2020年12月16日

ザ・バニシング ―消失―/SPOORLOOS

 新開地のCinemaKobeにて、一週間限りのレイトショーで『ザ・バニシング−消失―』が公開。 嬉々としてスケジュールを調整し、観てきた。 ついでに年末ご挨拶の郵便(第一陣)を、『轢き逃げ』で岸部一徳さんがもたれていた郵便ポストに投函。 はい、自己満足です、受け取る側には誰もわかりません。
 『アングスト/不安』のときより観客は少ないようだが(あれは行ったのが金曜日だったから多かったのかも)、平日でも確実にいることにニヤリとする。
 1988年、オランダ映画(監督はフランス人のジョルジュ・シュルイツァー)。 スタンリー・キューブリックが「これまで観た中で最も恐ろしい映画」と言い、「サイコ・サスペンス映画史上bP」とも言われている。 ビデオリリースはされていたが、2019年4月より日本劇場初公開が決定。 それがめぐりにめぐって今、神戸にやってきております。

  ザ・バニシング消失P.jpg 彼女は消えた、跡形もなく、忽然と
  彼はただ知りたかった、その行方を

 夏、ツール・ド・フランスの実施時期に、恋人同士のレックス(ジーン・ベルヴォーツ)とサスキア(ヨハンナ・テア・ステーゲ)はオランダから車で、フランスの山荘に向かおうとしていた。 途中、立ち寄ったドライブインで、コーラとビールを買いに行ったサスキアは戻ってこなかった。 レックスは懸命にサスキアを探すも、有力な手掛かりが得られないまま時間が過ぎていく。
 その一方、<ある衝動>に突き動かされている男がいた。 彼はレイモン・ルモン(ベルナール・ピエール・ドナデュー)、妻子のいる化学の教師。 綿密な計画を立て、シミュレーションを繰り返し、失敗も次に生かすため臆さない。 そんな彼が、3年後もサスキアを探し続けるレックスを知り・・・。

  ザ・バニシング消失3.jpg このシーンで安堵した。
 あまり予備知識がなく、「彼女が失踪する」ことしか知らなかったので、いつサスキアがいなくなってしまうのかと冒頭からドキドキしっぱなし。 ドライブの途中、トンネルを通過中にガス欠なんてひどいが、もっとひどいのはサスキアに対するレックスの態度。 彼女に何の説明もなく、車に置き去りにしてトンネルから出て行ってしまうのだ! 人としてのレックスへの不信感はMAXである(「運転しているのはボクなんだからガソリンのことも任せろよ」と言っていた手前、プライドが傷ついたからそういう不貞腐れた態度を取ったのだろうとは思うけど)。 ガソリンを取って戻ってきたら車にサスキアがいない、トンネルの外まで出ると、そこでサスキアが懐中電灯を抱えて立っていた・・・サスキアになんて気持ちにさせるのか! ひどすぎる!
 と、個人的にものすごくむかつく&ハラハラだったけど、現代の視点で見ると演出はどことなく牧歌的ですらあり、緊張感や劇的な要素をあえて排除しているように感じられた。 時代的なこともあるけど、あえてしている意図。 だから話が進めば進むほどヤバくなる。

  ザ・バニシング消失1.jpg 「あれから三年」とまだサスキアを探すポスター。
 三年後、レックスはサスキアを一人で探し続けていた。 ほぼノイローゼ状態になっているレックス。 彼のもとに、いまのサスキアを知っているとほのめかす手紙が何通も届くようになり、レックスは町のオープンカフェなど様々な場所に呼び出されるが誰も来ない。 ついにはTVを利用してレックスは“犯人”に呼びかける。 「ただ真実が知りたい」と。

  ザ・バニシング消失2.jpg カフェで待ちぼうけを食わされるレックス。 どんどん人相が悪くなってきている。
 罪悪感や無力感はここまで人を蝕む、という見本のようなもの。 気持ちもどんどん追い込まれ、「サスキアに何が起こったのかわかるなら、何をしてもかまわない」みたいな状態に。 その気持ち、よくわかる。 「好奇心、ネコを殺す」という諺はヨーロッパ発祥なのか?
 「彼女が幸せに生きているのをわからないのと、彼女が死んだことがはっきりするのと、自分にとってどっちがいいのだろう」と自問するレックス。 もう一つ忘れているぞ、「彼女は死んでいるのに、自分はそれすらも知らない」を。
 というわけで特別に派手なシーンもなく、レックスとレイモンのかみ合わない問答にも付き合わされる感が強いのだが、ひたひたと忍び寄ってくる不吉な予感・予兆に身震いが来る。 直接的な描写がないからこそ、レイモンの笑みに戦慄する。
 あぁ、なんて後味が悪いんだ!!
 『アングスト/不安』がいわゆる無秩序型のサイコパスを表現していたならば、本作が描いているのは秩序型。 秩序型の気味の悪さを余すところなく伝えてきてる。 これが1988年・・・『羊たちの沈黙』の3年前? サイコサスペンスというジャンルは短い期間で急激に成熟したのだと実感。

posted by かしこん at 01:51| 兵庫 ☁| Comment(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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