2020年01月13日

バナナクリーム・パイが覚えていた/ジョアン・フルーク

 「今回もレシピ多めだわ」とパラパラめくって思う。
 <お菓子探偵ハンナ>シリーズ20作目、読んでいるとアメリカンカントリークッキーやフルーツパイなどが食べたくなる存在で、コージーミステリとしてはいちばんではないかと思っていた。 しかし今回やたらと違和感。 出版社が変わったから文字のフォントや行間が違うせいか?

  ハンナ20バナナクリームパイが覚えていた.jpg あぁ、バナナクリーム・パイ食べたい・・・。
 ハネムーンのためミネソタ州のレイク・エデンを留守にしているハンナ。 そのあいだに母ドロレスが隣人の遺体を発見してしまう。 殺人だと知ったドロレスはハンナに帰ってきてもらい、事件を解決するように頼む。 現場にはハンナの店<クッキー・ジャー>のバナナクリーム・パイが残されていて・・・という話。

 あたしはハンナの母ドロレスが苦手で・・・シリーズ初期の頃はハンナも母に対する複雑な思いを抱えていて、母親とよく似たすぐ下の妹アンドリアとの関係を再構築していくことで、ハンナとアンドリアがそれぞれ母親について客観的に見られるようになる、というところがよかった。 田舎町で自分の仕事を持ってやっていくということは苦手な母親とも付き合っていかねばならないわけで、親の願う子供の姿と自分が違っていてもいい、と納得していく過程に共感していたのかもしれない。
 で、まぁドロレスもちょっとは反省(?)して、ハンナのハンナらしいことを受け入れて和解した・・・ような中盤以降、すっかり仲良し母娘みたいになっているというか、大学生の下の妹ミシェルが戻ってくる時間が多くなってからドロレスのダメなところは笑い話のネタ扱い。 その間にドロレスはリージェンシーロマンス作家になってお金持ちのドクターと再婚、一気にリッチな生活を送るようになっているという・・・税金の申請書類に頭を悩ませ、町のクッキーショップとしてどうやってやっていくか節約してきたハンナの姿はなんだったのか。 そりゃ毎日のように会うかもしれない母親にうんざりしていると精神衛生的によくないから、割り切ってしまったほうが自分のためというのもわかるが。
 時間もたって内面的な成長も見せているというのに、<イソノ界>にいるかのように年齢が加算されないことにさすがに納得がいかなくなってきたらしい(約20年、ハンナはずっと30歳前後である)。 あと、ミシェルが出てくるようになったらアンドリアの出番が急激に減るのもなんだかな。
 ということで、微妙に降り積もっていた違和感が今回噴出してしまったのは、独身のときのようにふるまえないことにストレスを感じるハンナが、夫が同じようにふるまうと責める気持ちになるところ。 え、それはあまりに勝手じゃない?(そのことにハンナが気づいていないから余計に)。 そんなに真剣になることではないのだが・・・なんだかな、と。
 まぁこれも次回作につながるのかもしれないが・・・今回「これだ!」というレシピもなかったので、ちょっとがっかり。

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2020年01月09日

依頼人は死んだ/若竹七海

 今月後半からNHKのドラマ『ハムラアキラ』(全七回)が始まるということで・・・どの原作が扱われるのかさっぱりわからないのだが、シシド・カフカの年齢的にこのあたりが近いかも、それに短編集だからドラマのもとにはしやすかろう、と思い、ものすごく久し振りに再読。 奥付を見ると第一刷は2003年。 約17年前なの!、と絶叫したくなった。 『プレゼント』はもっと前だよね・・・調べるのがコワい。

  葉村晶 依頼人は死んだ.jpg 私立探偵(調査員)・葉村晶初単独主役の短編集。
 長谷川所長の事務所で三年勤め、離れようとしたところを所長が「うちの手が足りない時に手伝ってくれないか」ということでフリー契約となった葉村晶の20代後半の日々。 旧友の相場みのりとルームシェア時代。

