2019年04月06日

半世界

 もともとの公開日は2月ぐらい? 神戸市での上映予定にはなかったので仕方がない、と思っていたら、OSシネマズミント神戸が急遽約2週間限定公開として3月30日から上映決定。 レイトショー枠があるし、タイミングが合えば行ってみようか、と考えていたところ、タイミングが合いました。 

  半世界P.jpg 描いた人生になってる?
   愛と驚きがぎゅっと詰まった映画です。

 父親から引き継いだ炭焼き窯で、白炭と呼ばれる備長炭を作っている紘(稲垣吾郎)はいわゆる炭焼き職人である。 妻の初乃(池脇千鶴)と息子の明の三人暮らしだが、初乃の父(小野武彦)や小学校からの同級生・光彦(渋川清彦)とその父(石橋蓮司)らも同じ町に住んでいる。 ある日、同級生仲間である瑛介(長谷川博己)がふらりと町に帰ってくる。 40歳を目前にした同級生たちの再会は、自分の人生を振り返り、見直す役割を果たして・・・という話。
 冒頭、山道を歩く二人の男の姿に、つい沖田修一監督『キツツキと雨』を連想する。 でも沖田監督とのテイストの違いが、省略手法などもよく使われるためより明確に。 どちらがいい悪いではなく、好みの問題ですが、あたしは沖田監督テイストのほうが好きかな・・・阪本監督テイストは皮肉っぽいというか・・・ユーモアがドライすぎる感じがした。

  半世界3.jpg 同級生、揃う。
 さすが男性、という感じの微妙な会話がリアルだった。 思い出話に終始するわけでもなく、瑛介が帰ってきた理由を追求するわけでもなく(自衛官だったが海外派遣の後、辞めて戻ってきたということはわかるのでなんとなく想像はつきますが)、だらだらと酔っぱらう感じ。 かなり久し振りに会ってもつい数日前にも会ってたみたいな空気感はまさに昔からの付き合いそのものですごくよいが、女性とはやっぱり違うな、と思わせる面白さあり(男性なら「ふむふむ」と頷くのであろうか)。
 だから、同じく同級生らしいけど、「男同士、楽しくやって」と混ざってこない初乃さんの賢明さが輝く。

  半世界1.jpg 稲垣吾郎、普通のおじさんである・・・。
 <ごく普通の、当たり前の日常>を中心に据えたこの映画に“スター”は不要である。 だからそこにいるのは紘であって稲垣吾郎ではない、というのが徹底されている。 「そのひげはどうよ」と最初思ったけれど、山男的にはひげがあるほうがいいのかな?
 むしろ突然帰ってきた瑛介のほうが“異世界”を背負っており、影があってむしろかっこいい。 長谷川博己、以前は特に可もなく不可もなくだったのですが『MOZU』のイカレ気味殺し屋で「おや?」と思い、『シンゴジラ』で「いいかも」となり、『まんぷく』で「いいじゃないか!」となってしまったあたし、この映画は『まんぷく』のずっと前に撮られているので萬平さんっぽさは欠片もないんだけど、不用意にぞんざいで剣呑な感じ、よかったです。
 タイトルの『半世界』は、瑛介と紘の会話、
 「おまえは世間を知っている。 でも世界は知らない」
 「ここも世界だ」
 から来ていると思われる。

  半世界2.jpg 瑛介、確実にPTSDなんですが。
 誰も指摘しないし(紘は「疲れてるんだよ」と言うが)、それなりの対策が取られているのかはまったくわからない。 治療を経ても自分で乗り越えなければならないということなのか・・・。 だから学校でいじめられている明の手助けをすることが瑛介のリハビリの一環なのかも。 明くん、佐藤浩市の息子役で殺人者だった子だなぁ、と思い当たったけど、物騒な目つきは役作りではなくて地だったのか、と気づく(今回は殺人犯ではない)。
 人生はままならない、でも自分のできる範囲で変えることはできる。 たとえそれが昔思っていたものとは違っても。
 という、ある種<人生の負け組>と勝手に区分されてしまった者たち(人数的にも人口のボリュームゾーンの一部)が、世間の評価ではなく自分の判断で生きようとする話・・・なので、30代後半〜40代ぐらいの人狙いの映画で、ここ最近の日本映画としても珍しい存在では。 明らかにミニシアター系映画館でかかるタイプで、時期外れとはいえ一応シネコンでやる、ということに驚きを禁じ得ない。
 それが稲垣吾郎と長谷川博己のおかげだとしたら、いろいろとありがたいですね。

posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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