2020年02月20日

だから殺せなかった/一本木透

 鮎川哲也賞受賞作だからといって読まなくなったのはいつからだろう。 かつてはちゃんと読んでいたのに、賞に関係なくとも東京創元社からデビューする新人だというだけで読んでいたこともあるのに(その頃読んでた人たちは、今でも新作が出ると読んだりしているのに)。 好みの作品が続いた時期か、自分の年齢か。
 『ジェリーフィッシュは凍らない』を久々に読んだのが数年前で、それ以来かも。
 これは“あの『屍人荘の殺人』と栄冠を争った”として第27回鮎川哲也賞優秀賞受賞となった話題作だが、タイトルのインパクトがずっと頭に残っていて・・・図書館で予約したらやってきたので急いで読む(他の予約も詰まっていた)。 普段翻訳物中心に読んでいるせいか、日本人の書くものはやはり読みやすく、ほぼ一気読みだった。

  だから殺せなかった単行本.jpg 「新人離れした筆力」、確かに。
 クオリティペーパーと呼ばれる大手新聞社に届いた手紙は、首都圏で起こっていた三つの殺人事件を自分の犯行だと、無差別連続殺人だと伝えるもので、新聞紙上での公開討論を要求してくる。 指名された新聞記者は、これまでの連載で自分もまた過去に犯罪者の家族と関係があって報道と正義に対し割り切れない思いを告白していた。 人間を駆除すべきウィルスだと断言する犯人は「おれの殺人を言葉で止めてみろ」と記者に挑戦状を叩きつける。 そして始まる報道合戦の行方は。

 作者は新聞社関係の人なのかな?、と思わせるディテールは素晴らしい。 斜陽になってきている新聞という産業を描いているところもいい(ペンは剣よりも強し的な理念では通用しない部分)。
 ミステリとしても大変フェアなのだが、枚数が少ない&登場人物が少ない故に途中でわかってしまう!、のが残念。 せめて視点人物をもう一人増やしていたら、もしくは三人称視点なら、もっと盛り上がったかもしれない。 しかしモノローグ形式だから最後まで畳みかけを続けられたのかもしれないし・・・。
 面白かったのだけれど、「もっと面白くなったのに!」という感覚が拭えない、なんかもったいない感じが残って世界にのめり込めなかったのがほんとに残念だ・・・大きなテーマであるが故に、やはりもっと枚数が必要だったよ。
 しかし装丁(裏表紙も)が内容(特に結末)とリンクしていて味わい深い。 作品として作り手に愛されている感じがする、それ故に読者も不足分を含めてこの作品を愛してしまう。

ラベル:国内ミステリ
posted by かしこん at 22:00| Comment(0) | ☆ 読んじゃいました | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。