 一本目『濃紺の悪魔』の冒頭で絶句する。 葉村晶の家族、特にすぐ上の姉の話をすっかり忘れていた!
 こんな衝撃的なことを何故忘れていたのか。 続きのシリーズで触れていない(姉がいる、というのは出ていたが)せいもあるけど・・・『濃紺の悪魔』のしめくくりで納得。 この感じがちょっとしっくりこなかったんだよな、と。 いまとなっては「それはそれでありかも」と思えるのですが・・・あの当時はもっとリアルに振ってほしかったんだろう。 だが・・・それ故に彼女の“運の悪さ”と“悪運の強さ”の証明にもなるんだよな。
 海外のミステリ・スリラー系のシリーズでは主要キャストやその近しい人がひどい目に遭っていることが多く、それもまた事件を追う個人的な動機になっているのだけれど、葉村晶もまたそうだったのか、と気づくことは驚きだった。 けれどその影がのちのシリーズに出てこないところが、彼女の強さ。
 この連作では自殺の件が多い。 日本で起こる殺人の件数よりも自殺の件数のほうが多いから、統計的にも正しい。 その分、ジトっとしたそこらへんにいる人の悪意が満載で、大変気分が悪い。 少々ファンタジックおちに行きたくなるのもむべなるかな、である。
 『私の調査に手加減はない』はぜひドラマにしてほしい。

  悪いうさぎ.jpg ついでに『悪いうさぎ』も読む。
 あ、やはりお姉さんが存在する、という話題は出たけどそれだけ。 あのおちへの目くばせはあるけれど、気づかなければそれまで。 ここから現実世界に寄り、葉村晶も年をとっていくのがかたまったんだろうか、とか考えてしまった。
 そしてやはり後味は悪い・・・この先の彼女のことを知っているから、少し気持ちはなぐさめられるけど。

ラベル:国内ミステリ
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2020年01月07日

この世の春/宮部みゆき

 うむ、どうしようかなぁ、と悩みつつ、上巻出だしでちょっとうろうろ。 あれ、宮部みゆきの現代モノとは調子が違う(そういえば『荒神』もいまひとつノレないうちに図書館の返却日が来てしまった記憶がよみがえる)。 あー、どうしよう、と思ったけれど第一章を半分越えたぐらいで勢いがつき、あとは下巻まで一気に。
 というか上巻で大体の流れが見えてしまい、「まさかそうなるんじゃないよね」と悪い方向に一致してしまい、下巻はほぼ消化試合・・・でも「このままでは終わらないよね!」という期待で最後まで引っ張られました。

  この世の春1文庫版.jpgこの世の春2文庫版.jpgこの世の春3文庫版.jpg 挿画:藤田新策、文藝春秋のスティーヴン・キングと同じ人。

 宝永七年の初夏、下野北見藩にて。 藩主重興が押込となり藩主の地位を追われる。 いったい何が起こったのか、藩の内部で何が起きたのか・・・という話。
 シリアルキラーとか、「史上もっとも不幸で孤独な、ヒーローの誕生」とか、帯のコピーはかなり的外れだった・・・。
 こっちが期待した話と違ったよ!、ということでマイナスイメージができてしまった。 予断がなければ初期の長編『龍は眠る』・『レベル7』などに通じる、少年をめぐるハッピーエンド系な話と思えたかもしれないのに・・・。
 ファンタジーを割り切るための時代劇設定という感じが拭えなく、シリアルキラーどこに行ったよ!、だし(『模倣犯』以上の後味の悪さを期待した・・・)。 『残酷な神が支配する』っぽくなるのかと思ったら、勿論、社会派要素を時代劇でやる意味はわかりますよ。
 でもこれ、結局『美女と野獣』なんじゃないの?、と数多い登場人物のことを考えていたのに類型にはめられたような気がして肩透かし。
 それもこれも期待しちゃってるからなんですが・・・読んだらおののくんだけど、若竹七海やカリン・スローターのようにがっちり悪意を書いてくれるほうがうれしくなってしまっているのかも。 ハッピーエンドはなんというか、うすっぺらいように感じてしまっているのかも(そればかりではないことも、わかっているのですが)。
 あぁ、自分の好みがより偏ってきている。 ヤバい。

