2020年04月12日

ザ・ラウデスト・ボイス ― アメリカを分断した男 ―

 今月のWOWOWプレミアにて、『ザ・ラウデスト・ボイス−アメリカを分断した男ー』を観る。
 全7話、日本語吹替版で。 アメリカのケーブルテレビチャンネルFOXニュースの初代CEOロジャー・エイルズ(ラッセル・クロウ/山路和弘)の姿を1995年から2016年まで描く。 映画『スキャンダル』の別視点ドラマ(2019年制作とのことなので、企画は映画とほぼ同時進行だったかと)。
 ただ映画ではニコール・キッドマンが演じたグレッチェン・カールソンをナオミ・ワッツがやるあたり(この二人はオーストラリア時代からの親友というのはよく知られていること)、狙っている部分もなきにしもあらずかと。

  ザ・ラウデスト・ボイスP.jpg ラッセル・クロウ、特殊メイクで。
 1995年、CNBC局(後のMSNBC局)を差別的発言などの問題行動で解雇されたロジャー・エイルズだが、メディア王ルパート・マードックが新たに始めるニュース専門局FOXニュースの初代CEOとなる。 ロジャーは「ニュースはジャーナリズムではなく、ショーだ」と主張して開局準備を進め、ジャーナリズムを守りたいスタッフたちは次々と去っていく。 ロジャーは強権をふるってFOXニュースを全米の保守派層に受けるよう食い込ませ、必要とあらばフェイクニュースを用いることも辞さなかった。 2001年9月のアメリカ同時多発テロ事件により愛国保守姿勢をさらに強めることで、FOXニュースは全米視聴率ナンバー1を獲得、CNNよりも人気のあるニュース専門局となった。 そしてロジャーはその裏でパワハラ・セクハラを繰り返し、同時に政治的影響力を強めて大統領選挙にも口出しをするように・・・という話。

 前半はロジャー中心、後半はロジャーをセクハラで訴えたグレッチェン・カールソン(ナオミ・ワッツ/藤貴子)も中心にしつつ、の構成。 『スキャンダル』で語られている部分はあえて描かない(どうしても必要なところだけ)、メーガン・ケリーもニュース映像でだけ登場というのも差別化した結果か。 グレッチェン以前の被害者たちの姿がより強く印象付けられる。 時間を割いて描けるのが連続ドラマならではだけど、秘密保持契約を守っている人たちも多いのでどこまで事実を踏まえているのかわかりにくい(映画との違いが気になってしまった)。
 もうロジャーは最初からパワハラ体質で、こういうタイプが出世しちゃうから被害が出るんだよ!、と思うが、そういうタイプだからこそ権力を志向してしまうんだよな・・・(で、強引なので結果も出してしまったり)。 力を持ってしまったらまわりが何を言っても聞かないし、結局イエスマンばっかり残っていく・・・という悪循環。 ラッセル・クロウ、『バイス』のクリスチャン・ベイルばりのふてぶてしさでロジャーを熱演、踏んづけてやりたい衝動を何度も感じましたよ。 でもただイヤな奴というだけでなく、自分がしたことが最終的に自分に返ってくるような被害妄想になるところまで踏み込んだのがよかったです。 一切救いがなくて。 外画でもアニメでもすぐわかる山路さんの声ですが、今作はちょっとわからなかった! 一回考えて、「あぁ、山路さんか」と気づく感じで、ラッセル・クロウの喋り方とかロジャーの体形を意識しているのかなと思ったり。 それも吹替版の楽しさです。
 興味深いのはロジャーの妻・エリザベス(シエナ・ミラー/山口協佳)の描かれ方。 一貫して、「夫を疑うことなく信じ続ける妻」というポジションで・・・ロジャーもまたベスを大事にしているのですが(だったらなんで浮気とかセクハラするのかと思うが、それとこれとは彼の中では別な様子)、ベスの存在はロジャーのブレーキには全くなっていない。 身体もどんどん悪くなっているのに、不健康な食事を改めないロジャーを「それじゃ駄目よ」と諫めつつも、結局彼の言うとおりにしてしまう、許してしまうベス。 夫に従うのが美徳という世代なのか? それは自分で考えることを放棄しているからじゃないのか?
 FOXニュースは、ロジャーの件が明らかになった後でも視聴率ナンバー1を続けているという。
 ハラスメントは当事者間のことだけでなく、すべての人の問題(いつか自分にも降りかかるかも)だということが伝わってない? 結局のところ、人は“ひとごと”だと思えば何もしないということなのか。 共感力や想像力の欠如が分断を生む。
 ロジャーのパワーゲームの結果が大統領ドナルド・トランプの誕生を手助けしたのか・・・アメリカ保守層、マジヤバいよ。
 とはいえヤバいのは日本も同じだ・・・COVID-19で世界はどう変わるのか、これはその前のひどい話ですよ、と言えるようになったらいいんだけど。

ラベル:海外ドラマ
posted by かしこん at 20:48| Comment(0) | WOWOW・CATV | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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