2019年03月05日

女王陛下のお気に入り/THE FAVOURITE

 祝・オリヴィア・コールマン、アカデミー主演女優賞受賞!
 しかし、イギリス王室を舞台・題材にしていようとも、監督・脚本はあのヨルゴス・ランティモスである。 観るものを不快にさせる感覚が絶対あると思うのよねぇ。 予告編からそういう空気、出てるし。 なのにこれまでの作品と比べてはるかに拡大公開されてる・・・アカデミー賞効果(と、前哨戦の効果)なのだろうけど・・・美人女優三人を見に来た!、という軽い気持ちの人にはかなりのパンチになるのでは。 そしてあたしも、ある程度予想はしているがそれ以上くらうんじゃないか、という危惧・・・。

  女王陛下のお気に入りP.jpg ごめんあそばせ、宮廷では良心は不用品よ――

 18世紀初頭のイングランド。 フランスと戦争中だがアン女王(オリヴィア・コールマン)は幼馴染のモールバラ公爵夫人サラ(レイチェル・ワイズ)に政治のごたごたを処理してもらい、17匹のウサギと遊んで好きなものを好きなだけ食べるような生活をしている。 サラは女王の“お気に入り”の立場を利用してアン女王を自分の意に染むように行動させていた。 そんな折、上流階級から没落したサラの従妹・アビゲイル(エマ・ストーン)が、サラの召使いとして雇ってほしいと現れる。 痛風の痛みに苦しむ女王のために薬草を摘んできたアビゲイルは女王の目に留まり、“お気に入り”の座を争う女の戦いが始まる・・・という話。
 いやー、ほんとに、観ていてどんどんイヤな気持ちになる話!

  女王陛下のお気に入り1.jpg 映像はゴージャスで、音楽もとてもいい。
 時代だから、太陽光か蝋燭の明かりしかない感じとか、時折挟まる凹レンズで観るような(『アルノルフィーニ夫妻の肖像』みたいな球状に広がる)画面、効果的な(時に露悪的な)スローモーション、チェンバロの響きが美しくてドキドキする。 女性の服装は基本的に白と黒で(召使いだとそれに深い青が加わる)、赤を身につけるのは男性だけというのも面白い。 このへんは時代考証無視でゴージャスさ優先なのかなぁ。 でも坂田靖子のマンガで「つけぼくろがはやった時代、エスカレートしてとんでもないことに」っていうのがあったのを思い出す男性たちの過剰な化粧っぷりがばかばかしい。
 それ故に、人間の醜悪さがすごく目立つのよ・・・。

  女王陛下のお気に入り4.jpg 宮殿内部の様子も見てて楽しい。
 底辺から這い上がろうとするアビゲイルは観客にとって感情移入しやすい位置にあるキャラだが、かなりぶっ飛んでいるのであぜんとするほかはなく。 サラも女王も、共感はできないのだが人として理解できる部分は持っていて・・・「あぁ、ここまで来ちゃう前になんとかならなかったのか」というどうしようもない後悔に襲われるのだが、それもまたどうしようもなくて。 サラもアビゲイルもやたら美しいのがやりきれない。 でも、女性は自分で自分の身を守ることをわかっていないとあっさりひどい目に遭う時代なんだな、ということはしみじみわかり、彼女らの計算高さを責められないのだ。

  女王陛下のお気に入り2.jpg アン女王の女王としての成長もみられる!、のだが・・・。
 それが遅いのが悲しい・・・気がつけばアン女王の<頂点にいる者の孤独>にいちばん同情してしまった気がする。 それが主演・オリヴィア・コールマンの力なのかも!
 しかし陸路の移動に馬車しかない時代に、フランスと戦争しているんだもんなぁ、なんともまた愚かしい。 <先を見る>ことができない(見ているつもりでもほんのわずかな先の時間だけの)人たちばかりという痛々しさですよ。
 宮殿の庭の感じに、ピーター・グリーナウェイを思い出した(『英国式庭園殺人事件』とか)。 あれも人を不快にさせるというか、どうにもならない気持ちにさせられるが・・・この映画もまた種類はちょっと違うが、“人を不快にさせる”空気に満ち満ちているのは確か。 『ロブスター』、『聖なる鹿殺し』と比べれば手法はぐんと洗練されてきてはいるけれど。
 モールバラ公爵が、化粧とカツラをとったら『SHERLOCK』のマイクロフトの人だったのにはつい笑ってしまった(フルメイク:正装のときには全然気づかなかったのでした)。 キャストがイギリス勢中心だったのも楽しかった、映画の後味はよくないけど。

posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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