2020年03月26日

ダンサー そして私たちは踊った/AND THEN WE DANCED

 今回のアカデミー賞国際長編映画賞スウェーデン代表、でも舞台はジョージア。 ここ数年聞くようになった国名“ジョージア”だけど今ひとつピンとこないあたし・・・“グルジア”の読み方が変わっただけだとわかっているのに、ジョージア州のほうが先に浮かんでしまう・・・。

  ダンサーそしてP.jpg <彼>と出会い、青年は羽ばたく――
 ジョージア国立舞踏団のトップダンサーを目指す青年の<運命を変えた恋>と青春の物語

 ジョージア王立舞踏団に所属するメラブ(レヴァン・ゲルバヒアニ)は日々ハードな練習に参加しながら、夜はレストランでアルバイトをして家計を支えている。 兄も同じ舞踏団にいるが真面目に練習に出てこない日も。 離婚して父親は家を出ており、年老いた祖母と何もしない母親がいるため、メラブは自分が大黒柱であることを自覚している。 ダンスパートナーのマリ(アナ・ジャヴァヒシュヴィリ)とは10歳からのつきあいだ
 ある日、舞踏団に新しいダンサー、イラクリ(バチ・ヴァリシュヴィリ)がやってきた。 空気を読まないイラクリの言動に驚くメラブだが、彼の踊りに目を見張る。 その後、世界を回るメイン団メンバーに男性ダンサーの欠員が出て、オーディションのためにメラブたちは更なる練習に身を入れるが・・・という話。
 ドキュメンタリータッチというか、「日常を切り取った」的な映像。 わかりやすい説明もなく(主人公の名前もしばらくわからない)、淡々と進んでしまう。 でもメラブの目が、表情が、肉体の動きが何かを言いたげで、ついずっと追いかけてしまう。

  ダンサーそして3.jpg しなやかな筋肉、ダンサーとして完璧っぽいカラダがすごい! ご本人はプロのコンテンポラリーダンサーで映画初出演だそうです。 でもこういう感じの俳優さん、いると思う。
 昼間寝てばっかりの母親、昔のイメージをずっと引きずったままの祖母がなかなかひどい・・・がんばろうとする・がんばっているメラブが痛々しくて健気で泣けてくる。 貧しい家、ダメな親、家計のことも考えてしまう弟、目先の方に転んでしまう兄・・・、ジョージアでも家族をめぐる悩みは同じか・・・。

  ダンサーそして1.jpg マリもいい人。
 気づけばジョージアの“旧共産圏らしき素朴さ”に目を奪われる。 設定は現在ですよね? なのにレッスン終わりに大きなプレッツェルみたいなやつを一つ買って仲間みんなでパリパリと割って分け合うとか、一昔前の部活帰りの高校生みたいなんだもの。 ほのぼのするわ〜。
 ただ踊ることは知っていても、それ以外の自己表現の仕方を知らない若者たち。 伝統舞踊だから踊りにも型があるのだろう、その型から飛び出す踊りをしたいのにできない苦悩は、昔ながらの価値観・固定された常識を押し付けられる苦しさと同じ。 でも気づかない人は気づかないから、気づいた人は余計苦しい。

  ダンサーそして2.jpg 微妙な三角関係(?)もあり。
 家族・ダンス・恋愛という、それぞれ一つで物語の題材に十分になるものを結構なウェイトで入れているので、なんかもう視線をずらす余裕がないほど。 マリの友だちのバースデイパーティーとか、貧富の差もまたせつなくて、でもそれ故に青春の輝きは増す的な。 ただ空気感はいかにもヨーロッパ映画なので、慣れていない人はつらいかも・・・(かなり早い段階で寝てしまっている人がいました)。
 とにかくメラブがなんとも魅力的。 ちょっと情緒不安定そうな表情、いたいけな瞳、バレエダンサーのような隅々まで神経がいきわたったような筋肉。 自分が世界を背負っているぐらいの構え方と、自分を含めて誰も信じていないという矛盾を無理なく抱える佇まい。
 胸がきゅんとしますよ。

  ダンサーそしてP2.jpg 成長は痛みを伴う。
 だからって、その痛みに耐えなきゃいけないのはつらい。 通り過ぎたからいえる言葉。
 映画は希望を感じさせる終わり方で、それも青春だとしみじみ。
 なんだか心が洗われた。

posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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