2020年05月24日

ミズーラ 名門大学を揺るがしたレイプ事件と司法制度/ジョン・クラカワー

 ジョン・クラカワー最新作を、「読むのもったいない(読み始めたらすぐ読み終わってしまう)」という理由から隠匿していたのを、3年半ごしぐらいに読む。 やっぱり、読み始めたら一気だった。 でも、もっと早く読むべきだったような、いや、今だからこそなんとか冷静な気持ちでいられるというか。

  ミズーラ.jpg 実物の赤さは画像以上に強烈だ。
 アメリカ、モンタナ州で第二の都市ミズーラにはモンタナ大学があり、そのアメフトチーム「グリズリーズ」(愛称グリズ)は市民の誇り。 だが2010年から2012年にかけてグリズの選手たちが起こした複数の性暴力事件が明らかになった。 巻き起こったのは被害者への誹謗中傷。 何故被害者は告発することをためらうのか、何故被害者はセカンドレイプに苦しめられなければならないのか、何故加害者は守られてしまうのか。 インタビューと取材を通して、著者はレイプ事件の真相と司法制度の矛盾に迫る。

 いやー、つらい。 ノンフィクションだからこそ、物語的着地点がない。 罪に問える場合がある一方で無罪判決が出るものもあり、だとしても被害者の苦しみはなくならないわけで、ただただやりきれない。 その事件の前に戻れないか、とひたすら思う。
 「レイプ犯の、八割以上が顔見知りである。」と帯にあるように、本書で描かれている事件の被害者と加害者は顔見知りどころか家族ぐるみでの長い付き合いであったりもする。 だから被害者側の衝撃は大きい、自分のよく知っているはずの人がそんなことをするなんて信じられない気持ちや信じたくない気持ちにも押しつぶされるから。
 しかも加害者側は市民が応援するアメリカンフットボールチームのスター選手だったりするわけで、「チーム優勝のために有力選手が逮捕なんてとんでもない。 そもそも彼らは普段からモテモテなんだから女性をレイプする必要なんかない。 女に陥れられている!」とオヤジ概念に固まった方々から擁護されてしまうという・・・ある都市のある時期を切り取っただけだけど、それは全世界のこういう問題にそのまま置き換えられるわけで。
 日本でもここ最近だけでセクハラ→性暴力の件がどれだけ騒がれたことか。 だいぶ変わっては来たけれど、それでもやはり被害者側が叩かれ、加害者側が責任を取らないことは多いので。
 誹謗中傷は恐ろしい。 何事においても「自分だったらそんなことはしない」→「そんなことをするやつがおかしい」という発想が「自分が正義」になってしまう危険、それが人を追い込むこともあると誰もが自覚しなければ。

posted by かしこん at 15:15| Comment(0) | ☆ 読んじゃいました | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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