2020年07月05日

色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年/村上春樹

 何を今更、と言われてしまうのでしょうけど、今更なんでございますよ。
 『ノルウェイの森』を高校生の時に読んでしまって嫌悪感が出てしまい、村上春樹が苦手でした。 その十年後ぐらいに村上春樹ファンの人から「これは大丈夫だよ」と『羊をめぐる冒険』を貸してもらい、「確かに」と思って『ノルウェイの森』がちょっと特殊なんだろうなとわかったのですが、自ら進んで読もうとは思わなくなってまして。 新刊が出るたびに騒ぎになりますが、まったく乗っかれず。 でも別にアンチというわけでもないのです、翻訳家としての村上春樹は結構読んでいるし。

  色彩を持たない田崎つくると、彼の巡礼の年.jpg 図書館で見かけたので借りてみました。 でもすぐ読むわけでもなく、返却期日が近づいてきたので慌てて読み始めたら、結構一気読みでした。

 多崎つくるは36歳、仕事は鉄道の駅をつくること。 高校までは名古屋に住んでいて、自分の他に四人の男女と完璧な五角形ともいえる友情関係をつくっていたが、彼がひとり東京の大学へ出て一年ちょっと、四人から理由を言われず絶縁されてしまった。 あれから16年、彼はその傷をいまだに引きずっている。 現在の交際相手に「あなたは心に問題を抱えている」と指摘されたつくるは、かつての四人の親友に理由を訪ねに行く・・・という話。

 「色彩を持たない」とは、四人の親友やその後つくるが親しさを感じた後輩の名字に色の感じが入っているのに(青海・灰田など)、彼自身には色がないからというもの。 それは言っても仕方ないよね、名前は選べないよ、と思うけど、友達と共通項が欲しかったという気持ちはわかる。 でも個人的にはつくるくんとは仲良くなれないかも。
 比較的最初のほうで、親友の女性の一人がピアノを弾くとわかるくだりであたしは「ぞわっ」とする。 『ノルウェイの森』の終盤でピアノにかかわるあるエピソードが出てくるのだが、これがひどい話でトラウマになっているからだ(おかげでつくるが絶縁された理由や彼女のその後などまったく驚けなかったという)。 この感じって村上春樹ワールドあるあるなのかしら。
 喪失からの回復の過程の物語なので、ミステリだとしたら「伏線が回収されていない!」とテーブルをひっくり返したくなるところがいくつもありますが、まぁ現実においてはわからないままのこともいっぱいありますよねと思えるというか、登場人物に愛着がないからもやっとした部分もそのまま受け入れられる。 いや、ヒロイン的立場の女性の描かれ方が都合がよすぎるほうが気になるかな・・・。
 自分の失われた友人関係のことを思い出した。 痛みが減っていることによろこんでいいのかどうなのか。
 もしかしたら、今なら『ノルウェイの森』も普通に読めるかもしれない。 でも読みたい気持ちが起こらないな・・・他のを考えてみようか。

ラベル:日本文学
posted by かしこん at 17:36| Comment(0) | ☆ 読んじゃいました | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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