2019年03月21日

ビール・ストリートの恋人たち/IF BEALE STREET COULD TALK

 ジェームズ・ボールドウィンについては、『私はあなたのニグロではない』で知った。 作家としてアメリカの黒人文化について語った人で、その後に与える影響も大きかったということで。 『ムーンライト』のあと、バリー・ジェンキンス監督が選んだのがジェームズ・ボールドウィンの原作と知り、その影響は今も続いていてやはりすごい人なんだな、とあらためて感じて。
 とはいえ予告編から受けたイメージは、結構ヘヴィな感じで・・・こりゃ覚悟して行かないといけませんね、と心構えが必要だったのでかなり出遅れ、神戸では上映終了ギリギリに滑り込むことになった。

  ビールストリートの恋人たちP.jpg 愛があなたをここに連れてきた

 ニューヨーク、ハーレム、1970年代。 ティッシュ(キキ・レイン)は幼馴染のファニー(ステファン・ジェームズ)に愛されていること、自分も愛していることに気づいた。 その時、ふたりは19歳と22歳。 こんなにも毎日が美しいことを驚き、実感していたが・・・ある日、ファニーが突然逮捕されてしまう。 途方に暮れながらもファニーを信じる両家族、特にティッシュの家族は無実の証拠を手に入れようと奔走する。 ティッシュは妊娠しており、生まれてくる子供のために。
 といってもこの映画は時間軸通りに進まない。 主にティッシュの視点として、悩み苦しむ現在と、美しい記憶と現在につながる不穏な空気が回想として展開していく。

  ビールストリートの恋人たち1.jpg 『ムーンライト』のときは青みを帯びた光が常にあったけれど、今回は黄色の幅のあるバリエーション。 肌の色がすごく美しく見える。
 ティッシュとファニーのふたりのシーンはとても正統派のラブストーリーで、若さ故の純粋さやあやうさにドキドキするが、“身に覚えのない罪で逮捕される”というファニーの置かれた状況が徐々に見えてくるにつれ、その美しさが痛々しくも哀しくて・・・棒で殴られる・足蹴にされるといったわかりやすくてひどい暴力シーンなどはないのだが、黒人だというだけで疑われる、警官が白人ならいくらでも証言を捻じ曲げられる可能性があるという恐怖におののく。 はっきりとした形をとっていないけれど、ひたひたと迫る、すぐそばにある“差別”。 70年代でもこうなのか・・・。 なるほど、スパイク・リーが『グリーンブック』に起こる理由がわかる気がした。

  ビールストリートの恋人たち3.jpg ティッシュを支える母と姉。
 父親もだが、ティッシュの一家のまとまりというか、強さがとても印象的。 ファニーの家族は母親が狂信的で、「まだ正式に結婚していないのに妊娠するなんて許しがたい」というタイプ。 こういうとき、何故責められるのはティッシュのような女性の側なのだろうか。 女性一人では妊娠できないんだから、責任は男性側にもあるじゃないか。 自分の息子は別なのだとしたらあまりに身勝手すぎる。 ファニーの父親は母親の意見に反対で、ティッシュの父親と親友だから完全に反目していないのが救い。

  ビールストリートの恋人たち2.jpg お母さん(レジーナ・キング)はファニーの無実の証言を引き出すためプエルトリコに向かっちゃう。
 このおかあさんがすごくて・・・パワフルで、強くて、でも自分の中にある弱さを自覚したうえでの強さ。 人生いろいろあることをわかりつつ、それでも希望を持ち続けようという姿勢で生き抜くことを体現してる。 まさに“肝っ玉母さん”であった。 かっこいい! ただ、弁護士を通さずにそこまでやっちゃっていいのか、という気もした。

  ビールストリートの恋人たち4.jpg ファニーを引き込んだ警官との過去の因縁。
 ファニーに科せられた無実の罪問題が非常に気になるところであるが、二人のラブストーリーに比べて描写が少ない。 勿論弁護士がつき、懸命に調査をしてくれているのであるが・・・彼が若いペーペーで白人である、という理由でティッシュたちは彼を信用していない。 この間でもっと情報を共有していれば何かが変わるかもしれないのに・・・どうせ白人は黒人のために何かしてくれはしない、という決めつけもそこにはある。 ティッシュとファニーの物件探しに協力してくれたユダヤ人、ファニーの友人のレストランで働くイタリア系の人、行きつけの雑貨店の店主など、黒人差別をしない人たちもいるのだが。
 どんな状況にあろうとも、どんな苦難が待ち受けていようとも、それに立ち向かう愛は美しい、という話なのだけど・・・美しさを引き立たせるためにそこまでしなくとも、という気もするし、それでもやはりそのひたむきさが必要だと思う部分もある。
 語られないことが多すぎる! でもそこが社会派なところ・・・。

posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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