2020年08月17日

彼女のかけら/カリン・スローター

 ノンシリーズ作品なのでつい後回しにしてしまっていたが(今回、未読本を崩しているときに見つけた)・・・読み始めたら一気に読み進んでしまった。 慣れている作家、ということもあるかもしれない。 女性がサヴァイヴする物語にはつい肩入れしてしまうからかもしれない。

  彼女のかけら1 カリン・スローター.jpg彼女のかけら2 カリン・スローター.jpg “Pieces Of Her”、かけらは複数形。
 ジョージア州のある町で。 一度はニューヨークへ出たものの、挫折して帰ってきたアンディは31歳、地元警察の通信係の職を得て母の家に居候中。 母のローラは言語療法士として確かなキャリアがあり、“善き母親”であるためアンディはコンプレックスを抱き、自立できない。 ある日、仕事終わりにショッピングモールのカフェでローラとお茶をしていたアンディは、銃乱射事件に遭遇する。 撃たれて死ぬことを覚悟したアンディの前で、ローラはごく冷静な様子で銃撃犯の喉を掻き切る。 平凡な人生を生きてきたはずの母親、一体過去に何があったのか。 自分が知る母親は偽物なのか。 アンディは不本意ながら母の過去を辿る旅に出ることに・・・という話。

 アンディのぼやっと加減がものすごい。 頭の中がパニックになる気持ちはわかるが、何を言われても言葉が全然出てこない時間が長すぎる! しっかりしろ!、とつい言いたくなるのは、そこに「かつての自分に似たもの」を見るからだ。 いや、今がちゃんとしているわけではないけど、それでも若い頃より人としてはましなはず。
 彼女は31歳だが、社会的年齢はそれ以下なので自立どころか自己肯定感が低すぎて何をするかも自分で決められなくなってる。そんなアンディが彼女にとっての極限状態に追い込まれ、否応なく自分一人で先に進まねばならない(とはいえ、手を差し伸べてくれる人はいて、そこにすぐ頼ってしまいがちなのも彼女の性格)。
 それと並行して、母ローラの若き日々のことが語られる。 80年代、女性の自立が歓迎されていない時代の、彼女の苦しみと恐怖。
 たいていのことは時間が解決するという、実際なんとかなることが多いけど、何十年と時間を経ても解決できない心の傷はある。 誰かの一言や仕草を目にすることで、一気に時間が引き戻され、とらわれる。 母ローラはサヴァイヴァーだけれども、一度は切り抜けているのに、まだまだおびえている。
 アンディが主役のように見えて、実際はローラの物語。 娘を命がけで守ろうとする強さもあるのに、ローラはかつて傾倒した思想(?)の本質から離れられない。 この根深さが、ラストが納得いかない原因。
 なんで彼女がそう考えるのか、あたしには理解できなかった。 でもそれがトラウマなり、PTSDなんだろうなぁと推測はできるけど・・・そこまでになってしまうほど抑圧を、被害を受けた人へ手を差し伸べるにはどうしたらいいのか。
 簡単な答えは出ないけど、考えてしまう。

ラベル:海外ミステリ
posted by かしこん at 02:49| 兵庫 ☁| Comment(0) | ☆ 読んじゃいました | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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