2018年11月18日

ボヘミアン・ラプソディ/BOHEMIAN RHAPSODY

 いちばん最初の予告編を観たとき(もう半年くらい前かもしれない)、ドキュメンタリーなのかと思った。 顔がしっかり映っているカットが少なかったせいもあってほんとにバンドメンバーだと思ったから。 そしてあのリズムには、映画館の座席に座ったまま足で拍子をとりそうになってた。 あぁ、これは絶対観に行かねば!、と思ったのです。
 とはいえ、あたしはリアルタイムのクイーンのファンではなく、後追い世代なんですが・・・。
 でもしばらく前にブライアン・シンガーがスタジオと対立して監督をクビになったと聞いたんですけど・・・クレジットはブライアン・シンガーのままだなぁ(そして公開が近くなったらクビの話とか全然されなくなった。 やはりごたごたは避けたいのか)。 でも音楽総指揮にブライアン・メイとロジャー・テイラーの名前があるから大丈夫かなぁ、ということで。 でも、「ブライアン・シンガーがクイーンを、フレディ・マーキュリーを描く!」と聞いたときには「ついに来るべきものが来たか」って感じがしたんだけどな。 ブライアン・シンガーの納得のいっていない作品なのだったら残念だ。

  ボヘミアン・ラプソディP.jpg 伝説のバンド<クイーン>
   彼らの音楽を唯一超える<彼>の物語――。

 1985年、ロンドンのウェンブリースタジアムにて、空前のチャリティライヴ<ライヴ・エイド>のステージサイドで出番を待つクイーンがいる。
 それに遡ること15年前の1970年、フレディ(ラミ・マレック)は空港で荷物運びの仕事をしながら何物にもなれない自分を持て余していた。 両親には「きちんと定職につけ」と言われながら、漠然と音楽で生きる道を模索していたフレディは、スマイルというバンドを追いかけてあるライブハウスへ。 自分のつくった曲を売り込もうとするが、バンドはベーシスト兼ボーカルが脱退したので解散するという。 そこでボーカルとして自分を使わないかとその場で歌ってみせる。 驚いたブライアン(グウェイリム・リー)とロジャー(ベン・ハーディ)は彼をバンドに誘い、フレディがベースが弾けないと知って新たなベーシストのジョン・ディーコン(ジョー・マッゼロ)を加える。 こうして伝説のバンド、クイーンの歴史は始まった・・・という話。
 20世紀FOXのカンパニーマークを彩るファンファーレから、クイーンの音! 否応なく気持ちが盛り上がります!
 フレディ役のラミ・マレックの役作りに話題が集まっているけれど・・・他のメンバーもみんな似ている。 ブライアンなんか、出てきた瞬間からブライアン・メイだし! つい笑っちゃったよ!

  ボヘミアン・ラプソディ2.jpg ソウルメイトは一目でわかるものなのか。
 ブティック店員のメアリー(ルーシー・ボーイントン)とはライブハウスの楽屋への道で出会う。 フレディのファッションセンスはすでにグラム・ロックで、デビューしてからそうなったんじゃないことがよくわかる。 また、メアリーがフレディのそんな美意識を即座に理解したから、二人の関係は特別なものだったのだろう。 あの当時、そういう感じにちょっとでも眉をひそめたりためらいを持たなかった人は少なかっただろうから。 
 フレディの軌跡に重心は置かれていくけれど、この映画は同時にクイーンの物語でもある。 バンドの成長が、クイーンの楽曲を通じて間接的にも語られる。 「えっ、あの曲がこんな初期に作られたものなの!」とびっくりするけれど、多分実際とは違う。 ストーリーに合わせて楽曲を配置(バンドの歩みを楽曲に絡めて構成)してるようだ。 正確には伝記映画と言えないかもしれないけど、「事実をもとに」しても映画的演出というものはどうしても入るわけだし、事実とどこが違うかを言い争うなんて不毛で、クイーンの魂を感じればいいのだ、と思う。

  ボヘミアン・ラプソディ3.jpg これが<ウォール・オブ・サウンド>!
 誰かのアイディアに「それいいね! でももっとこうしたら」とみんなで試行錯誤して、「いつまでやるんだよ」とぼやきながらも全員がOKを出すまで妥協しない。 いいものができればそれまでの苦労はもう苦労じゃなくなる。 あたしの感じる理想的なバンドの姿がここにある!
 よく、「ビートルズはメンバーの個性が強すぎて、バンドとして4年も存在できたことが奇跡」ということをファンの方から聞いたりするのですが、そうなるとクイーンは全く対照的なバンドなんだな、と。 フレディ・マーキュリーは不世出の天才だけれども、フレディ一人ではああはなれなかった。 ブライアン、ロジャー、ジョンがいてお互いを高め合えたからこそ素晴らしい楽曲が生まれたわけで、誰かひとり欠けてもダメだった。
 “ボヘミアン・ラプソディ”の製作現場が見られたのは、すごいわくわくした! それが郊外の古い農場を改造したスタジオで合宿形式なのも微笑ましく、合間に芝生で静かに佇むショットが入っていたりするのがきいている。 このへんはブライアン・シンガーっぽいといえばぽいけど・・・。
 「ジミヘンとも付き合った俺だがこいつらはさっぱりだ」とクイーンに理解を示さないプロデューサーがマイク・マイヤーズで大笑い。 レーベルと契約するために立ち合い、その後もずっと付き合いつづけることになるジム・ビーチ(フレディに「マイアミ」とあだ名をつけられちゃうけど)役のトム・ホランダー、最高! 脇役にもすべて気を配ったキャスティング!

