2019年09月29日

フリーソロ/FREE SOLO

 この前のアカデミー賞授賞式のフッテージでこれを観て、「なんかすごそう!」と思ったのでした。 何故山に登るのか、についてサミッターたちの気持ちはなんとなくだけど理解できたような気がしたのでこの方面はもういいかなと思いきや、結局興味はずっとあるみたい。

  フリーソロP.jpg ラスト20分――極限を超えた体感。

 クライマーのアレックス・オノルドは現在、“フリーソロ”の第一人者として活躍中。 フリーソロとは高い急な斜面や崖をロープなどを一切使わずに登攀することで、登山の種類では最も危険度の高いものとされている。
 アレックスはカリフォルニア州のヨセミテ国立公園内の高さ975メートルもある“エル・キャピタン”の岩肌を登攀することを決意し、日々のトレーニングを重ねる。 そしてその計画を知ったドキュメンタリー映画スタッフたちは、アレックスの姿を追うプロジェクトを始める・・・という話。
 そんなわけでこの映画は2016年の春から始まり、2017年春のアタックまでを追う。

  フリーソロ2.jpg これがアレックスの家。
 車に住んでいるとはいえ、きちんと掃き掃除をするなどまめなタイプ。 肉を食べるのをやめたのは衛生面を考えてのことだろう、「食べなくなってから倫理的なことが気になってきた」というのはアレックスの性格を感じられる言葉だった。
 書店のイベントやテレビ番組にゲスト出演などするアレックスは、ハンサムとは言い切れないかもしれないけど、誠実そうでちょっとうっかりしたところもありそうな“いかにも好青年”なのに、山に入ると顔が変わる。 どちらがほんとの自分なのだろう、と感じるくらいに。 けれど彼にとってはきっとどちらも自分・・・フリーソロが常に命がけであることも彼はわかっている。

  フリーソロ4.jpg こんなところまで登っちゃうのね。
 フリーソロは滑り止めの粉の入った容器を腰に下げるだけで他に道具は使わない、とはいえ登攀するのにぶっつけ本番というわけではなく、フリーソロで登るために最適なルートを探すのが最も重要な準備である。 またアレックスには生活への考え方は正反対だが「チャレンジを何よりも優先する」という彼の考えを理解している恋人がいて、「彼女は僕の人生を豊かにしてくれる」というけれど、彼女と付き合い始めてからアレックスは登攀中に二度ケガをしている。 「恋愛と登攀は両立できないのか?」という命題まで出てくるのが興味深い。

  フリーソロ5.jpg 指の力だけで全身を動かせます。
 岩肌のちょっとしたでっぱり・ちょっとしたくぼみだけを頼りに登るわけだから、手を鍛えるのはもちろん、靴の選び方も重要。 足にフィットし、なおかつ繊細に感じられないとダメだし。 まさに日々のトレーニングは欠かせず、そりゃ生活態度はストイックになっていきますよね。
 だが・・・この映画が追うのはアレックスだけではない。
 むしろ後半、大きな役割を果たすのは、彼を<撮っている人たち>。
 望遠レンズで下から狙う、ルートを通るアレックスを撮影できるように定点カメラを前もって設置、ときにドローンも使えるように用意。 実際にカメラを覗く人、すべての映像をモニターで管理する人、多くの人が参加しているが・・・みな矛盾を感じている。 もし、撮っているときに何か起こったらどうするのか。 撮っていることがアレックスに余計にプレッシャーを与えてはいないか。
 「あぁ、もう観ていられないよ」とカメラから離れた人の人間性に、ちょっと心打たれてしまったよ(プロのカメラマンとしては失格と言われてしまうのかもしれないが)。

  フリーソロ1.jpg だんだん、観ているこっちが重力がわからなくなる。
 アレックスが崖を登っているのではなく、巨大な岩の上を腹ばいで進んでいるように見えてきたり。
 クライマックスが近づくにつれ、危険なルートを通ろうとするアレックスの姿に観客全員が同じタイミングで息をのみ、手や肩に力が入り、また同じタイミングで息をはくなど、全然知らない者同士が集まったその場で、ものすごい一体感が生まれてしまった。 だから余計に、カメラマンさんたちの気持ちが理解できたんだと思う。
 それがきっと、<ラスト20分――極限を超えた体感。>だったんだろう。
 上映後・・・複数で観に来た方々は大興奮で見たことを声高に話し合いながら出ていく。 次の会を待つ人たちにネタバレになりはしないか・・・とハラハラしつつ、そこにある静かなる熱狂に度肝を抜かれた。 『メルー』を超えたぞ、これは。

posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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