば長編になる内容だけど、そうするとあまりにひどすぎる内容になってしまうからだろうか。 今のままでも十分胸が悪くなりますが、もやもやしてしまう気持ちを晴らしてほしいと思ってしまうのも、“厄介な被害者感情”なのかもしれません。 自戒します。
 『昨日がなければ明日もない』は・・・家族から逃げるという選択肢をもっとみんな考えるべき! そして「家族の後始末は当然家族で」と無責任に考えることもやめるべき。 一連の事件は2012年ぐらいが想定されているのであれですが、今は令和だから! しかしそんな風に割り切ることのできない人が苦しむのもまた家族という呪縛故。 あたしは人でなしなので、必要とあらば家族の縁は切りたいと思います。
 杉村さんの探偵としての成長と、でもやっぱり失うことのない人のよさ(それはときに探偵の足を引っ張ることになる)を見ることが、シリーズ物としてのたのしみでもあるけれど、もっとしっかりしてよ杉村さん!、とも思ってしまったり。
 あぁ、結局、一日で読んでしまった・・・次は何年待つのやら。

ラベル:国内ミステリ
posted by かしこん at 01:17| 兵庫 ☀| Comment(0) | ☆ 読んじゃいました | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする