ノルウェーの大長編ミステリ(上下巻で800ページ越え)、手をつけたらば結構一気読みでした。
ただ、スウェーデン作品を結構読んできて「聞きなれない・見慣れない名前」に多少なりとも耐性がついていたと思っていたのですが・・・ノルウェーはまた別で、それとドイツの合わせ技だったので「えっと、この人は誰! そこはどこ!」と人名だけでなく地名にも悩まされました。 固有名詞はほんとむずかしい。
2003年6月、ノルウェーの富豪カール・オスカー・クローグの惨殺体が自宅で発見された。 クローグは第二次世界大戦の英雄で、のちにノルウェー貿易相も務めた人物だが、ナチスの鉤十字が刻まれたナイフが凶器であることから歴史絡みの怨恨かと思われた。 トミー・バーグマン刑事は、約二週間前に森で発見された三体の白骨死体との関連性に気づく。 三人は戦時中に殺されたとみられ、親ナチ派のノルウェー人実業家グスタフ・ランテの娘のセシリア、婚約者のアグネス・ガーナーとメイドではないかと思われる。 レジスタンスの標的として粛清されたのではないか、とバーグマン刑事は考える。
一方、1939年8月、アグネス・ガーナーはイギリス諜報部の最終試験に合格し、ノルウェーに戻ろうとしていた。
物語は2003年と、1939年〜1945年を行ったり来たりしながら、バーグマン刑事は真実に辿り着く・・・。 <「ガラスの鍵」賞>・<リヴァートン賞>・<マウリッツ・ハンセン新人賞>三冠受賞作。
登場人物はとにかく多いし、特に過去パートはキャラ把握した途端に殺されたりと気持ちの萎える出来事続出。 とはいえそこまで入り組んでなく、「この人はあの人と同一人物ってことでいいんだね?」などが裏切られることはなかった。
現代パート(とはいっても2003年なので・・・時差を感じないこともない。 第二次大戦のことを覚えている人の年齢を考えたらこのあたりがギリギリなんだろう)の主人公たるバーグマン刑事は北欧警察小説にありがちなダメ男だけど、元妻に暴力をふるってしまった過去に罪悪感を抱き続ける人で、ちょっと新しいか。 刑事としての能力もものすごく秀いているわけでもなく、でもあきらめない気持ちはヴァランダー警部なみ(タイプは全然違うけど)。
「ノルウェーの歴史の闇」というけれど、あの時代、ナチスに攻められていたヨーロッパ諸国ならどこにでも大なり小なりある話・・・という気がします。 勿論、それをノルウェー国内で発表することに意味があるんだと思うけど。
過去パートの主人公はアグネス・ガーナー。 <ピルグリム:巡礼者>を名乗るものはアグネスを助け、同時にアグネスを苦しめる者。
下巻途中までは一気読みだったんだけど・・・<犯人捜し>を最後の最後まで伏せたために省略された部分が、特にアグネスには多かった気がして、「あれ?」って思っちゃったかな・・・。
でもこれがデビュー作だそうで、この先は楽しみかな。 バーグマン刑事を主人公にシリーズ化しているようだから。 日本語訳が出ることを期待したいです。