なんでも、それは<対バンライヴ>だというではないか!
「そんな単語、マンガ以外で初めて聞いたよ!」
ドリンクチケットはいつでも引き換え可能で、入ってすぐ必ず、というわけでもないらしい。 ドリンクバーつき夕食をとってきたばかりのあたしたち、「あとにしようか」ということに。
まずはKitty , Daisy & Lewisから。
ロンドンから来たこの三人は実のきょうだいで、事前にEさんからサードアルバムをお借りして予習してきました。 UKロックにありがちのジャンルミックス、でもちょっとカントリー要素強し。 キティさんがヴォーカルなのかと思ったら途中からルイスくんが歌いだしたりと「ちょっとびっくりしたよ」とEさんに言えば「あぁ、ヴォーカルだけじゃなくて楽器もチェンジするんだよ、あの三人」。
「だからドラムの跳ね方やギターのグル―ヴが曲によって違ったりしたのか!」と納得(ポータブルCDプレーヤーでイヤフォンつけて一回だけ聴いただけだったあたし、聴き込み方が足りていません)。

セットリストはほぼこのアルバムから。
知らない曲はアンコールの一曲のみだった。
ほぼ定刻でステージが始まったことに、「おぉ、外国の人にしては珍しい」と感銘を受けるあたし。 言葉はあまり通じない、ということは折り込み済みのようで(かといってトークがまったくないわけではない)、ガンガンたたみかけるように演奏&歌を繰り広げてくれるのでした。
「えっ、こんなにロックテイスト強くて、しかもブルージーだとは!」
ヴォーカルは力強く、CDで聴いていた印象が吹っ飛ぶくらい強烈。
ステージにはマイクが何本もあるのに、あえて一本のマイクを奪いあうようにしてやるのもパフォーマンスか。 さすがきょうだいなだけに声質が似ていて、ハーモニーを売りにしているわけじゃないけど「ここぞ!」な部分だけコーラスを重ね、「あぁ、もっと聴きたい!」というあたりでさっと引く。 シンプルなバンド編成だからこそ、ひとつひとつの音が際立ち、引き立つ(しかも力強いドラムをたたいていたのはデイジーさんで、ルイスくんのドラムは少々へなちょこだった。 ギターの技巧はすごかったけど)。 三人きょうだいで全員歌がうまくて楽器を複数演奏できて、なんかすごいなぁ。
途中でジャマイカ出身のトランペッター・タンタンさんが参入、更に盛り上がる。 あとで聞いたがタンタンさんは83歳だそうであり・・・それであのメリハリある鋭く明快な音が出せるとは・・・かっこよすぎ。 そしてルイスくんの男前さ加減にうっとり(25歳だって! そりゃお肌つるつるよね!)。
あっという間の一時間強。 すでに汗だくで、かなりの満足感。
ステージ転換の間にドリンク取りに行こうか、となったものの会場からすんなり逆行できなくて、この位置に戻ってこれないかもしれないと思い直してあとにする。
「いやー、キティ・デイジー&ルイスでこんなに汗をかくとは」と少々意外そうなEさん。
「だって、アルバムの雰囲気とかなり違うもん! こんなに踊れてパワフルだとは思わなかったよ!」と意外性について語り合う。 アルバムが素晴らしくてもライヴがいまひとつなバンドもある中、ライヴの方がアルバムより素晴らしいってプロの証拠だよね!
舞台転換に結構待たされ、やっとEGO‐WRAPPIN'登場。
Eさんのお目当てはこっちのほうなので悪く言うことは控えたいが・・・歌い出すまでが長すぎる。 せっかく歌い始めてもその声がスピーカーから割れて聴こえる(PAの問題なのか、あたしの立ち位置の問題なのか)。 キティ・デイジー&ルイスでまったく気にならなかったことが気になって、せっかく前半で盛り上がったテンションが下がってくる。 トークが通じるのは同じ母国語通しのよいところだが、一部客とのやりとりが会場全体まで意味がわからないまま話が進んでいって終わるところも「大阪人のよくないところ」だと思ったし(なんというか、内輪受け重視感的な)。
でもまぁ、『リバース・エッジ』の主題歌が聴けたのであたしは満足です。
そんなわけで個人的には、Kitty , Daisy & Lewisに軍配!
帰り道(ライブハウスを出たときにはすでに22時を余裕でまわっていた)、どうしたことか兵庫県には暴風警報が出ていて、一部電車に遅延が。 でもまぁ、多少遅れても帰れるだろう、と地下鉄から降りてJRに乗る。
「ロンドン出身というわりに、ルイスくんちょっと訛ってなかった? トーク言いたいことはだいたいわかったけど、単語が聞き取れなかったよ」
「・・・ロンドン訛りなんじゃないの?」
「(はっ!)ロンドン育ちだからってクイーンズイングリッシュってわけじゃないのか!」
「下町とかなのかもね。 江戸っ子のべらんめぇ口調みたいなもんで。 ・・・それよりも、タンタンさんが83歳って聞いて、うちのじいさんと同じ年だということの方がショック」
「うーん、演奏家って定年のない仕事だし、常に自分を高めてるからかなぁ。 というかタンタンさんが別格で、普通の同じ年の人と比較しちゃいけないんだと思うけど・・・」
「そうなんだけど、ほんとうちのじいさんダメだからさぁ!」
何故かライヴ後に家族の問題の話になってしまうお年頃でした。
なるほど、Eさんが足しげくライヴに行くのは様々なストレス発散のため。 しかし一度発散してしまえばまた「どんとこい!」となって更にストレス蓄積 → 発散しなければ!、の無限ループに陥っているのだな、ということがわかった。
ある意味、汗かかないだけであたしの映画と同じですね(でも、抱えているものはEさんの方がはるかに大きいので、なんかすみません)。
というわけで、これがあたしのライヴハウスデビューでした。