2019年01月13日

セルジオ&セルゲイ 宇宙からハロー!/Sergio and Sergei

 ソ連崩壊に伴って、宇宙ステーション<ミール>に一人残されたアストロノーツが帰ってこられない、というのはその当時、かなり話題になったことである。 それをあらためて扱う、それもキューバからコメディタッチで、ということで「これは面白いんじゃないのか」とちょっと期待して観に行ってしまった。

  セルジオセルゲイP.jpg SOS! 地球に帰れない宇宙飛行士を救え!

 1991年、キューバ。 ソ連崩壊の余波を受け、同じく社会主義のキューバは経済危機に陥り、人々の暮らしは貧しくなっていた。
 そんなキューバでマルクス哲学を教えている大学教授のセルジオ(トマス・カオ)には年老いた母と幼い娘(ダイナ・ポサダ)がいるが、大学の給料だけではやっていけないし、ソ連が崩壊してしまったのでマルクス哲学を学ぶ意味が?、というそもそも論に追い詰められ、大学にもいづらい雰囲気に。
 そんなある日、アマチュア無線を扱うセルジオはまったく知らない周波数で誰かを受信する。 何度目かで交信が成功すれば、なんと相手は宇宙ステーション<ミール>にいるソ連の宇宙飛行士セルゲイ(ヘクター・ノア)だった。 お互いの名前も似ていて、セルジオはソ連留学をしたことがあるのでロシア語を喋れるし、セルゲイは少しだがスペイン語を話せることで二人は一気に親しくなる。 ミールの旋回がキューバ上空を通る短い時間しか会話ができないが、親友になるのに時間はそんなに必要ない。
 ところが、ロシア連邦となったセルゲイの祖国は、国内問題優先のためセルゲイの帰還のために人員と予算を割けない、と言い出す(正確には帰還の無期限延期)。 親友をずっと宇宙空間に一人で置き去りにするわけにはいかない、とセルジオはもう一人の無線仲間でアメリカ人のピーター(ロン・パールマン)に事情を説明するが・・・という話。

  セルジオセルゲイ3.jpg とにかくキューバ人、明るい!
 設定は90年代なのだが、全体的にレトロな雰囲気全開のため(実際、90年代のキューバはこんな感じだったのだろうが)、うっかりすると70年代かと思ってしまう。 そのせいもあってどこか牧歌的ではあるものの、<社会主義的支配>もしっかり描かれており(旧ソ連に比べたら全然緩いのだろうが、あるのとないのでは大違いである)、体制の違う国に対してのこちらの戸惑いも出てくる。
 映画という共通言語を介するからベースの違いが浮かび上がるんだなぁ。
 セルジオはただ陽気なだけでなくインテリ、というところが奥深くて繊細なキャラクターになっていて魅力的。 ただ、語りが“成長した娘が過去を振り返っている”という設定なのが微妙にわかりにくい・・・このナレーション、必要かな?、とちょっと思ってしまった。

  セルジオセルゲイ1.jpg セルゲイの名字は<アシモフ>だ!
 実際の宇宙飛行士はセルゲイ・クリカレフだが、あくまでモデルということで別の名前に。 でもあえてアシモフにするところはニヤニヤしてしまうではないか。
 ソビエト連邦国民としてはほぼ彼一人しか出てこないので(ロシア側とカメラ通話しているが、ちょっとしか出ていない)、ソ連人っぽさはよくわからない。 宇宙飛行士だし、一般的なソ連人に比べれば彼はかなりリベラルなのでは、という気もした。 でも、体制を前には個人の自由や権利は小さなものである、と感じている(口に出してもそれは仕方のないこととわかっている)のはなんかせつなかった。 自由主義国家であっても国益の前には個人が犠牲になるのは暗黙の了解なのだが。

  セルジオセルゲイ2.jpg おお、ロン・パールマン!
 ピーターもいろいろあるキャラなのだが・・・NASAの月面着陸は実現していなくて地球上で撮影されたものである、という陰謀論のことを知らなかったらこのへんわかりにくくない? 映画では説明されてないけど・・・とちょっと心配になる。 それとも説明不要なほど有名なことなのか?(あたしが知ったのはここ10年くらいなんで・・・)
 ある場面で“美しく青きドナウ”が流れたりと、過去のSF映画へのオマージュも随所に感じたが、SFなのかファンタジーなのかシュールなコメディなのか、現実感のなさをどう受け取っていいのかわからないところがあり・・・あぁ、あたしが固定概念に縛られているせいなのかなと悩んでしまう。
 ラストシーンのナレーションの一言に、「あぁ、これを言いたいがための成長した娘設定だったのか!」と感じたけど・・・うまく機能していないような。 面白いのだがちょっと微妙なところが・・・でもそれもまた外国映画の面白さかなぁ。

posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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