今年の一月に文庫出てすぐ買ったはいいが、読むのが少し怖かったのか・・・しばし積む。 その間、何度か手に取りつつも、また戻し。
今回もまた戻すことになるかなぁって感じつつ手に取ったのだが、ちょっと読み始めてしまい、なんか書かれている東北のイメージにおののいているうちにいろいろ思い出し、気づけば読むことがやめられなくなった。
電車の中でも急に泣きそうになる。 ずっとマスクしてるからそういうときすごく困る!
二十年以上日本在住の英国人ジャーナリストである著者は東日本大震災直後から被災地に通い続けた。 石巻市立大川小学校の遺族と出会い、何故あれほどの被害が出たのか裁判も追う。 また被災地で続く幽霊の目撃談に興味を持った著者は被災者のケアを続ける僧侶と巡り会い・・・。
英語で書かれてから日本語に訳されたものなので・・・その距離感がむしろグサグサ刺さる。 普段翻訳ものを多く読んでいるせいか、冷静に読もうと思っているせいか、読み手として前のめりになるところと引き気味になるところにちょうどぶつかってしまう感じ。
津波被害の生々しさは、今まで読んだ中でトップクラス。 読みながら「そこ、頭の中で映像化しちゃダメだ!」と何度も頭を振った。 それでもずっとこのイメージを引きずっていくんだろうなと感じた。 体験したわけでもないのにね。
ほんと東北のイメージひどいんです。 ちょっと心当たりもあるんだけど、そこまでか!、な感じ。 でもあとあと出てくる保守的な人々の古さがありえなさ過ぎて、この状態が放置されているのならこのひどさも仕方がないと思うくらい(勿論、別々の問題なので一緒にしてはいかんのだが)。 あー、日本人作家の小説を読むことが減ってきたのは、こういうのを避けているからだろうか。
本書では筆者が東北人に、日本人に怒っている。 そんなに我慢しなくていいだろ、と。 そうなんだよね、でも我慢してるというか、あきらめているのかも。 とりあえずの静けさを求めていて、異を唱える人たちに圧力をかけて黙らせようとしてるんだよね、その先のことを考えていないから。 組織を守ろうとする思いは全国各地どこにでもあり、このコロナ禍でついに限界まで来ている、その重要な段階が描かれている気がする。
組織に巻かれない、自分で判断して声を上げる。 とにかくそれしかないのだと。
自分が死ぬタイミングはわからないけど、いつか必ず死ぬわけで。 だからってあとのことは考えなくていい、はおかしい。
想定外って言葉もおかしいんだよな、人間は万能ではないのだから思いもかけないことが起こるという前提で仕組みを作らなきゃいけないのに、思いつかないことが起こったらしょうがないという言い訳になってる。
とにかくつらい内容なのですが、現実社会は全部つながってて他人事ではない、ということがよくわかる書物。 必読!、と言いたい。
ラベル:ルポルタージュ