「あ、これ読んでなかったぞ」と今更ながらに気づく。
<名探偵・法月綸太郎モノ>、長編第8弾であるにもかかわらず(しかも年末のミステリランキング上位に入っていたにもかかわらず)、いまひとつ個人的な盛り上がりに欠けたのは、彼があまり悩んでる感じがしなかったからだ。 <名探偵・法月綸太郎>は悩めば悩むほどキャラクターとして輝くような気があたしはしていて、とは言っても悩んでばかりでは事件は解決しないのでそのバランスが難しい。
これもあたしの勝手な受け取りだが、『生首に聞いてみろ』で法月綸太郎の悩みの方向がちょっと変わった(開き直った?)ようで、それを成長と見るか変化と見るかどうしよう・・・のまま結論は出していなくて。 新装版『頼子のために』で悩んでいる彼をまた読んでしまったので、そのまま紛れてしまった。
先日、出かける準備をしていたときに読みかけの本を入れるとカバンの中身に余裕がなさすぎる、と思って薄めの本から急遽選んだ。 それがこれだった。 読み始めると一気なんだけど。
前代未聞の<四重交換殺人>を実行に移すため、おかしなニックネームの4人の男たちがカラオケボックスの個室に集う。 トランプのカードを引くことで、殺す相手と順番を決めていく。
一方、都内で起こった「一見単純そうなのに解決できない事件」に頭を悩ませる法月警視から事情を聴いた息子の綸太郎は、ある可能性を考える・・・という、倒叙もの&本格謎解きのミックス。
四重交換殺人が最大の売り?
犯人たち側の視点で描かれる分量が多いので(特に前半)、<法月綸太郎モノ>である必然性は薄い。 でも警視とのやり取りはクイーン父子ものを連想させ、ニヤニヤしちゃう。 ある時期のクイーンの雰囲気も当然踏襲。
ただ320ページそこそこなので、ストーリー性を重視すると物足りない感じ。 ロジックに比重を置き、ミスディレクションの鮮やかさにニヤニヤしたいのならば十分満足できます。
ほんの少しだけど、法月綸太郎の苦悩の一片も見られたし。
あっさり読み終わると、続きというか他の作品がないのが困る・・・短編集をまだ残していたはず。 読みたくなって困るわ。
ラベル:国内ミステリ