2019年12月27日

焼跡の二十面相/辻真先

 『このミス』対談によりさっそく読みたくなったこれ、仕入れてくる(あと、以前読んだかどうか自信がない『あじあ号、咆えろ!』も一緒に)。
 思ったより、薄い!(260ページない)、ことに驚くけど、かつて読んでたポプラ社の<少年探偵団>シリーズも、文字数としてはこんなものだったのかもしれないなぁと納得(フォント大きかったし、行間広いし、挿絵もあったし)。

  焼跡の二十面相.jpg この表紙ビジュアル、大変いい!
 昭和二十年、夏。 敗戦という事実を突きつけられた少年探偵団団長・小林芳雄くんは戦争にとられた明智先生を待つために、疎開もせず、物質的困窮をものともせずに、明智探偵事務所を守っている。 ある日、旧知の中村警部と出くわし、不可解な犯罪に遭遇する。 その調査過程で、小林少年は怪人二十面相からの挑戦状がある大邸宅の門のあたりに貼ってあることに気づく・・・という話。
 正史ではこの時期のことは描かれていないが・・・それもむべなるかな、というか、むしろ当たり前だと思えるほどの東京とその近郊の荒廃振り、物資のなさに胸が痛くなる。 小林くんが坊主頭とか、たくあんのしっぽをよく噛んで空腹を紛らわすとか、痛々しくて泣きそうだが、あの時期、生き残った誰もが通る道。 「困窮の中にありました」とドラマやドキュメンタリーなんかでもそんなナレーションで片付けられてしまうかもしれないけれど、実際に何日も何週間も何月も、ひもじさに耐えていたのは子供たち。 そして戦争に負けたことで今まで教えられたことが180度変わり、「鬼畜米英!」と叫んでいた大人が進駐軍にペコペコする姿を見せられて・・・素直で純真な子供ほどトラウマになるよ。
 さて、そんなトラウマを持つ辻真先によるこれは、江戸川乱歩の<少年探偵団シリーズ>のパスティーシュでありつつも正伝の間を埋める役割も。 地の文は「いかにも乱歩的文体」の特徴をとらえつつ、今の視点から見て過剰にならないようにすっきりと。 いつもの辻真先文体との融合が図られていてニヤリだ。 また子爵邸に施された大掛かりな仕掛けなど、まさにあの感じ!
 回顧主義っぽいものの中に、現代を刺す鋭さがちらほらと。 戦中戦後を体験したものとして、言い残しておかねばならないことがいっぱいある・・・という感じなのであろうか。
 ラストのたたみかけの大味具合もまさに乱歩的。 終わり間近に急遽登場した豪華ゲストに対する爆弾発言は・・・そこまではっきり言っちゃっていいんですか!

ラベル:国内ミステリ
posted by かしこん at 04:42| Comment(0) | ☆ 読んじゃいました | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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