2020年07月04日

コリーニ事件/Der Fall Collini

 原作を読んだのは何年か前ですが・・・(過去記事を見たら約6年前でした)、なんともいえぬ後味の悪さを覚えています。 これも映画になるとは、やはりフェルディナント・フォン・シーラッハはドイツで人気があるのね。 でも原作『コリーニ事件』は日本で本屋大賞の「翻訳小説部門」第一位を獲っているのに、あまり知られている感がないのは何故?

  コリーニ事件P.jpg 正義に挑む
 2001年のある日、高級ホテルのペントハウスで、ドイツの経済界の大物ハンス・マイヤー(マンフレート・ツァパトカ)が殺害される。 犯人として逮捕されたのはファブリツィオ・コリーニ(フランコ・ネロ)、イタリア人ながら30年以上もドイツで模範市民として暮らしていた人物。 取り調べには一切黙秘で通しているため、裁判を成立させるために新人弁護士のカスパー・ライネン(エリアス・ムバレク)がコリーニの国選弁護人となる。 しかしライネンにとってハンス・マイヤーは子供の頃からの恩人、幼馴染と言えるハンスの娘のヨハナ・マイヤー(アレクサンドラ・マリア・ララ)との仲は悪化し、尊敬する法律学のマッティンガー教授(ハイナー・ラウターバッハ)も被害者側の証人に。 ライネンは孤立無援となる中、コリーニの動機を探すことに・・・という話。

  コリーニ事件5.jpg ハンス・マイヤーとコリーニの二人のショットは印象的。
 実際にコリーニが手を下した場面はないので、彼が話すまでは真相はわからないという原作の要素もばっちり再現。 ドイツ映画らしい生真面目さにあふれている。

  コリーニ事件2.jpg コリーニとライネン、二人だけのシーンも数えるほど。
 その数少ない場面もほぼライネンが話すばかり。 沈黙で受け止めるコリーニの顔!
 コリーニ役のフランコ・ネロさんはマカロニウェスタンの大物らしく・・・あたしは存じ上げなかったのですが、顔のしわや皮膚に刻まれた厚みがただごとではないです。 このキャスティングが肝だったのだろうな、と。

  コリーニ事件1.jpg 裁判中、被告はガラス張りの箱の中。 つい感染症対策に思えてしまう。
 コリーニが何もしゃべらないので、中盤過ぎまでライネンの個人的な話に・・・。 あぁ、そういえば原作もそうだったなぁ、と思い出す。 ライネンの出自(トルコ系移民)は記憶になかった、そういうのは文章より映像のほうがわかりやすいのであろうか、単にあたしがそういう意識が薄いのであろうか。 ライネン役のエリアス・ムバレクの実直感もよかった。

  コリーニ事件3.jpg 損な役回りはハンスの娘のほうである。
 ヨハナはかつてライネンと恋仲になっていた時期があり・・・でも今は父親を殺したとされる男の弁護人。 その複雑な立場故に感情的になってばかりで、残念な印象になってしまう。 この女優さんもすごく見たことがあるんだけど、思い出せない(あとから、『フェアウェル さらば哀しみのスパイ』の人だと思い出すけど、いろんな映画に出てらっしゃいます)。
 重要な役割を担うマッティンガー教授役のハイナー・ラウターバッハの佇まいもただごとではなく、すごい俳優なんだろうなとオーラを感じる(以前、ケヴィン・コスナーのドイツ語吹替をされていたそうである。 津嘉山正種ってことだよ!)。 実力派で固めたキャスティングが、ドイツの本気具合なのかも。

  コリーニ事件4.jpg 見かねたライネンの学友も手助け。
 その過程でライネンの父親との関係の修復の様子も。 これまでのことを思うとよく話したりできるな、と思っちゃったりもするんだけど・・・裁判でわかるコリーニの動機にかかわることが大きすぎて、個人的な事情が吹っ飛んでしまいます。
 法律が正義の根拠として語られがちだけど、そもそも法律は時代によって変わってくるということ。 いったい誰が誰のために新しい法律を作っているのか、わざわざ調べなければ一般人はどこが変わったのかわからない・・・という法律のそもそも論。
 大変重たいのですが・・・あえて救いが込められたラストシーンはベタではあるんだけど、うっかり涙がこぼれました。
 ドイツ本国では『コリーニ事件』の出版により問題視された法律が改正された(映画では語られなかった、完全に小説の映画化ということなのか)。 同じことが日本で起こりえるだろうか・・・と考えると、社会の成熟度が全然違うんだろうな、と思えてしまった。 映画単体としての評価は難しいんだけど(原作を知っていたからよかった気がする)。

posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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