ラベル:国内ミステリ
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2019年12月31日

贖いのリミット/カリン・スローター

 <ウィル・トレントシリーズ>、8作目。
 今年読んだ最後の本になるであろうか・・・原著は2016年だが、なんとも“今の時代”っぽい話であった。 痛めつけられる女性と子供、あらがう女性たち、でも暴力をふるう側の者たちもまたかつては子供だった、という誰も救われない話。 いや、カリン・スローターが書くのは基本的にそういう話だけども。

  贖いのリミット カリン・スローター.jpg “THE KEPT WOMAN”:守られた女? 守ってもらえた女?
 大量の血液にまみれた惨殺死体が発見された。 被害者は元警官ということで警察は色めき立つが、血痕は当人のものではなく、別の人物−女性が現場にいたことがわかる。 GBIの特別捜査官ウィル・トレントは相棒のフェイス・ミッチェルとともに現場に急行するが、近くで発見された拳銃がウィルの戸籍上の妻アンジーのものだとわかり・・・。

 このシリーズではウィルの関係者の身にいろいろ起こりすぎなのだが、アンジーに関しては「いつか必ずこういうことが起こる」のは約束されていたようなもの。 だから本作はシリーズのターニングポイントになるのかな、と思っていたけれど・・・『三連の殺意』などシリーズ最初の頃はアンジーにはカッコいいところもあったのに、どんどんイタくてひどい女になっていったのが悲しかったのだが、アンジーを再出発させるためにはこういう展開が必要だったのだろうか。
 ウィルの恋人で検死官のサラのダメ加減も明らかになり、「完璧な人間はいない」を強く印象付ける(サラの恋愛に関するグダグダは反省材料で、いたたまれなくなるわ〜)。
 そして事件では「カネのためならここまでやるのか、カネにしか価値を見出せない人生ってなんだ」と思わされ・・・そう思えるあたしは幸せなんだろうな、と感じるのがとても悲しい。
 フェイスの見せ場が少なかったのが寂しい。 彼女はとてもいい捜査官になっている。
 次回作は来年6月頃?

ラベル:海外ミステリ
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2019年12月29日

ザ・プロフェッサー/ロバート・ベイリー

 年明けに続編が出るということなので・・・未読本の山から探し出す。 あ、出たのはまだ今年でしたか。 というか一年しないで続編が出るとは、最近の翻訳ものとしては珍しいんじゃないか、意外と評判よかったのか、と思う。
 ジャンルとしては“リーガルスリラー”というやつでしょうか。

  ザ・プロフェッサー 文庫.jpg 帯によれば「胸アツ法廷エンタメ」だそうです。
 フットボールの全米チャンピオンの歴史のあるアラバマ大学のロースクールで、卒業後弁護士となったが恩師の依頼で母校の教授となり、法学者として米国有数の存在となったトム。 ある日、若き日の恋人が突然現れて、娘一家をトラックとの交通事故で亡くしたので「事故の真相を知りたい、法廷に出る手伝いをしてほしい」と頼まれる。 しかしトム自身が大学内での派閥争いに巻き込まれ、教え子で新人弁護士のリックに訴訟を託す・・・という話。

