2020年12月20日

燃ゆる女の肖像/PORTRAIT DE LA JEUNE FILLE EN FEU

 否応なく耳に入る高い前評判にハードルが高くなるのを抑え、事前に情報をできるだけ入れずに鑑賞(でも「静かなる『キャロル』」という表現は耳に入っちゃった)。 もともと、『水の中のつぼみ』の監督だったセリーヌ・シアマが監督・脚本というだけであたしは観たかったのです(あぁ、今はなきシネカノン神戸で『水の中のつぼみ』を観たなぁ、2008年映画だって)。

  燃ゆる女の肖像P.jpg すべてを、この目に焼き付けた――。

 18世紀、フランスのブルターニュ地方にて。 画家のマリアンヌ(ノエミ・メルラン)は若い女性に絵の描き方を教えている。 生徒からある絵について問われた彼女は、<燃ゆる女の肖像>と名付けられた絵画を描いたときのことを思い出す。
 貴族の娘エロイーズ(アデル・エネル)の見合いのための肖像画を依頼されたマリアンヌは、エロイーズが結婚を拒否しているため画家であることを隠して彼女のいる孤島に会いに行く。 エロイーズの一挙一動を見つめて、こっそり肖像画を描くが・・・という話。
 画家は見つめる側、モデルは見られる側、という立場を徹底しながら、その関係が対等であることを描いたもの。
 主な登場人物はほぼ女性、ほぼ心理劇、フランス映画っぽい曖昧さなど、賛否両論になりそうな要素は多々あれど、「対等な関係」を美しく描いているのが素晴らしい!

  燃ゆる女の肖像2.jpg あの時代、女性の画家が普通に活躍していたというのもうれしいじゃないか。 写真がないから肖像画需要が高い−モデルが結婚前の女性だから画家も女性がよい、という理由ではあれど。
 18世紀設定ではあるが、女性ばかりの登場人物だからか閉塞感はあまりない。 台詞で多くが説明されないため、空気感で理解しないといけないところがちょっと難解。 これもまた「理解しないで、感じて」なのかもしれない。
 夜の室内では蝋燭と暖炉の明かりだけが光源、という構図の美しさ! あの時代の静物画みたい!
 またBGMが一切ないので(音楽は使われるが、それは登場人物たちが実際に耳にしているもの)、海の音など背景音と生活音がくっきり。

  燃ゆる女の肖像4.jpg 油絵が描かれる過程も興味深い。
 “描く”から始まるので、マリアンヌ目線で見るエロイーズは謎めいている。 でも描かれることを受け入れてから、エロイーズの心情がドンと前に出る。 冒頭からかなりシーンの省略があるのに、ワンカットでずっと続く場面もあって、その対比が「語りたいこと・描きたいこと・伝えたいこと」をなによりも物語る。 二人だけの世界にはならずいいバランスを作り出しているのがメイドのソフィの存在。 ギリシャ神話のオルフェウスの話を三人それぞれの解釈を語るところがポイント。

  燃ゆる女の肖像1.jpg 大半のシーンが絵画のようで。
 全編静かで、自然光の下だから輪郭もはっきりしてないこともある中、くっきり映る鏡の使い方に二回度肝を抜かれた。 年齢設定がよくわからないけれど(エロイーズは17歳くらい? ソフィは15歳くらい? 少女性がテーマに深くかかわっている)、目力のあるこの役者さんたちでよかった。
 そうか、肖像画には暗号がいっぱいなのはそういうことなのか・・・と心から納得できたことは今後絵画を見る視点が変わる、と思う。
 ヴィヴァルディの<春>にこんなに心を動かされるとは!
 ラストシーンには「えっ!」っとなるけど・・・それが必然だと頭ではわかるけど、マリアンヌの心情を思うとこちらの心もざわざわする・・・感情移入しちゃってる。 この気持ちは『キャロル』のラストシーンと全然違うよ・・・。

posted by かしこん at 15:23| 兵庫 ☁| Comment(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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