2019年07月03日

ハウス・ジャック・ビルト/THE HOUSE THAT JACK BUILT

 ラース・フォン・トリアーの映画を観ると気分的に不愉快になるのはわかっているのに、何故それをわざわざ確認したくなるのだろう? なんだかんだ言ってあの画ヂカラはすごいと思っているからだろうか。 題材がシリアルキラーというのもはまりすぎ。

  ハウス・ジャック・ビルトP.jpg ゾッとするほど、魅力的

 これは連続殺人犯ジャックの12年間を振り返る告白。
 ジャック(マット・ディロン)は順不同で、自分にとって印象深い5つの出来事をヴァージ(ブルーノ・ガンツ)に語る。
 たとえばジャックが赤いワゴン車で雪の季節に林の中の道を通ったとき、立ち往生している女性(ユマ・サーマン)に助けを求められる。 車が故障したらしい。 ジャックは彼女に押し切られて修理工場まで送ることにするが、彼女の失礼すぎる言動に腹を立て・・・。

  ハウス・ジャック・ビルト3.jpg ユマ・サーマン、強烈な役。
 5つの出来事+エピローグという構成が見やすいけど、これって上映時間が長いパターンだわ(152分でした)。 トリアー映画では出演者はみんなひどい目に遭うのがお約束(?)だけど、これもひどい目に遭っている。
 「カンヌ映画祭で退席者続出の問題作、日本では無修正ノーカット版を公開!」とのことですが・・・トリアー作品が問題になるのはキリスト教圏だからで、宗教的タブー感の薄い日本では問題にならないというだけのことでは。 R+18だし血みどろも残虐な場面も多々ありますが、作り物だなぁとわかるからそこまでではないなぁと思っちゃうけど、ただあたしの感覚がマヒしているだけかもしれない。 唯一ヤバいと思ったのは、少年時代のジャックの回想でアヒルの足を片方切っちゃうところ(エンドロールで「動物に傷をつけていません」的な注意書きが大きめに出るのもギャグなのか皮肉なのか)。
 やはり、人を不愉快にさせる映像が満載なのは間違いない。

  ハウス・ジャック・ビルト2.jpg マット・ディロン、この役をよく引き受けましたね。
 ほぼ出ずっぱりの彼はすごい好演で、賞にノミネートされてもいいのに。
 ほんとにイヤなヤツで、1ミリも同情できない(むしろ地獄に落ちてほしい)存在を観客に「見たくない」と思わせないで最後まで引っ張るってすごいと思う。 場面ごとに顔が変わって見えるのもなんだか面白かった。 あるときはジム・キャリー、あるときはイーサン・ホーク、みたいな。 今まで似ていると思ったことはなかったけど、役作りの結果?
 非常に不愉快で残酷な話がずっと続くのに、シュールでちょっと笑っちゃうような描写もあり・・・「鎌で草を刈るシーン、『白いリボン』にも出てきたけど深い意味があるのか?」などヨーロッパの価値観について考えたりもできる。
 ジャックは強迫神経症で、人を殺せば殺すほど(後片付けを含めて経験値が上がるほど)症状が落ち着いてくるというのは・・・さすがに「現実のシリアルキラーではない」と思った。 ジャックの衝動は、映画を作り続けるトリアー自身が重ねられたものなのだろう。

  ハウス・ジャック・ビルト4.jpg ブルーノ・ガンツが登場するのはほぼエピローグ。 冒頭から声だけはずっと登場しているのだが。
 果てはダンテの『神曲』、地獄めぐりとてんこもり。
 トリアー映画では撮影中にいちばんひどい目に遭うのはヒロイン演じる女優さんというイメージだが、実はベテラン男優さんもひどい目に遭うほうがあたしは気になっていた。 そしたらブルーノ・ガンツもとんでもない目に遭わされており、「あぁ、彼にそんなことさせるなんて!」と何度か現実に戻ってしまった。 「役者はそれが仕事なんで」と言われてしまったらそれまでなんですが、だとしてもこんな過酷な撮影に付き合わせる必要ある? 相手はご高齢、結果的に去年亡くなっている方なんですよ! ハラハラしましたわ。
 <ジャックが建てた家>とは? 拍子抜けするほど予想通りでしたが・・・「なにを・どこで・どうやって」を逡巡する過程が必要だったのですよね、わかります。
 賛否両論というか、途中で席を立つ人の気持ちもわかります。 でもあたしは最後まで観てしまった(ブルーノ・ガンツが出てきたから余計に)。
 そしたら、最後まで観たご褒美ですか? エンディングに流れた『旅立てジャック』には大笑いしそうになった。
 ・・・あぁ、なんて壮大な悪ふざけ。
 というか、監督の悪ふざけにあたしもつきあってしまったよ、な感覚。

  ハウス・ジャック・ビルトP2.jpg 前売券特典のポストカード。
 こんなものをもらってどうしろと・・・だからあたしはいつも通りに(前売券を買わずに)メンバーズ特典で観ましたよ。 初日の入場特典は、縛られて転がっている(?)トリアー監督のポストカードだったらしい・・・やっぱ、悪ふざけじゃん。

posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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