 訴訟大国アメリカならではの話。 ミステリ要素はほぼなく、だいたい「こうなるよね」という予測通りの展開。 しかしあまりにもひどすぎるので、「ちゃんと解決してくれよ」という気持ちになってしまう。
 交通事故は2009年という設定だし、教授を陥れるのにYouTubeが使われているし、まぁまぁ現在設定なのだが、トラックの管理会社の社長があまりにあくどすぎて「これ、60〜80年代か!」とツッコミを入れたくなること多々・・・だからこそラストで爽快さを与えることになるんでしょうが。
 作者はこれがデビュー作だそうで、「ここの場面、こんなにいらないんじゃ」とか「ここ、置いてけぼりだぞ!」と感じるところ結構あり・・・法廷ものとしてマイクル・コナリーの<リンカーン弁護士>シリーズと比較してしまっていました。 主軸がハッピーエンドだからこそ、脇役の不幸が気になります。
 それとトムが大学を追われようとする騒動の意味がわからない(なんで彼が追いつめられるのか根拠が不明。 ただ彼を追い出したい人がいるだけ?)。 シリーズの伏線なんですか?!
 個人的に、読んでいてトムのイメージはドラマ『BULL』のドクター・ブルだった。 なので作中、トムが老いぼれ呼ばわりされているのがぴんと来なくて・・・トムは68歳、いまどきは人にもよるがあまり「老いぼれ」って感じしないのはあたしがトシだから?(先日の『クリスマスの約束』では70越えても曇りのない小田さんの歌声にどよめきましたし)。
 ま、これで次回作『白と黒のはざま』も手にできるぞ!

ラベル:海外ミステリ
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2019年12月27日

焼跡の二十面相/辻真先

 『このミス』対談によりさっそく読みたくなったこれ、仕入れてくる(あと、以前読んだかどうか自信がない『あじあ号、咆えろ!』も一緒に)。
 思ったより、薄い!(260ページない)、ことに驚くけど、かつて読んでたポプラ社の<少年探偵団>シリーズも、文字数としてはこんなものだったのかもしれないなぁと納得(フォント大きかったし、行間広いし、挿絵もあったし)。

  焼跡の二十面相.jpg この表紙ビジュアル、大変いい!
 昭和二十年、夏。 敗戦という事実を突きつけられた少年探偵団団長・小林芳雄くんは戦争にとられた明智先生を待つために、疎開もせず、物質的困窮をものともせずに、明智探偵事務所を守っている。 ある日、旧知の中村警部と出くわし、不可解な犯罪に遭遇する。 その調査過程で、小林少年は怪人二十面相からの挑戦状がある大邸宅の門のあたりに貼ってあることに気づく・・・という話。
 正史ではこの時期のことは描かれていないが・・・それもむべなるかな、というか、むしろ当たり前だと思えるほどの東京とその近郊の荒廃振り、物資のなさに胸が痛くなる。 小林くんが坊主頭とか、たくあんのしっぽをよく噛んで空腹を紛らわすとか、痛々しくて泣きそうだが、あの時期、生き残った誰もが通る道。 「困窮の中にありました」とドラマやドキュメンタリーなんかでもそんなナレーションで片付けられてしまうかもしれないけれど、実際に何日も何週間も何月も、ひもじさに耐えていたのは子供たち。 そして戦争に負けたことで今まで教えられたことが180度変わり、「鬼畜米英!」と叫んでいた大人が進駐軍にペコペコする姿を見せられて・・・素直で純真な子供ほどトラウマになるよ。
 さて、そんなトラウマを持つ辻真先によるこれは、江戸川乱歩の<少年探偵団シリーズ>のパスティーシュでありつつも正伝の間を埋める役割も。 地の文は「いかにも乱歩的文体」の特徴をとらえつつ、今の視点から見て過剰にならないようにすっきりと。 いつもの辻真先文体との融合が図られていてニヤリだ。 また子爵邸に施された大掛かりな仕掛けなど、まさにあの感じ!
 回顧主義っぽいものの中に、現代を刺す鋭さがちらほらと。 戦中戦後を体験したものとして、言い残しておかねばならないことがいっぱいある・・・という感じなのであろうか。
 ラストのたたみかけの大味具合もまさに乱歩的。 終わり間近に急遽登場した豪華ゲストに対する爆弾発言は・・・そこまではっきり言っちゃっていいんですか!

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2019年12月20日

真冬のマカロニチーズは大問題!<秘密のお料理代行A>/ジュリア・バックレイ

 <秘密のお料理代行>第二弾。
 もうすぐクリスマス、という時期の話だった。 ナイスタイミング!

