2019年05月16日

魂のゆくえ/FIRST REFORMED

 今年のアカデミー賞で脚本賞にノミネートされてたもの。 他の候補にはあがっていなかったので、脚本がよほどよいのであろうか、と気になっていた。 『タクシー・ドライバー』のポール・シュレイダーが監督・脚本だと知り、しかも「キリスト教をわかってないと難しい」という噂も耳にし、怯むけど結局観に行くことに。 神戸では上映期間ギリギリだったが、なんとか時間に間に合った。
 なんだか、イーサン・ホークはいつも苦悩しているようなイメージがあるんだけど。

  魂のゆくえP.jpg 巨匠ポール・シュレイダーが構想50年の末に完成させた“いま”を射抜く渾身作!

 牧師のトラー(イーサン・ホーク)はニューヨーク州北部の教会<ファースト・リフォームド>に所属している。 ある日、信徒のメアリー(アマンダ・セイフライド)から「夫が心配だ」と相談を受ける。 メアリーの夫マイケルは環境活動家で、地球の未来を悲観し、そんな世界に自分たちの子供を送り出していいのかと悩み、妊娠中のメアリーに子供を産むのはやめようと言っているのだ。 トラーはそんなマイケルにメアリーの出産を、子供が生まれることを受け入れるよう説得するのだが・・・という話。
 まるで左右対称の構図を引き立てるかのような4:3の画面(いやもっと横狭いかも、正方形に限りなく近い)。 じわじわとカメラが動くのは最初だけ、あとはほぼ固定で、まるで舞台を見ているかのような気持ちになる。
 原題の<ファースト・リフォームド>は“カルヴァン主義を採用する改革派教会”のことだった・・・「最初に形作られたもの」と自分で勝手に訳してしまったじゃないか。 牧師だからプロテスタントなんだろうけど、細かな流派の違いはわからないぜ。

  魂のゆくえ2.jpg 左右対称に近い構図が多かった。
 マイケルを説得する過程で、トラーが元軍人で子供を失っていて・・・とバックグラウンドがわかってくるのだが、逆に、「あなた、自分の信仰に疑問を感じてますよね?」と訊きたくなること多々。 だからマイケルへの説得がうまくいかないし、言葉も響かない。
 日記に書く、という形でトラーのナレーションが入るのだが、ナレーション部分と他の人との会話部分とが全然トーンが違う。 むしろ、ナレーションのほうがトラーの本質のような。
 地球環境問題とカネは昔から絡み合っているものだが、宗教のほうがヒトとカネにもっと昔から絡んでいるものだったよ・・・と思い出させてくれるものの、癒着や利権の構図を個人でどうできるかはまた別問題。 そんな話が延々と会話で繰り広げられます。 これやばい、疲れているときには寝てしまうパターンだよ、コーヒー飲んでてよかった。

  魂のゆくえ4.jpg 妊婦が自転車乗っちゃダメ・・・。
 トラー視点で描かれるので、メアリーは「神を信じる、迷える弱き信徒」のお手本のように見えるのだが・・・それはトラーが見たい姿であって実際は違うのでは?、と感じることしばし。 アマンダさん、大変かわいいですが。
 全体的に静かな映画なれど、ところどころでショッキング展開があり、マジカル・ミステリーツアーで不意を突いてもくる。 でもこの映画はほぼナレーションと会話が重要なんだろうな。
 教会と牧師を取り上げたのは、思索することに必然がある職業だからかな。 宗教がなければ成立しない話ではないし、カルヴァン主義を知らないとまったく理解できないということもない。 教会のような巨大なものも、資本主義社会なら置き換え可能だろう。
 <教会>が信徒の意図せざる形に大きくなっていく、というのはロシア映画『裁かれるのは善人のみ』でも描かれていたけれど・・・。

  魂のゆくえ1.jpg やっぱり苦悩してます。
 ラストシーンで「えっ!」となるが・・・これって多分、現実じゃないよね、幻覚か妄想だよね。
 というか、彼女はもはや救いの天使ではなくコナーを堕落させに来た悪魔じゃないかという気がしている。 キリスト教でも、最近は「自分の中に神がいる」(神の名は同じだが、あなたの中にいる神と私の中にいる神は違う)ことを普通に公言するようになってきて、絶対唯一神ってよくわからない多神教派の人間にも理解しやすくなってきたように思う(昔からそうで、ただあたしがわかっていなかっただけかもしれないが)。
 世界の変容は、救いを提示する絶対唯一神の存在を肯定できないところに来ているのでは。 いや、そもそも救いというのは人間が期待してしまうものとは違うのでは。
 もやっとしたままエンディングだけど・・・いろいろ考えさせられる。 思うことがぐるぐると頭を回っている。 しばらく続くんだろうな、これ。 そういう種類の映画でした。

posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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