2019年07月12日

パールとスターシャ/アフィニティ・コナー

 先日読んだ『ヨーゼフ・メンゲレの逃亡』からのつながりで、これを。
 あっちは<ノンフィクション・ノベル>だったが、こっちはフィクション。 とはいえ事実を下書きにしてある。
 あぁ、今更近現代史を学んでいるよなぁ・・・。

  パールとスターシャ.jpg 一面のヒナゲシ。
 1944年、12歳の双子パールとスターシャは家族とともにアウシュヴィッツ絶滅収容所に送られたが、“死の天使”ヨーゼフ・メンゲレに目を付けられ<メンゲレの動物園>に二人だけ入れられる。 殺される危険は遠のいたが、双子という存在にとりつかれた医師の実験対象としての日々が待っていた。 パールとスターシャ、それぞれの視点から交互に描かれた恐るべき世界と、少女たちの純粋さの記録。

 これもまたつらい話だが、パールとスターシャの強さと双子故の違いの大きさが牽引力となって一気に読了。 現在進行形ではなく、ある時点から過去を振り返っているのだろうと冒頭から確信できたので、途中で二人が非業の死を遂げることはないと思えたのも大きかった。
 少女独特の想像力と潔癖さって最強だな・・・と改めて感じさせる一作。 何度も目から涙がこぼれそうに。
 メンゲレは実在の人物ではあるが、悪魔のようなキャラにもなっているな、と。 今回は二人の目から見たものだから余計に、ただ気まぐれに残酷なだけのイカレたやつでしかなく、腹立たしいことこの上ない。 だから、人間性を失わない数少ない大人たちが尊く思えてしまう悲しさ。 そんなことではダメなのに。
 パール、スターシャ、それぞれの言葉に何度も胸を突かれたが、最も刺さったのはこれだった。

> でも、わたしとしては――自分が許したがっているとわかった。わたしを苦しめた者は決して許しを乞うまい――これは確かだ――それでも、許すのが自分に残された唯一の本物の力かもしれないと知った。
 復讐するのが生きる糧だったのに、あるときそう考えるのだ。 13歳で! あたしにはそう思えるかどうかわからない・・・。
 原題の“MISCHLING”、本文中では「混血児(ミシュリング)」として出てきた。 ミシュリングはルビとして。 混血とは・・・ユダヤ人の血が流れている、という意味か? ナチス時代に制定された法的な定義らしいが(勿論、勝手な差別だが)、パールとスターシャが大好きな学者のおじいちゃんからは「すべての生きものの多様性」の素晴らしさとして教えられていて・・・。
 赤いヒナゲシは流された血、倒れた人々の象徴なのだろう。 ヒナゲシの可憐さや美しさはそのままなのに・・・。

ラベル:海外文学
posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | ☆ 読んじゃいました | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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