2018年08月21日

2重螺旋の恋人/L'AMANT DOUBLE

 フランソワ・オゾン新作。 前作『婚約者の友人』で「まともな映画を撮るようになったな〜」と思っていたのだが(もはや基準がおかしくなっているので、『ぼくを葬る』や『危険なプロット』・『彼は秘密の女ともだち』もまともな映画だと思ってしまっていますが)、今作は原点回帰のような悪趣味全開。

  2重螺旋の恋人P.jpg 私が愛した男は、何者なのか。

 クロエ(マリーヌ・ヴァクト)は長らく原因不明の腹痛に悩まされているが、いろんな病院で検査をしても一向に改善されない。 ある婦人科から「原因は精神的なものかもしれない」と精神分析医のカウンセリングを薦められる。 紹介された精神分析医のポール(ジェレミー・レニエ)はとても無口な人物だった。 しかし彼を好ましく思ったクロエはカウンセリングに通い、いつしか腹痛が気にならなくなってきた。
 診療を終えることになり、医師と患者ではなくなった二人はお互いの気持ちを確認し、同居を始めることになる。 美術館での新たな仕事が見つかり、幸せな日々のはじまりだと思っていたクロエは、仕事帰りのバスの車窓からポールが見知らぬ女性と親しげにしているところを見てしまう。 帰ってきたポールに鎌をかけるも、ポールは何も知らない振り。 真実を突き止めようとポールを見かけた場所を調べると、そこにはポールと瓜二つの精神科医・ルイ(ジェレミー・レニエ)のオフィスがあった。 ルイによれば、ルイとポールは双子なのだが、過去の因縁からポールはルイのことをいないものとしているという。 外見はそっくりだが中身はまったく違う二人に、クロエは惹かれていき・・・という話。

  2重螺旋の恋人3.jpg クロエの顔が怖い。 特に目つき。
 “双子の変態性(?)”みたいな感じなら『戦慄の絆』が思い出されますが、予告やポスターなどでそっち方面に注意をひこうとしていても(実際観るまではあたしもそういう話なのかと思っていたし)、映画の冒頭でクロエが長い髪をバッサリと切るシーンで、「この女、ヤバい!」という空気が出すぎてしまっており、双子よりこの女があやしいと思ってしまうのはいいのか悪いのか。
 だからクロエがポールに依存するように惹かれていくのはわかるのですが、ポールがなんでクロエに恋をするのかわからない・・・まぁこればっかりは個人の違いとしか言いようがないですが、そのせいかクロエがポールをいろいろと詮索したり難癖をつけたりするのが、「ポールが何か秘密を抱えているから」というより「クロエが変質狂だから」と見えてしまって、ポールがかわいそうに思えてきた。 

  2重螺旋の恋人2.jpg 双子がジェレミー・レニエだと気づいたのはしばらくしてから。 メガネに騙されてます。
 で、残念ながらミステリーではないのです。 サイコサスペンスといわれたら、まぁそうかなぁ、的な。
 クローネンバーグ的グロさかと思ったらデ・パルマ的な<夢・幻想と現実の境目が曖昧>な方向に。 そこにオゾン的悪趣味と時間軸をひっくり返す感じが加わってこうなった?、みたいな・・・。 脱ぎっぷりのよいみなさんながらエロティック度は高めではなく、むしろおぞましさに近いものを感じさせられたりして。 人間関係を対等にするのではなく、支配と服従という形にしたい人がいる、みたいな。
 とはいえ、表情があまり動かないクロエが、ポールとルイの間を行ったり来たりしていくうちに自分の気持ちや感情を表に出すようになるという変化は興味深いものでしたが(演技面含めて)、クロエに共感できていないのですぐにその裏を考えてしまう。
 「あぁ、なんか、逆『ローズマリーの赤ちゃん』みたいだな」と思っていた。

  2重螺旋の恋人1.jpg これはルイ。 双子の区別は結構簡単。
 まぁ、退屈はしなかったしそこそこ面白かったのですが、ほぼ予想通りだったので最後のどんでん返し的部分で驚きを感じられなかったのが残念(ごめん、このネタ、知っていたからさ・・・)。
 それでも、クロエの中の混乱は落ち着いたのかどうか最後までよくわからないようなつくりになっていて、煙に巻かれた感は残りますが。
 あらためて、<鏡>が意味することの大きさに唸ってみたり。 あと、性別にこだわらないくくりが観ていてすごく楽だなぁ、と感じてしまった。 ここがオゾンのいちばんの強みなのではないかしら。

posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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