  ボヘミアン・ラプソディ4.jpg スターダムにのぼって、世界各地でヒットチャートをにぎわせるように。
 でも最初にクイーンが売れたのは日本なんだぞ・・・と言いたいところですが、欧米からしたらそんなことはどうでもいいことなわけで(最初の予告にあった日本でのライヴもカットされていた)。 フレディの自宅の玄関に金閣寺のお札が張られていたり、さりげないところにフレディの日本愛が込められていることに満足しようじゃないか。
 それにしても・・・こんなにもフレディが苦悩していたなんて知らなかった。 「スターとしての孤独」だけじゃない、生まれてからずっと抱えていたもの。 てっきり途中で割り切ったと思っていたんだけど、そうじゃなかったんだ。 それ故に酒や麻薬に溺れていく姿を直接描かずに小道具で示唆するあたりはすごくスマートな描き方。 バンド内の確執もお金やネームバリューの問題というよりも「なんで相談しないんだよ!」的な感じなので彼らがいとおしくてたまりません。 てっきりあたしはブライアン・メイがクイーンのリーダーだと思っていたんだけど・・・クイーンにリーダーはいなかったんだ、それもまたバンドとして理想的過ぎる。
 前半、ラミ・マレックの歯はやりすぎだしフレディにしては小柄だし胸板も腕の太さも足りないと感じたんだけど・・・髪を短くしてからはもうフレディにしか見えなくなってた。 ヒゲのせいで歯が見えにくくなったせいもあるけど、フレディにしては目が大きすぎるんだけど(でもそれで『Mr.ROBOT』の天才ハッカーくんだと気づいたけどね)、背負っているものや痛みなど、限りなくフレディに近づいたんじゃないかと感じられて。
 だから、ニューアルバムのことを聞かずにフレディの性的志向(当時はそういう言葉はないけど)にばかり質問をぶつけるマスコミの無神経さに腹が立ち、涙が止まらない。 自分自身でもはっきり答えを出せないようなことを、他人が勝手に聞く権利があるのか? あぁ、もっと時代があとなら、理解者も多くてこんなに苦しまなくてもすんだだろうに。 でもこの時代だからこそこのメンバーとバンドが組めたのだし・・・せつないよぉ。
 すみません、そのあたりからずっと泣いていました。

  ボヘミアン・ラプソディ1.jpg そして感涙の<ライヴ・エイド>のステージ。
 この再現度が半端なくて・・・これまでの流れのまとめにもなっているので否応なく涙がこみ上げる。 ほんとにこのライヴシーンは素晴らしい。
 ただ・・・映画の観客もこのステージを一緒に観ているような気持ちになるわけで、だからあまり会場の観客の映像はいらないと思うのですよ。 会場全体の映像とか、ステージから見える範囲とかならいいんだけど、わざわざ感激している客のアップはいらない。 彼らのステージを見れば、聴けば、その感動は映画の観客にも十分伝わってるし。 ライブシーンだからこうするもんだ、みたいな固定観念がある気がする・・・もしかしてそこがプロデューサーとブライアン・シンガーが決裂した理由ですか? まぁ、それだけではないだろうけど、せっかくいい映画なのに完成度が下がっているのはもったいない。
 そう、「映画として」考えると時系列がわかりにくいとか、バンドが売れていく過程がはっきり見えないとか、ありきたりな話に落とし込んでいるとかいろいろ不満なところはあるんですよ。 でもクイーンの楽曲のパワーに、メンバーの熱演にそれが覆い隠されている。 「映画と音楽は相性がいい」とはよくいわれる言葉だけれど、音楽を味方に(もしくは武器に)つけた映画はこんなにも強力なのか、ということを改めて実感。 今年は『グレイテスト・ショーマン』ほど心動かされる映画はないかもと思っていたけど、『ボヘミアン・ラプソディ』もすごいわ(でも、テーマは共通しているものがあるんだよなぁ)。
 しかもエンドロールが“Don't Stop Me Now”(本人たちのMV)、“The Show Must Go On”だなんて・・・全然涙が止まらないわ・・・。

 泣きはらした目で恥ずかしながらも物品販売のカウンターに行って「『ボヘミアン・ラプソディ』のパンフレットください」といえば、「すみません、売り切れてしまいまして・・・再入荷は未定です」と言われる。 えっ、入場前にはあること確認したのに! 先に買っておけばよかった! 残り少ないときは「残部僅少」って書いて!
 家に帰って、「クイーンのベスト盤、どこかにあるのに!」とガサガサ探すも、見つからず(本格的に捜索すれば見つかるのだが、そうすると朝になってしまう)。 なのでタワレコにサントラのオーダーを入れた。

posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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