2018年08月29日

丘/スーザン・ヒル

 スーザン・ヒルといえば、ゴーストストーリーとかファンタジー系サイコサスペンスのイメージ。 つまりホラーです。
 しかしこれは<サイモン・セレイラー警部>シリーズというれっきとしたミステリ。
 なんか、意外!

  丘 スーザン・ヒル1.jpg丘 スーザン・ヒル2.jpg でもなんか表紙のイメージがホラーテイスト。

 舞台はイギリス、田園地方の大聖堂の町・ラファトン。
 “ザ・ヒル”と呼ばれる古代の立石がある丘がある。 そこにジョギングに行ったと思しき女性が姿を消すという事件が起こる。
 ロンドン警視庁からラファトンへ異動してきたばかりのフレヤは、同じ女性として身寄りのない失踪者の調べを担当するが、“ザ・ヒル”では過去に男性も失踪していることがわかる。 連続性を考えているところに、“ザ・ヒル”に散歩に行ったという若い女性が行方不明になり・・・という話。

 <サイモン・セレイラー>シリーズ第一作、といいつつ彼が出てくるのは結構あとから(先に彼の姉や母が出てくる)。 姉のキャットはラファトンで開業している医師なので(セレイラー一族はもともと医者稼業なので、刑事になったサイモンは一族の異端者という設定)、町に住む人々のいろんなことを知りうる立場にいるし、母親は元院長夫人として今でもチャリティ活動に携わり、フレヤは大聖堂のコーラス隊に参加して奥様と親しくなるなど、コージー展開になる要素がたくさんあるのに全体を流れる雰囲気はやはりホラーテイスト。
 “ザ・ヒル”が霧深い場所だったり、ニキビに悩む娘が医者でなくあやしげなセラピーに傾倒したり、夫を亡くした老婦人が夫恋しさのあまり交霊術師のところを訪れたり、代替医療ではない心霊術師が多くの患者を集めていたり、と、そういう存在がなんか多いんです!
 ロンドンから来たフレヤにとってはラファトンは小さな町に思えただろうけれど、大きくはないけど小さすぎるわけでもない町なんだろうな、と。 携帯電話が出てきたからそう昔の設定というわけでもないんだけど、どことなくレトロな雰囲気を感じさせつつも古い話にはなっていないのは、なんらかのよりどころを求める人の気持ちというものが常に変わらないからだろうか。
 視点人物がたくさんいるので誰が主役とは言いづらく(一応フレヤなのか? サイモンは警部なので捜査責任者という立場ながら彼視点の描写は少なく、いちばん謎めいた人物として描かれている気がしないでもない)、群像劇の趣き。 原題も“様々な立場の人々”みたいな意味っぽいし。
 下巻の中盤で読者には犯人が誰かわかってしまうのですが、この人は死ぬのかなーと思っている人が死ななくて、この人は大丈夫だろうと思っていた人が死ぬ!、という容赦ない意外性で最後まで勢いは衰えず。 犯人が誰かはわかっても、細部まではつまびらかにしない感じがモダンホラーっぽいのです。
 でも面白い。 町に住む人々の人生の断片の積み重ねが面白い。
 ただ登場人物の名前が・・・キャットの友人の名前がキャリンで、音に出せば全然違うんだけど、字で読んでると「どっちがどっちだっけ」と悩んでしまうときが(友人なだけに二人だけの会話が多くて)。
 読み終わったけど町の人たちのその後、すごく気になるんですけど!
 <サイモン・セレイラー>シリーズは7作ぐらい出ているらしいんですが、どうも邦訳はこれだけらしい。 スーザン・ヒルはもうなくなっているから、なにかブームが来ないと(それこそ、このシリーズがドラマになるとか)、続きは出してもらえないかも。

ラベル:海外ミステリ
posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | ☆ 読んじゃいました | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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