2019年03月20日

天国でまた会おう/AU REVOIR LA-HAUT

 映画になる、とは聞いていたけど・・・もう日本公開になるくらいになっちゃったのね!
 時間の確実な経過を、最近はこういうことでよく知らされる感じがする。 ピエール・ルメートルの原作が日本語に翻訳される段階で本国発表から時差が存在するわけで、待たされる期間は本国よりずっと短いんだろうけど。

  天国でまた会おうP.jpg 共に生きた時間に、一生分の輝きがあった。

 1918年、フランス対ドイツの西部戦線は休戦目前ながら、戦いをやめるのが不本意なプラデル中尉(ロラン・ラフィット)のため、その一団は戦闘を強いられた。 爆発の余波によりあやうく生き埋めとなったアルベール(アルベール・デュポンテル)を救ったのは戦友のエドゥアール(ナウエル・ペレーズ・ビスカヤート)だったが、その後彼は顔の下半分に重傷を負う。 二人はパリに戻るが、アルベールは仕事と恋人を失い、以前から父親との不和に苦しんでいたエドゥアールは自分は死んだものとして身を隠す。 顎を失って普通に喋ることができなくなったエドゥアールだが、彼と心が通じて通訳をかってでた少女ルイーズ(エロイーズ・バルスティール)を得る。 だがルイーズもまた、孤児を育てることで国から出る補助金目当ての大人に利用されている。
 エドゥアールはいっそのこと、国をペテンにかけてやろうと大掛かりな<戦没者をたたえる像>にまつわる詐欺を実行しようとする。 それは大丈夫なのか?、と思いつつ、命の恩人であるエドゥアールに逆らえないアルベール。
 またアルベールは、エドゥアールの姉マドレーヌ(エミリー・ドゥケンヌ)から「戦場での弟の話を聞かせてほしい」と家に招かれ・・・という話。

  天国でまた会おう4.jpg エドゥアール役のナウエル・ペレーズ・ビスカヤートは目力が強い。 『BPM』の人だよ!、と思ったけど歴史もののせいかちょっと年上に見える。
 どことなく寓話的・喜劇的な絵作りだと感じて油断してたら、冒頭の西部戦線はかなりダークでリアルなことに驚き。 おまけにアルベール役のアルベール・デュポンテルが監督で、ピエール・ルメートル本人とともに脚本を担当という・・・意外とこじんまりとした制作だったのか? でもプラデル中将の人は『ミモザの島に消えた母』のお兄さん役の人だし、エドゥアールの父親役は『パリよ、永遠に』でドイツ軍人役だったニエル・アレストリュプである。 意外に豪華キャストじゃない?

  天国でまた会おう1.jpg 顔の下半分に大怪我を負ったエドゥアールは持って生まれた美的センスを武器に複数の様々な仮面を作り、それで自分の気持ちを表現。 台詞も少ないので彼の目力の強さが雄弁に感情を表現する。
 この、仮面の使われ方が素晴らしい!
 野戦病院に運び込まれ、その後転院したけど・・・苦しがるエドゥアールに「後遺症が出るから(依存症になるってこと?)」と最小限しかモルヒネを投与しない看護師(?)に業を煮やし、盗み出してエドゥアールに注射するアルベールの姿に、「いや、それヤバいって・・・」と焦ってしまうあたし。 その後、明確な描写はあまりないが、確実に中毒になっていたであろうエドゥアールの姿は痛々しかった。 戦没者は称えられても帰還兵には冷たい世の中への鬱屈は、カネのことしか頭にない父親への怒りとも重なっていく、という過程はちょっと強引に感じられるんだけど(アルベールも実際戸惑っていたし)、モルヒネ中毒と戦場のPTSDのせいだと考えれば納得。
 結構重たくて悲しい話なのだけれど・・・仮面や被り物、ポップなシーン展開などでどことなくコメディっぽい雰囲気になっちゃっているところが素敵だ。 大筋は同じ話なのに、原作とは受けるムードが全然違う・・・。 

  天国でまた会おう3.jpg 大富豪のエドゥアールの実家に招かれ、大混乱のアルベール。
 このことはエドゥアールに内緒にしないといけないし、でもマドレーヌは美人だし、期待にこたえたい、という素朴な感じ、すごくいい。 女中(?)のポリーヌ(メラニー・ティエリー)に一目惚れしちゃうところもお茶目だ。 <いい人>フォーマットから離れないアルベールには、幸せになってほしいよね・・・と観る者は大体思ってしまうんじゃないか。
 王道の人間讃歌に、グラン・ギニョール的な風刺も絡め、犯罪を描きながらも意外とそれがそこまで深刻でもなく、思いのほかポップな世界観。 フランス映画らしくないような、とてもフランス映画らしいような、なんだか不思議な気持ちになる。

  天国でまた会おう5.jpg 絵にかいたような悪役、プラデル中尉。
 わかりやすい悪役がいる、というのがちょっとフランス映画らしくないところなのかな・・・。
 だが終盤に向けて一気に動き出す物語には美しさすら感じられ、いろいろと涙を禁じえなくなってしまった。 ここに着地するためのこれまで、という広げた風呂敷のたたまれ方がしっかりしているので、ラストシーンに「納得」なのである。
 なんて美しい寓話。 こういうのもまた、映画的。

posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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