2018年11月12日

華氏119/FAHRENHEIT 11/9

 『華氏911』のとき、「そのタイトルはいかがなものか」とブラッドベリに文句(?)を言われていたのが懐かしい・・・もうブラッドベリはいないから、このタイトルにすんなり決まったんだろうか。 テーマ・題材的にも、関連あるしね。
 ドキュメンタリー映画といいながら、かなりマイケル・ムーアの個人的な心情が入ってる、という批判は確かにそうだし、でもドキュメンタリー映画全てが教科書的なものなわけがなく、多かれ少なかれ送り手の気持ち・考えで作られているもの。 要は観客は情報を丸呑みすることなく、そこから自分で調べたり考えたりするところまでが<ドキュメンタリー映画>のワンセットなのかもしれない。
 賛否両論あるでしょうが・・・マイケル・ムーアの『ボウリング・フォー・コロンバイン』の大ヒットがなかったら、今のようにドキュメンタリー映画が普通に劇場公開されることもなかった(もしくはもっと遅れた)と思うので・・・その点であたしはマイケル・ムーアに感謝してます。 彼のナレーションのテンポも、なんか好きだし。

  華氏119 P.jpg トランプのからくり、全部見せます。
  「この映画が公開されれば、トランプ王国は必ず崩壊する」――マイケル・ムーア

 2016年11月9日、アメリカ合衆国は大きな悲しみに包まれた。 多くの国民が「アメリカ初の女性大統領誕生」を信じて疑わなかった日に、大統領として選出されたのは共和党候補のドナルド・トランプだったのだ。 何故こんなことになってしまったのか? マイケル・ムーアは自身もトランプが負けると思っていただけに、その背景を調べることにした。 すると思いもかけない事実が次から次へと出てきて、<トランプを当選させてしまったアメリカ>の実情を理解していく・・・。
 「最初から最後までトランプの話なのか」と思っていくと肩透かしにあってしまうほど、「トランプ以前」への言及が多いのです。 でもそれこそが、必要なこと。

  華氏119 1.jpg 「トランプ慣れしてはいけない」と彼は警告する。
 トランプの手法は彼のオリジナルではない。 2010年にトランプの昔からの友人だという大富豪のスナイダーという大富豪がミシガン州の知事に就任する(ミシガン州はマイケル・ムーアの故郷である)。 「州を会社のように経営して赤字は出さない」と言ったスナイダー知事は自分の側近を要職に送り込み、よくわからない緊急事態を宣言して市から権限を奪って権力をほしいままにする。 水道を民営化し、フリントという町にはヒューロン湖からではなくフリント川から取水することになったが、住民から健康被害の訴えが出ても耳を貸さない。 友人が町を支配する姿を見たトランプがうらやましそうな表情を浮かべているニュース映像がある。
 更にヒラリー・クリントンを代表にした民主党側の問題もあぶりだす。 実は民主党代表選では労働者階級や若者たちから絶大な支持を受けているバーニー・サンダースが得票数ではずっと多かったのだが、各州の推薦ではヒラリー・クリントンを指名させており、民主党に対する信頼が失われたのが共和党、ひいてはトランプの追い風になったと分析する。 それと選挙人制度の問題は日本における「一票の格差」のようなものなのかしら? これもまた主にアメリカ国内向けなのでなじみのない人間には説明不足だし、出来事の年代も行ったり来たりするので整理するのが大変である。 <字幕監修:池上彰>となってますが・・・文字制限の壁の前ではあまり有効な手は打てなかったか?

