2019年05月19日

監禁面接/ピエール・ルメートル

 「ピエール・ルメートル新作!」と言われましても、ハードカバーなのはちょっと・・・。
 そのうち文庫になるだろう、と思っているうちに、図書館の予約者数が減ってきたのでとりあえず申し込んでみたら・・・忘れてた頃にやってくるという。 まだ予約の人がいるから早く読まないと!、でもハードカバー抱えて通勤電車で読むのもちょっと重いんだよな・・・と危惧していたけれども、週末のうちに一気読み。

  監禁面接 ピエール・ルメートル.jpg 明らかに物騒な表紙&装丁だが、残酷描写は今回ほぼなし。
 人事畑一筋で歩いてきたアランは、リストラで職を失い、また同じような仕事に就けると再就職活動を頑張ってきたが、それももう4年目で、57歳になってしまった。 早朝の製品梱包のバイトなどをいくつか掛け持ちし、必要なお金を稼いでいる状態。 が、そんなある日、アランに一流企業の人事副部長職の応募のチャンスが! 何かの間違いだと感じつつも一時の筆記試験を受けたら、通ってしまった! これでやっとまともな仕事ができるのではと夢見るアランだったが、提示された最終選考は予想もしない恐ろしいものだった・・・という話。

 <ノンストップ再就職サスペンス!>とあるのですが・・・このコピー、合っているような合っていないような。
 確かにアランはかつて働いていたような状態に戻りたい、という強い一念で<常識外の最終試験>に取り組むのだけれど・・・その取り組み方が尋常ではないというか、明らかに常軌を逸している。
 第一部“そのまえ”はアランの一人称であるというのに、彼の苦境や苦悩がしっかり描かれているというのに、どうも彼に寄り添えない。 勿論、感情移入できないから面白くないということではなくて、アランのこのキャラは作者の計算なのではないか、とつい勘ぐってみたりして。
 第二部“そのとき”はページ数も少なく、また語り手も違う人になるのでアランのヤバい感じがより浮き立ち。
 第三部の“そのあと”で再びアランの語りに戻るわけですが、その流れで彼が相当壊れてきているのにあまりそれが目立たない効果になっており・・・どのようなとんでもない展開になろうがあっさり受け入れられる準備が整っておりましたよ。
 それなのに、描かれているテーマは意外と道徳的で、求めるものが違う男と女の悲劇・自分が価値を重く置くものを家族全員が同じように思うはずと思い込む悲しさとむなしさがより響く。
 「働く」とはいったい何だろうか、ということを改めて考えさせられる感じというか・・・アランは57歳だからもう変えられなかったのかな。

 帯で「最新作」と謳っておりますが、実際は『その女アレックス』の前に書かれたもの・・・ピエール・ルメートルの長編3作目。 なるほど、こういうのを書いていたのなら、のちに『天国でまた会おう』を書いたのも納得。

ラベル:海外ミステリ
posted by かしこん at 06:22| Comment(0) | ☆ 読んじゃいました | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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