  秘密のお料理代行2真冬のマカロニチーズは大問題.jpg マカロニチーズ、食べたことない。
 クリスマスの近いある日、ライラは友人が教師をしている小学校のクリスマスパーティーに依頼の特性マカロニチーズを配達。 駐車場で出会ったサンタは俳優だといういい感じの若者で、失恋の傷を負っていたライラは彼から再出発の言葉を聞きなぐさめられる。 しかしその直後の銃声がとどろき、サンタは倒れてまたもや発見者となるライラ。 会いたくないパーカー刑事とまた顔を合わせることになってしまい・・・という話。
 前作から引き続きのレギュラー陣が多く、そのへんはほっこり。 しかしライラの仕事や人間関係が前向きになるのに合わせて登場人物が増えた分、飼い犬の出番が大幅に減った気がする。 マカロニチーズも序盤だけだった。
 ミステリ的にも事件が大きくなって、面白くなってきました。
 基本的にいい人ばかりの世界観なのに、誰かを殺したい・殺そうとした・殺した人たちが無理なく同居しているところが興味深い。 ライラの恋愛観も成長していくのかしら。
 しかし今のところ、このシリーズの3作目は日本語訳がない・・・まぁ、ここで一段落したといえないこともないけど、ライラが料理人として飛躍する余地はまだあるので、続きが出れば読むかも。

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2019年12月19日

戦後最大の偽書事件 「東日流外三郡誌」/斉藤光政

 集英社文庫の<ふゆイチ>の書棚にて発見。  今年の3月発行とあるが・・・あれ、見た記憶がない。
 “東日流外三郡誌”についてはうっすら概略は感じ取っていたけれど、詳細は全然知らなかった。 これ一冊で大体わかるならそれでいいか、と思って。

  戦後最大の偽書事件東日流外三郡誌.jpg 表紙イラストは安彦良和!
 青森県五所川原市のある農家の屋根裏から発見されたとされる『東日流外三郡誌』は<超古代史ブーム>の一翼を担う。 しかし1992年に著作権侵害による訴訟をきっかけに真偽論争が本格化、地元紙東奧日報の記者である著者が繰り返し取材して偽書である論拠を積み重ねていく。 「偽書であることの証拠・説明」ではなく、「何故偽書が生まれたのか」に重きを置いて書かれたもの。

 わぁ、全然知らなかったなぁ!
 単行本・初回文庫版に加筆・修正したということで、なかなかのページ数、繰り返しの記述もあって前半は散らかっている感があるが後半へのたたみかけが素晴らしい。
 東北人のコンプレックス、わかるけど、あたしはそこまでじゃない。 和田喜八郎世代よりはルサンチマンから自由になっているということか、三内丸山遺跡の発見が鬱屈を晴らしてくれたのか。 今は関西に住んでいるためこっちでの東北のスルーされ具合などわかるから、客観的に見られているのかもしれないけれど、故郷や住んでいる場所に人は誇りを持ちたいものなのだ。
 けれど、だまそうとする人の存在だけでは人はだまされない。 それを擁護し、広めようとする人がいるから偽物が本物のように見えてしまう。 いわゆる陰謀論の誕生とも一致するのが・・・あぁ、専門家という肩書を持っていても信用できるかできないかがあるってこと。
 オカルトに興味はあるけど事実だとは受け止めていない、そういう立場が大事だわ・・・。

