2018年12月25日

ヘレディタリー 継承/HEREDITARY

 サンダンス映画祭で「ホラーの常識を覆した最高傑作」と言われたという話を耳にし・・・是非観てみたかった。
 ポスターや予告編の仕上がりもなかなかよさそうだったし。 まぁ、ホラーは特にあまり期待してはいけないんだけど(期待値でハードルが上がるから)、最近はホラージャンル内でもバリエーションが増えててうれしい。

  ヘレディタリーP.jpg 完璧な悪夢
   緻密に張り巡らされた恐怖の罠。“フィナーレ”まで瞬きさえ許されない。

 家長のエレンが亡くなったグラハム家は、すでにエレンの夫も息子も亡くなっている。 残ったのは娘のアニー(トニ・コレット)とその夫スティーヴ(ガブリエル・バーン)と息子ピーター(アレックス・ウォルフ)と娘チャーリー(ミリー・シャピロ)の4人だけ。 アニーは母親に複雑な感情を抱いていたため晩年はあまり交流がなく、エレンの葬儀には知らない人たちばかりが列席していた。 母親の遺品を整理しながら、過去のいさかいや感情のすれ違いを思い出し、それでも母を亡くした喪失感を覚えるアニー。 だが、そのあと一家には奇妙な出来事に続々と見舞われる・・・という話。 
 意外にも(?)、隅々に張り巡らしていた伏線を全部回収するミステリタッチの展開で、しかしきちんとホラーのマナー(?)は守られているという好みのタイプの作品でした。 キリスト教徒じゃないと本質的なところは理解できないんだろうけど・・・でも見ごたえあり!

  ヘレディタリー2.jpg 残った家族一同。
 ファーストカット、ドールハウス(ミニチュアの家の模型)へのクロースアップから、その部屋が実際の人が暮らす部屋になるところから「おーっ!」となる。 手法としては新しいものではないけど、その見せ方がキレイ。 だから本編の中でその場所が本物の家なのか模型なのかわからなくなる効果がすごく、自分の見ているものがなんなのかわからない恐怖を連れてくる。 もしかして、この世界を俯瞰で見ている者がいるのなら、その違いなど考慮の外ってことだよね、とか。
 また、出てくる人がみんな怖い顔なんですよね・・・(顔のつくりが怖いのではなく、表情が怖い)。

  ヘレディタリー3.jpg チャーリー、顔は特殊メイクをしていると思うが(目のまわりがくりぬかれたマスクをしているように見えるんだけど)・・・貞子的アイコンになりそうなポテンシャル。
 「登場人物、みんな壊れてます」感、ですよ。 そんな中、唯一まともそうなのがアニーの夫スティーヴなんだけど、「あなた、ガブリエル・バーンですよね?」とつい念押しをしたくなるほどフツーのおじさんぽくってびっくり。 『エンド・オブ・デイズ』のセクシーな魔王と同じ人か!、と絶句する佇まいでした(でも、やっぱりいちばんまともな人だった・・・)。
 チャーリーがピーナッツアレルギーだと言われれば次に来る悲劇は想像できますが、その想像をはるかに超えたことが起こるので、たいていのことには動じなくなっているあたしもさすがに一瞬目を閉じた・・・マジか、そこまでやるのか。
 またピーターの常に不機嫌なのか鬱々としているのか区別のつきにくい虚ろな空気感にもイラっと来る。 そこは「母親に承認されていない」ことからきていても、アニー自体母親との関係がうまくいっていない人なのであにはからんや。
 ファミリー・シークレット、という言葉をふと思い出す。 家族だけの秘密は、秘密なのかどうか自覚できていないことから始まっている(家の中の細かな出来事は目の前にあること故に、いちいち他人と比較したりはしないから当たり前だと思ってしまう)。 この物語もまた、ひとつの“家族の秘密”なのだ。

  ヘレディタリー4.jpg 燃やしているのは霊らしいですよ。
 なので、グラハム家に関わりを持たない人は安心していいわけですが・・・この映画、結構静か。 扉の閉まる音、床や階段のきしむ音などはっきり聞こえる。 だから後半、今のは映画の中から聞こえた音なのか、それとも映画館で誰かが身動きをして座席がたてた音なのか区別がつかない!、という虚構と現実が同化する瞬間が。 それが素晴らしい!

  ヘレディタリー1.jpg 顔怖い、最終形態。
 とにかくひたすらアニーの表情の動きがすさまじくて、トニ・コレットのすごさを思い知る。
 映画にはすべて描かれていないけれど、生まれたときからアニーに運命づけられていた悲劇がここで爆発した感じか・・・でも救いはないのだが。
 そう、ひたすらに救いがない。 それがホラーの本領発揮ポイントではあるものの、ここまできたらへとへとに疲れ切る。 子供は親を選べないし、その親には環境やら宿命やらもついてくるのだ。 げんなり。
 なのにエンドロールで若い子二人のくすくす笑い、「えーっ、どういうこと〜」というバカにしたようなひそひそ声が聞こえてきたのは残念だった。 お願い、そういうのは外に出てからにして。 大学生っぽかったから仕方ないなぁ、とは思うけど(自分もそうだったのかもしれないし)。 ホラーと笑いって境界がギリギリなところがあるから、現実にあやうさを感じたことのない若者には意味不明なものは全部笑えることなのかもなぁ、とガブリエル・バーンの名前を確認しつつ考えた。
 “HEREDITARY”は「遺伝性の、先祖代々」といった意味だが、『継承』とサブタイトルをつけたセンスは結構よい感じと思う。

posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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