2019年03月15日

グリーンブック/GREEN BOOK

 ヴィゴ・モーテンセンが好きである。 彼が出ているというだけで、とりあえず観たい。 もともと役を選ぶ傾向にある彼だが、<『ロード・オブ・ザ・リング』三部作>以降のその傾向がより顕著になったらしく、そんな彼が出演を決めたのだからよいのであろう! おまけに共演はマハーシャラ・アリだ!
 というのが、この映画の存在を最初に知ったときの感想。 まさかお下品映画をガンガン撮っているピーター・ファレリーが監督しているとはその時は知らなかった・・・正直知りたくなかった。

  グリーンブックP.jpg 行こうぜ、相棒。あんたにしかできないことがある。

 1962年、ニューヨーク。 有名なナイトクラブで用心棒として働くトニー・リップ(ヴィゴ・モーテンセン)は、武骨で無学で喧嘩っ早いがきっちり仕事をこなすことで知られている。 クラブが改装のため休業するので、トニーもその間無職となり、妻ドロレス(リンダ・カーデリーニ)や子供たちを養うためにカネが必要だ。 そんなとき、知り合いから運転手を探していると聞き面接に行けば、相手はカーネギーホールの上のマンションに住む黒人ピアニストのドクター・ドン・シャーリー(マハーシャラ・アリ)。 運転手だけならまだしも日常のお世話なんぞやってられない、と断るものの、8週間のツアー同行料金は魅力的。 そしてドクター・シャーリーとしても初めての南部への演奏ツアーで用心棒として有能な人物が欲しかった。 二人の利害は一致し、トニーは運転手兼ツアーマネジャーとして南部を巡る旅に出かけることになる。 黒人が快適に南部を旅行できる場所をリストにしたガイド書“グリーンブック”を持って・・・という話。
 予想通り、でこぼこコンビのロードムービーであった。 雰囲気としてはフランス映画『最強のふたり』にちょっと似ているか。

  グリーンブック2.jpg ドロレスは大変賢く偏見も少ない。
 一方トニーは、家で作業した配管工にリンダが冷たい飲み物をふるまったら、そのグラスを洗わずにごみ箱に捨てるような男である。 自分だって白人社会の中ではイタリア系であることを揶揄されていたりするのに。 だから最初はトニーはすごくいけ好かないヤツで、ヴィゴのカッコよさがかけらもないことにがっかりしつつその役作りに驚嘆する。 ドロレスもトニーの差別的な発想に眉を顰めつつも、言葉で注意してもけんかになるだけだし・・・という懸念が見えつつも、そこをのぞけばまぁほどほどいい夫であるから、という妥協?のようなものを感じますが、8週間家を離れる仕事でも、ドクター・シャーリーとのことで何かの期待をかけていたのかも。 だとしたらドロレス、大変な策士ですよ。 良妻賢母とはこういうことか、みたいな。

  グリーンブック3.jpg マネジャーとして、顧客にも必要な時は言う。
 まだ北部エリアにいるうちは順調なのだが、南部に入り始めてからちょっとずつおかしくなる。 ドクター・シャーリーの弾くピアノはスタインウェイと決まっているが、ボロボロのピアノが置かれていたりして・・・勿論、トニーの交渉術(時には脅しや拳も含まれる)で正しいピアノが準備されるのだが。
 面白かったのは、ドクター・シャーリーが「南部の上流階級の人たちに、私たちトリオだけでなく君もツアーマネジャーとして紹介される。 トニー・バレロンガという本名は発音しづらいので、トニー・バレというのは?」と提案されたトニー、「だったらトニー・リップで(これはこれでこだわりのある愛称らしい)」と答えるが、「トニー・リップでは・・・ちょっとふさわしくないかと」とやんわり却下され、「じゃあ、トニー・バレロンガだ。 あんたの言う上流のやつらなら、それくらい発音できるだろ!」というやり取り。 バレロンガ、日本人には難なく発音できそうですが、当時のアメリカ南部の上流階級とはイギリスからの移民の子孫なのかな? 英語発音の名前以外になじみがないということなのかしら?
 トニーの減らず口はまだまだ続く。 ピアニストとしての腕を買われ、ドン・シャーリーは若いうちにソ連に留学しクラシック漬けの日々を送ってきており、今演奏しているのもクラシック。 車移動中にラジオから流れるリトル・リチャードなどのブラックミュージックにノリノリなトニーだが(音楽は差別しないんですね、そういえばドクター・シャーリーの演奏を初めて見て、「こいつ、天才だ!」と思ってからは彼に対して差別心はなくなったよう)、ドンにとっては「アーティストの名前は聞いたことはあるが音楽を聴くのは初めて」。 フライドチキンも食べたことがない、と言えば「黒人なのに?」と言いたい放題。 でもそれは、「自分のルーツがよくわからない」というドンの弱みでもあったのだ。

  グリーンブック1.jpg ドロレスに書く手紙の内容があまりにひどいので、添削してあげるドン。
 ドンはトニーに洗練を教え、トニーはドンにいわゆる黒人文化や家族の大切さを伝える。 じんわり生まれて育まれる友情という、なんてハートウォーミングなストーリー!
 特にドンがトニーにどうしても言えなかったことに対して見せるトニーの理解! 漢気あふれる! 人種差別するのにそれはありなんだ!、と観ているこっちのトニーを見直す度MAX! まぁ、そこにいくまでにチャーミングなところをいくつも見せてもらっているので、だんだんトニーのことちょっと好きになってきちゃってるんだけど・・・多分そのあたりはドンも同じなんだろうなぁ、と。 そこがトニー役にヴィゴ・モーテンセンを持ってきた意味ですよね!
 二人のコンビネーションが非常に心地よくなってくるのだが、60年代・南部のわりにこっちの想像しているよりひどいことが起こらないので、「えっ、いい話過ぎない?」とちょっとドキドキする。 あの時代、こんなものではすまなかったのでは・・・「実際、こんなもんじゃない」ことを知っているのだろうスパイク・リーが怒ったのはそういうところなんだろう。 そこらへんのリアルは『ブラック・クランズマン』で確認させてもらいますわ。
 というわけで人種差別を題材にしながら驚くほどにあっさり味、むしろ正反対の男同士の友情のほうに重きを置かれた感があるので物足りないといえば物足りなくもあるのだが・・・そこをヴィゴ・モーテンセンとマハーシャラ・アリが埋めるという贅沢さで十分です。
 だからといってね・・・ヴィゴにしょうもないおやじギャグとか下ネタとか言わせてるのが残念・・・所詮ピーター・ファレリー監督、真面目ができない(照れ隠しにダジャレ言いたい)のが丸見えです・・・。

posted by かしこん at 05:05| Comment(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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