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2019年12月10日

不穏な眠り/若竹七海

 ほら、すぐ読んじゃったじゃない!
 ゆっくり読もうとしてみたんだけど、もともとが薄い(本文で250ページない)ので無駄な抵抗に近かった・・・。

  不穏な眠り 若竹七海.jpg なんと解説は辻真先だ!
 私立探偵・葉村晶の連作短編集、4編収録。
 『水沫隠れの日々』・『新春のラビリンス』・『逃げ出した時刻表』・『不穏な眠り』収録。
 有能だが運の悪い葉村晶の不運度は、短編だとより際立つ。 度重なるとむしろスラップスティックコメディのような趣に(古いほうの『トムとジェリー』を思い出してしまうほど)。 が、解き明かされる“事件”や“謎”には、人間のいやーなところがつまっている。
 また途中で話を聞くことになる人々の中にも、ヤバい人たちがかなりいる。 この国、大丈夫かと読んでいて真顔になるほどだ。
 しかも予想通り富山店長は理不尽なことを言ってくるし(本人が自分に非がないと思っているので)、<東都総合リサーチ>の桜井さんとの持ちつ持たれつは相変わらずだし(とはいえ晶のほうが負担が大きい)、いつも通りな部分もあるけど齢は重ねていくので、いろんな意味で感情移入してしまいます。 あたしは晶さんより少し年下なのだけれど、

 男たちにジロジロ見られながら、事務所を出た。こういうとき、年をとってよかったと思う。若い時分には、アキラなのに女かよ、とガッカリされるとそれだけでへこんだ。今は気にならない。勘違いするほうが悪いのだ。
                       (――『新春のラビリンス』)

 みたいなこと言われると、「あぁ、わかる!」と力強く頷いてしまう。
 彼女の考える“人として”の最低ラインを守ることが美学となり作品世界をハードボイルドなものにしているが、ちょっと意地を張ることすらも難しい世の中だということもあるのか・・・それでも、探偵であり続ける葉村晶を見ていたいのです。 応援したい、だとちょっと違うかな・・・そうだよね、わかるわかる、と言いたいというか。
 短編のほうがミステリとしての切れ味は鋭いのだが、いろいろ内省することが多くなる長編のほうが個人的には共感ポイントが高くなるんですよね・・・短編だとすぐ読み終わっちゃうし。 あぁ、なんか読み終わってしまってもったいない。

ラベル:国内ミステリ
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2019年12月02日

<マスカレード・ホテル>祭り

 先日WOWOWにて、映画『マスカレード・ホテル』を観た。
 ・・・えーっと、これ、ミステリーだよね?
 ホテルに集う奇妙な人たち、という話だけではなかったよね?

  マスカレード・ホテルP.jpg 「犯人はこの中にいる」って言ってますし。
 犯人がわかるところは畳みかけてきますが、それ以外、ホテルコルテシア東京に至るまでの<事件>の描写が薄すぎる・・・“謎の数字”についても緯度と経度に関係しているのはすぐわかるし(なので冒頭で説明されるがさらっと流しすぎ)、たくさん出てくる豪華キャストに見せ場を与えているだけ・・・に見えてしまうのは何故?
 まぁ、木村拓哉・長澤まさみ・小日向文世の感じはよかったですけど・・・なんか微妙だわ・・・ということで原作を読んでみることに。

  マスカレードホテル文庫.jpg マスカレード・ホテル/東野圭吾
 そしたら意外にも・・・「映画は結構原作通りだったんじゃないか!」と驚く。
 エピソードの順番とか、ゲストの描写がキャストとは合ってない・・・というのはありますが、まぁそれは映像化においては些細なこと。 時間の都合でかはしょられた重要な要素は無きにしも非ずですが、おおまか、原作に忠実。
 となると、東野圭吾は映像化されることを前提にこれを書いたのかな・・・という推測が。
 何を出しても売れてしまう現状、本を読まない人も「東野圭吾なら読む」という状況の中、そういう層のために書いているのかな。 で、そのうち満を持してまた大作・問題作を出してくることを待とう。

  マスカレードイヴ文庫.jpg マスカレード・イブ/東野圭吾
 で、ついでにこっちも読んでみた。 『マスカレード・ホテル』へと続く山岸さんと新田さんの前日譚。 『ホテル』で話題に出ていたが詳細は語られなかったことがここに、それぞれが主役の短編4つ。 内容は・・・まるで東野圭吾のセルフパロディのようだ。 『ホテル』の追補版というか、おまけみたいな感じなのかしら。 
 第三作『マスカレード・ナイト』もあるそうなので、それでシリーズ物としての真価が問われるかな〜。

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