2018年12月29日

メアリーの総て/MARY SHELLEY

 えっ、メアリーってメアリー・シェリーのこと?!、とチラシ見て盛り上がる。 しかもエル・ファニングで、だなんて楽しみ〜。
 子供の頃、古本屋に並んでいた新潮文庫版の『フランケンシュタイン』の著者は<シェリー夫人>だったんだよなー、「え、ファーストネームわかってないのか」と思ったらそういうわけでもなく・・・今ではちゃんと<メアリー・シェリー>表記になっているから、なんだかんだいって世の中は変わってきているのですね。 解説にはバイロン卿の別荘での恐怖譚コンテストのことが書かれていたのをざっくり覚えています。 昔、『ゴシック』という映画もありましたよね。

  メアリーの総てP.jpg 「不幸」に抱かれ、「死」に口づけられ、世紀の傑作を産んだ。
   19世紀、イギリス。可憐で聡明なメアリーが世にも恐ろしい怪物を誕生させるまでの哀しくも美しい人生とは――?

 自分を産んだために母親が死んだことを罪悪感とともに背負っているメアリー(エル・ファニング)は怪奇小説に惹かれ、自分でも書きたいと思っている16歳。 父親と義母、母の違う妹クレア(ベル・パウリー)とロンドンに暮らしていたが、義母と折り合いが悪く、スコットランドの親戚の家に身を寄せた。 そこで詩人のパーシー・シェリー(ダグラス・ブース)と出会ってお互い恋に落ちるが、シェリーには妻子がいて二人の恋は周囲にとがめられたために駆け落ちし・・・という話。
 オープニングクレジットにベン・ハーディの名前が。 おや、それは『ボヘミアン・ラプソディ』のロジャー役の人? 主要キャストではないようだがどこに出てくるのだろう?、とドキドキしながら見てしまった。

  メアリーの総て3.jpg パーシー・シェリーは世間知らずで自分勝手のボンボンだ。
 スコットランドで自由を知ってしまったからなのか、すでに著作を出版している若き天才詩人に目が眩んだのか、そういう人が自分を選んだことによろこびを感じてしまったのか、メアリーはあっさりシェリーに好感を持ってしまうのがなんだかな。 あぁ、『アリー/スター誕生』の後遺症か、<その恋愛に美しさがあるかどうか>を意識的に考えてしまっている!
 とにかく、エル・ファニングがとてもかわいい。 この時代の服が似合う! しかし「かわいい」と言ってしまってはいけないな・・・という成長ぶりも感じた。 『スーパーエイト』や『ベンジャミン・バトン』の頃を思うとすっかり大人になりましたね・・・。

  メアリーの総て2.jpg 妹のクレアは『ロイヤルナイト』でも妹役だった人。
 シェリーとの関係よりも、メアリーとクレアの関係のほうが興味深かった。 19世紀、女性には職業選択の自由なんかない時代ですよ、仲のよい義理の姉妹って・・・依存するよね。 でもずっと二人だけでいられるわけもなく・・・男性が現れることでクレアのメアリーへの気持ちが愛憎半ばしていく感じをもう少し掘り下げてもらってもよかった(才能がないほうは、自分のことよくわかっているし)。 この時代の若い女性のことが主題なのだろうと思うから。
 ボンボンのシェリーが無計画なお金の使い方をしていても、お金は大丈夫なの?と聞くことすらできない(思いつかない)のだから、誰と結婚するかで女性の人生が決まってしまう哀しさ・・・それでもメアリーは自分で選んだ相手だから、という覚悟があるけど。

  メアリーの総て1.jpg バイロン卿の別荘、右から二人目がベン・ハーディ。
 そして運命の<ディオダティ荘の怪談談義>。 スイス・レマン湖のほとりにある屋敷に滞在中、雨が降り続いて外出もできないため退屈をまぎらわせるために各々が怪談を書いて発表しよう、とした試み。 『フランケンシュタイン』の解説から感じた印象では、滞在中の2・3日で書き上げたのかと思ってたんだけど・・・この映画では自宅に戻ってからも書き続けられてようやく完成、ということに。
 言い出したのはバイロン卿(トム・スターリッジ)なのに彼は何も書かず、生まれたのは『フランケンシュタイン』とジョン・ポリドリの『吸血鬼』。 文学史に載ってる出来事だよ!
 そのジョン・ポリドリがベン・ハーディだったのである!
 若き医師ポリドリは憂いを含んだ表情に低い声、髪は短いし黒く、すぐにはロジャーだと気づかなかった。 顔がアップになって目のクリクリ具合でやっとわかる。 だって声、低くてロジャーと全然違うから・・・でもそれは演技力故ってことか。 オープニングで名前に気づかなかったらわからないままだったかもしれない。 気づいてよかった!

  メアリーの総て5.jpg 書くときは一人。
 「書きたい」という気持ちはあれど、書くことは自分の中にあるすべてを、自分でも覆い隠してしまいたいこともすべて出してこなければならず、かといってそのまま書いても怪奇小説にはならないから、感情を昇華させて別な形にしなければ。 メアリーがシェリーに出会ってからの数年で経験してしまったいくつもの悲劇は彼女の人生観を変えてしまうほどの出来事だったから・・・余計に<創作の苦しみ>は想像に難くない。
 でも、やっと書きあがっても若い女性の名前では出版してくれるところが見つからないという・・・ほんとにつらい時代だなぁ。 しかしこういう生きづらさが21世紀の現代にも形を変えつつもまだ続いているのも事実で。 どんなに頑張っても、男の手を借りなければ事態が進まない、でも手を借りられたらあっさり進んじゃう!、みたいな理不尽ね! 監督も女性ということで、女性の問題はしっかり描かれている。

  メアリーの総て4.jpg 『フランケンシュタイン もしくは現代のプロメテウス』
 メアリーは匿名を条件に出版契約を結ぶ。 とにかく出版されることを優先にした、というあたりにメアリーの多少世慣れた、理想を語ってばかりはいられない・清濁併せ呑まねば、という成長を見る。 出版社との交渉を全部一人でやり、続々断られ続けても別の出版社を探すバイタリティとエネルギー、パワーをメアリーは身につけた(この時、メアリーは18歳らしい)。 しなやかに強くなっていく過程で、映画もメアリーが率先して引っ張っていくように、エル・ファニングもまた主演女優として君臨していく。
 避妊の知識があるわけはなく、女性が子供を産んだとて男性側は結婚するとは限らず、養育費だけ払って終わりというのが当たり前の時代。 クレアもバイロン卿の子を妊娠するも、養育費コース。
 怪物の孤独や居場所のなさは、当時の女性たちがぶつかることになる感情そのものなのだな、と切なくなってしまう。 でもそれが今も読まれ続け、怪物は作品の枠を超えて存在するということが、『フランケンシュタイン』が人間の本質を描き出しているからなのね。
 でも女性は「生きる」と決めたら強くなるみたいで・・・逆にポリドリの<その後>が悲惨すぎて辛い。 今では『吸血鬼』はポリドリ名義になっているけれど、日本では絶版だよ・・・。
 19世紀は遠くて暗い。 その時代がいいというわけじゃないけれど、23世紀ぐらいから21世紀はじめを振り返ったらどう思われるのかしら・・・と考えてしまった。

posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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