2019年02月21日

ともしび/HANNAH

 シャーロット・ランプリングですよ!
 『まぼろし』・『さざなみ』と観てきてるから、<ひらがな4文字シリーズ>(そう呼べるのは日本だけだけど)おさえなきゃ! 一応、<ある結婚の風景>ということで諸外国でも共通認識はされているようです。

  ともしびP.jpg わたしはあの時、いったい何を失ったのだろう――。
 人生の終盤、アンナに何が起きたのか? 犯してしまった罪は、二度と許されないのか? そもそも彼女は自分の人生を生きていたのか? そして決して明らかにしてはならぬ“家族の秘密”とは――。

 ベルギーのある小さな街で、アンナ(シャーロット・ランプリング)と夫(アンドレ・ウィルム)は毎日がほとんど変わりないような静かだが穏やかで、つつましい暮らしをしていた。 が、ある日突然夫は収監された。 一人になってしまったアンナ。 しかしアンナにはアンナの生活があり、繰り返しの日々がまた始まるのだが・・・という話。
 すごい、ひたすらシャーロット・ランプリングだけを観せ、ひたすらシャーロット・ランプリングだけを観る映画。 彼女でなければこの映画は成立しなかったのでは?、というくらい。 逆に、彼女に負わせすぎなくらい大筋としてのストーリーがほぼなく、「こういうことかな?」と観客にうっすら感じさせるだけだという。

  ともしび3.jpg ファーストシーンからなにかと思えば。
 アンナが出ている演劇のワークショップらしい。 最初はなにかのカウンセリング集会、例えばAAの回(アルコール依存症者たちの集い)のようなものかと思ったけど、そのシーンが周回的に現れることで理解が深まっていく。
 全編そんな感じで、繰り返されるアンナの日々の生活をまるで盗み見るかのようにして、彼女のことがわかっていく。
 わかりやすくひとりごととかを言わないので、ただ彼女のわずかな表情の動きやちょっとした反応などにこちらはひたすら想像を膨らませるしかなく。

  ともしび2.jpg 夫も何故収監されたのか。
 その説明も全くない。 ただ、被害者(?)の母親からの非難や、アンナの息子の家族から絶縁を言い渡されているらしい、などがわかってくるにつれ、夫のしたことについてもうっすら想像がつくのではあるが。
 夫の罪について、アンナは信じていないようであり、信じたくないようでもある。 個人主義の西洋的価値観ならではとも思えるのだが(日本ならばいい悪いは別として、止められなかった家族の罪って一般世論的には問われがち)、これ、息子が小さい頃もしかして・・・と考えると母親の責任・妻の責任って言われても仕方ないのでは。 アンナもそのことに気づいているけれど、気づかぬ振りをしているのでは。
 うわっ、なんだろう、この寒々しいほどの孤独は!

  ともしび4.jpg しかし孤独とは。
 孤独とはなんであろう。 たとえ一人でいても本人がそう思わなければ孤独ではないのでは。 でも、個人的なつながりや社会的な接点が本人の意図とは違うところで失われていく、と実感したとき、孤独が覆いかぶさってくるのかも。
 そういうのがアンナの飾り気のない日常からにじんでくるので・・・普通に着替えるし市民プールみたいなところにも行ったりするんだけど・・・こんなにスタイルのよい人でも、皮膚がたるんだりシミとかあるんですね!、ということに心の中でおののく(特に『愛の嵐』とかで若く美しいシャーロット・ランプリングを観たことがあるから余計に)。 いわゆる<老醜を晒す>覚悟、でもそれはあくまで淡々とした流れですから特に決心が必要ではなかったです的なナチュラル感に、女優魂をひしひしと。

  ともしび1.jpg アンナがいつ決めたのかはわからない。
 あるものを家の中で見つけてしまい、夫の罪を認めるしかなくなったときか、息子に「もう来ないでくれ」と言われたときか、市民プールの入館証がもう使えないと言われたときか。 多分、理由はひとつではなくてすべてが重なり合った複合的なものだろうけど、地下鉄のホームに向かってずっと階段を下りていくアンナをうしろから追うシークエンス、きっとアンナは地下鉄の線路にこのまま飛び込んでしまうのではないか!、というスリルがありまして・・・この緊張感もまたわかりやすくも劇的でも決してないんだけれど、「もしかしたら」と思わせるリアルはあって。
 もし飛び込むのならアンナは過去の様々な罪に押しつぶされることから逃げた、のかもしれないけれど、もし飛び込まないのなら、過去のすべてを受け入れて、それでももう一度歩き出すという意思表明になるのだろう。
 アンナがどちらを選んだのかはぜひこの映画を見ていただいて・・・。
 生きているだけでそんなつもりのないことを背負い込んでいるものです、ということを教えてくれる映画。 これは、ある程度以上生きてないとわからない感覚かもしれないわ。 そしてあたしはそれがちょっとわかるほど長く生きてきてしまったわ。
 もうこれ、『ELLE』のイザベル・ユペールばりの、シャーロット・ランプリングありきの映画ですよ、アカデミー主演女優賞にノミネートされてないとおかしくない?(まぁヴェネチア国際映画祭で主演女優賞とってるようですが)。

posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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