2020年09月30日

癌病船/西村寿行

 最初に文庫版が刊行されたのは1984年3月だそうである。 36年以上前か・・・。
 まだ日本も景気がよかった頃、科学技術の発展に素直な夢を持っていた頃の空気だなぁ、というのが感じられる。 いや、36年でこんなにもいろいろ変わっている、ということを知るために、当時のベストセラー小説を読む意味がある気がする。

  癌病船 西村寿行.jpg 癌病船は超巨大船舶。 原子炉がエネルギー。
 WHO(世界保健機構)の付属機関リチャード・スコット記念財団は、リチャード・スコット本人の遺志によってがんと闘う船である超巨大船舶・北斗号を建造した。 通称・癌病船。 財団の資金を惜しげもなく投入したこの医療船には、最新鋭の医療機器が搭載、三百名を超える医師が治療に従事する。 一億円の病室に乗船する権利を買えるがん患者と、カネは払えないが希望する人からくじ引きで乗船する患者が決まった。 船長にはスコットの長年の友人で誇り高き海の男と誰もが認める白鳥鉄善が、病院長にはスコットの構想に深く共鳴したがん専門医ゲーリー・ハリソンが就任する。 全部で八百人もの患者を収容し、人類の叡智を集めた医療技術を駆使し、世界中の難病患者の希望を乗せた巨大船は進む。 紛争の絶えない寄港地で、さまざまなトラブルに巻き込まれながら。

 そのトラブルの一つが人為的に生み出された新型インフルエンザの拡散。
 白鳥船長はスーパーマンではない(それに近い働きはするけど)。 その苦悩も読みどころ?
 400ページに満たない物語に、危機がこれでもかと詰め込まれているので一気読み。 ディテールはばっさり省き、がんがん省略。 しかしある部分は詳細を書き込む。 緩急入り乱れる感じが、当時のベストセラー作家だった所以かな・・・と思う。 軽く読めるけど、題材は重く、科学的に重要なギミックや提案をさりげなく挿入し、読者のレベルを試してくる。
 ハッピーエンドではないし、そもそも物語は終わっていない。 なるほど、続編の存在は当然だ。

ラベル:国内ミステリ
posted by かしこん at 23:59| 兵庫 ☁| Comment(0) | ☆ 読んじゃいました | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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