  華氏119 2.jpg さらっとやってるけど、これもある種のテロですよ。
 フリントの水道水には鉛が含まれており、子供たちに鉛蓄積被害が出ている。 健康診断の結果を州が改竄している、という証言もあり、「ほんとにフリントの水が安全なら大丈夫だろう」と州知事邸にフリントの水道水を撒くマイケル・ムーアであった。 庭の植物がかわいそうだよ。
 でもこのあたりは意図的かどうか説明不足で、フリント川の水が鉛汚染されているととれるんだけど、実際は(まぁフリント川の水が汚れているのは確かなんだけど)汚れた水が通過することによって老朽化している水道管から鉛が溶けだしているためであるようで、そもそもヒューロン湖から水をもらうための使用量を水道会社が払わないからフリント川の水を使っているわけで、健康被害が出た後の賠償やらなんやら考えたら普通に使用料払って元通りの水源を使ったほうがいいのでは?、と考えない企業倫理がすべての原因(ご老人には細菌汚染による合併症でなくなっている人も多いので、取水施設の手抜き工事もありそうだし)・・・世界的にも水道事業の民営化はマイナス要素しかないことがわかっているのになんで導入するんですかね。 自分たちは大丈夫とでも思ってしまうのかしら。 そして日本でも水道民営化の話、出てますけど・・・大丈夫なの?、と考えさせられちゃいますね、やっぱり。
 投票率の低さも問題だし、「アメリカは10年後の日本」と感じているあたしとしては他人事じゃない。 多分、マイケル・ムーアも本気でヤバいと思っているのではないだろうか、だからこの映画ではいつものふざけた感じが少なめです。
 しかし、救いもないわけじゃない。 民主党のふがいなさを目の当たりにして「誰もやらないなら自分たちが変えよう」と選挙に出ることなんて考えたこともなかったという女性たちが下院議員に立候補して選挙活動している姿も追う。 彼女たちのほとんどが今回の中間選挙で当選してる! これは映画は終わっても世界が動いている証拠。 日本よりアメリカのほうが条件的に立候補しやすいのかな?
 そして選挙権を持たない若者たちも声を上げ、デモをしたり彼らの力で応援している候補を推す(もしくは、落選させたい候補には強力な対立候補を立てる)、などの活動をしている姿も。 もはや<ドント・トラスト・オーバー30>は古い、<ドント・トラスト・オーバー18>か!

  華氏119 3.jpg 希望を託せる若者たちに囲まれて、なんだかうれしそう。
 そう、マイケル・ムーアも年をとった。 自分は戦い続けてここまで来たけれど、有名になってしまった分、油断すると敵に利用されてしまうこともある。 自分の影響がどこまで伝わるのかわからない。 だから志を共にする若者たちの存在は、どれだけ心強いことだろう。 それがわかるトシに、あたしもなったということだな・・・。
 しかしびっくりなのは、アメリカ建国の理念が民主主義だと多くの国民が信じているということ。 でもある学者さんは言う、「アメリカが民主主義になったのは1970年ですよ。 それまでは女性や有色人種には選挙権がなかったのだから」と。 民主主義の歴史は浅い、あぁ、それは日本も同じだよ! ということは若い人ほど民主主義の世の中で生きてきているわけだから、信頼できるってことかも。
 アメリカ・ファーストを叫び、「移民は出ていけ、私たちの国で勝手をするな!」と町中でキレている“一般市民”・・・「いやいや、あなたたちだって何代か遡れば移民でしょ?」と聞きたいよ・・・アメリカは自国の歴史をちゃんとみんな勉強しようぜ。 ちゃんと勉強した人たちはそんなことは言わず、もっと広い視野で先を見てるよ。 それはどこの国の人でも同じこと。
 それにしても、フリントの水道水問題で当時のオバマ大統領がフリント市に来たのに、市民の前にあらわれたのに、何の役にも立ちやしない・・・ということが衝撃だった。 マジでこんなダメな大統領だったのか! ノーベル平和賞受賞のときがピークだったんだな!
 そして・・・フロリダ州パークランドの高校での銃乱射事件の追悼集会での生き残った女子高生のスピーチには、当時のニュース映像でも目が潤んでしまったが、この映画でも出てきて泣いてしまった。 マイケル・ムーアの原点は、やはりここにあるのでは。

posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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