2020年05月28日

盗まれたカラヴァッジョ/UNA STORIA SENZA NOME

 「この映画、観たい!」とずっと思っていたのは、『ローマに消えた男』・『修道士は沈黙する』のロベルト・アンドー監督の最新作だから。 この二作はとても面白かったのです。 ミステリ要素を散りばめながら、アメリカやイギリスとはまったく違う語り口で・・・さすがイタリア!、と思ったのですよ。
 しかも今回はカラヴァッジョの盗難についての謎を扱うということで、期待のハードルが否応なく上がります。

  盗まれたカラヴァッジョP.jpg 今、イタリア美術史上最大の闇が明かされる。

 1969年、カラヴァッジョの名画『キリスト降誕』が何者かによって盗難に遭い、以後行方不明。 マフィアが盗んだとされているが、詳細は不明で、それ故にさまざまな説がまことしやかに語り継がれてきた。
 人気脚本家アレッサンドロ(アレッサンドロ・ガスマン)のゴーストライターを秘密裏に務めている映画プロデューサーの秘書ヴァレリア(ミカエラ・ラマッツォッティ)は、ある日ラック(レナート・カルペンティエリ)と名乗る謎の男が近づいてきて、今も未解決の〈カラヴァッジョの名画『キリスト降誕』盗難事件〉にマフィアがかかわっていることを告げ、実情を話すからフィクションの映画の脚本にしてくれという。 仮にバレても書いたのはアレッサンドロで、ヴァレリアには危険はないから、と。 ヴァレリアが書き上げた事件の裏側に迫るプロットはプロデューサー、映画監督から熱狂を持って受け入れられ、映画の制作が始まる。
 しかしマフィアにとっては“都合の悪い出来事”故、なんとか制作中止に追い込もうとアレッサンドロを拉致、昏睡状態になるまで痛めつけるが、「ミスターX」を名乗る者(ヴァレリア)から「アレッサンドロから預かっていた」と撮影の続きの台本がメールで送られてくるように。 「ミスターX」は誰だ!、と騒然となり・・・、という話。

  盗まれたカラヴァッジョ1.jpg 40歳過ぎて独身、母親と同居はイタリアでも肩身の狭いものであるらしい。
 何故ヴァレリアはゴーストライターで甘んじているのか、というのがよくわからなくて・・・無理しているわけでもなく、自分から進んでやっている感じで。 なのでアレッサンドロのいい加減さに腹が立ってくるのだけれど、マフィアに「絵の盗難に次いで詳細を誰から聞いた?」と脅されても「あれは自分が考えた想像の産物だ」と言い張ったのには見直しましたよ(たとえ、自分の見栄のためであろうとも)。
 しかし“普通の人”が誰も出てこない。 ヴァレリアが主役という形なので彼女に共感しようと思って観ているのだけれど、「え、それ、ヤバくない?」ということをどんどんやる・・・共感はあきらめ、この人はどこまで行くのだろうと眺める感じになっていった。
 原題は『名もない物語』、ヴァレリアが書いたプロットのタイトルと同じ。 あっ、カラヴァッジョはそんなに関係ないんだ、邦題詐欺(?)か、と気づく頃には盗難事件は置いてけぼりである。 これ現実? 妄想?、となんだかハラハラする。

  盗まれたカラヴァッジョ2.jpg 母親のアマリア(ラウラ・モランテ)は序盤、観客には母親と教えられないので姉かと思ってしまった美魔女ぶり。
 ヴァレリアの母親へのこじらせ具合もなかなかで面白いのですが、「表に立つ男を陰で支える女」である母親に反発しながら同じようなことをしているヴァレリア・・・で、結局母親と和解してしまうのなら・・・イタリアに根深いという男尊女卑的感覚が拭えないんですけど・・・ともしかしたら映画のテーマとは違うところでもやもや。 『ローマに消えた男』と『修道士は沈黙する』ではそんなこと感じなかったのに、主役が男性だったからか? それはそれでショック。

  盗まれたカラヴァッジョ3.jpg ヴァレリアの変貌ぶりも見どころ。
 ラック役のレナート・カルペンティエリは、『ナポリの隣人』の予告で観た「マンディ・パティンキンにちょっと似た人」である(『クリミナル・マインド』のギデオンのほうではなく、『HOMELAND』のソールのほう)。 普通の人が出てこない分、登場人物のキャラがみんな濃くて「さすがイタリア!」と思う。
 映画の監督を引き受ける巨匠クンツェとして出てきた人にも見おぼえがあり・・・イエジー・スコリモフスキじゃないか! そりゃ巨匠だね!
 とか思っている間にクライマックス。
 ・・・あれ、こんなはずでは。
 結局、現実と虚構の境目が限りなく曖昧、というテーマなら『ローマに消えた男』のほうがぐっと洗練されていたのに。
 あぁ、なんかすごくもやもやする。 期待しすぎたのであろうか。

 あ、約一か月半ぶりのシネ・リーブル神戸は、クーラーききすぎでした・・・休館中に空調を新しくしたか分解掃除でもしたのでしょうか。 熱くもなく寒くもなく、常にちょうどいい温度だったのに。 今後はストール的なもの必須だわ(感染症拡大防止のため、ブランケットの貸し出しは休止中です)。

posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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