2020年07月26日

グレース・オブ・ゴッド 告発の時/GRACE A DIEU

 フランソワ・オゾンが実話を描く!、というのはすごく意外で、だからこそ余計に「作らなければならないもの」だったんだろうなぁ、と。 日本公開はまだ先だと思っていましたが、いつの間にかその日は来てしまうようです。

  グレースオブゴッドP.jpg 沈黙は、捨てた。
  フランスを震撼させた神父による児童への性的虐待事件。深いトラウマを抱えて生きてきた男たち。その告発のゆくえは――?鬼才フランソワ・オゾンが挑む、衝撃の実話。

 フランス、2014年。 40歳になったアレクサンドル(メルヴィル・プポー)には妻も子供もいてそれなりの仕事もあり生活は順調だったが、ある日、子供の頃ボーイスカウトの同期からプレナ神父(べルナール・ヴェルレー)に「きみも体を触られたことがある?」と尋ねられた。 それをきっかけにその当時プレナ神父から受けたことを思い出したアレクサンドルは、今も彼が神父として子供たちに接していることを知り、憤りと恐怖を覚える。 自分の被害(あれは性的虐待だった)を伝えるため教区のトップであるバルバラン枢機卿(フランソワ・マルトゥーレ)に面会を求め、プレナ神父を処分するように訴える。 だが何も起こらないため、アレクサンドルは裁判所に告訴状を提出し、警察が動き出すことに・・・という話。
 “プレナ神父事件”については何も知らなかったのだけれど、フランス版『スポットライト』という認識。 加害者である神父に何もしない、むしろ隠蔽する教会という図式がほとんど一緒なのは、国の違いではなく「カトリックだから」ということなんだろうか。

  グレースオブゴッド4.jpg 苦悩していても信仰は手放さないアレクサンドル。
 裁判が進行中で最近の出来事ということもあり、映画として堅実、むしろ地味なつくり。 かといってドキュメンタリー調というわけでもなく・・・ひたひたと静かな緊張感に満ちていて精巧。
 アレクサンドルが行き詰ってからは被害者の一人フランソワ(ドゥニ・メノーシェ)の視点に代わり、その後エマニュエル(スワン・アルロー)が登場するという主人公交代パターンが効果的。 完全に切り替わるわけではなく、三人がお互いに信頼し合うようになる過程が事件とその背景の重層的理解を助ける。

  グレースオブゴッド5.jpg 沈黙しない被害者の会
 『スポットライト 世紀のスクープ』と違うのは、マスコミ側の姿がほとんど出てこないこと、ほぼ被害者側の視点であること。 フランソワは信仰を捨て、教会に対する怒りを常に抱えている。 「あ、この人、『ジュリアン』のお父さんだよ」と気づいてからはフランソワがいつぶちぎれるかドキドキしまくりだったけど、エマニュエルも精神的に不安定な人なので気が抜けなかった。 被害者であることに苦しむ人の姿というか、被害を受けたこと自体(何故防げなかったのかとか別の道があったのではないかとか)が更に本人をさいなむのだという明らかな事実を目の当たりにする。 あぁ、これは違う立場の人にわかってもらうための映画だ。

  グレースオブゴッド2.jpg 「神の恩寵によりほぼ時効です」と口を滑らせたバルバラン枢機卿。
 あ、タイトルってここからきてるのかしら(GRACE A DIEU=GRACE OF GOD=神の恩寵)、なんて皮肉な。
 本国での公開は2019年だけど、2020年に入ってからの裁判のこともエンディングテロップでは触れられている。 別の国での公開に合わせて情報が常にアップデートされているのなら、それがフランソワ・オゾンの誠意であり覚悟だという気がする。 映画として自分の好みよりも被害者たちの気持ちを尊重した。 けれど映画としての満足度は高い。

posted by かしこん at 16:13| Comment(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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