2018年08月17日

ショックで立ち直れない

 仕事中の夕方、来客を送り出してから席に戻ると、隣の席の人から「ネットニュース見て。 でも落ち着いて」とこっそり耳打ちされた。
 「えっ、なに?」と言いながら、ざわざわしたなにかが頭に忍び寄ってくるのがわかる。
 いやな、予感。 つい一・二時間ほど前の休憩時間のことが頭をよぎる。 『ドリーム』の日本語吹替版をWOWOWで観たんだけど、ケヴィン・コスナーが津嘉山さんじゃなかったんだよ!、ということから例によって声優さんの話題になった。 大概あの人の話は出てくるのに、何故かその日はしなかった。 『CSI:マイアミ』につなげられる話もあったのに、何故かあたしはあえてその方向に進まないことを選んでいた。 何故か本当にわからないけれど、口にしないことを選んだのだ。
 隣の席の人は、エンパスである。 あたし以上に何かを感じ取る力が強い彼女もまた、触れなかった。
 どうしてだろう。 いや、多分、彼女は何かを感じたから、そのあとネットを見たのかもしれない。

> 石塚運昇さん、食道がんのため死去。

 もしかしたらそうかもしれない、と耳打ちされてから湧き上がってきた疑念の答えがそこに書いてあった。
 ・・・でもそんな予想が当たったからって、うれしくもなんともない。
 たとえ休憩時間に運昇さんのことを話していたとしても、それで結果が変わっていたわけじゃない。 いや、むしろ話題にすべきだった! 以前のように無邪気な気持ちで運昇さんのことを話せる機会はもうない。 これからはかなしみや、喪失感がつきまとう。
 気がついたら、泣いていた。 お盆明けでまだ有休取ってお休みの人がいたり、取引先などが休みだからこの機会にシステム研修会をと、そっちに出ている人も多く、いつものデスク周辺には人が少なかったこともさいわいだった。 いや、人がいないからこそ、あたしはタオルハンカチを引っ張り出し、しゃくりあげるように泣いてしまうことを自分に許したのだ。

 アニメをあまり見ないあたしは、海外ドラマや映画の吹替をする声優さん(いわゆる外画系)しか知らないことが多く、そういう敷居がなかった時代の方々ならわかっているんですけど(まぁ、子供の頃はアニメも観てましたしね)。 声優ジャンル細分化以降、運昇さんは舞台出身の方にしては珍しく、アニメ出演も多い方。 アニメ中心の彼女と共通に盛り上がれるのはそこがあったから。
 個人的に「運昇さん、かっこいい!」となったのは、ご多聞に漏れず『CSI:マイアミ』のホレイショ・ケイン役から。 でもそれは石黒版『銀河英雄伝説』のヨブ・トリューニヒト役があったからこそ。 「この二人を、同じ人が?!」という衝撃ですよ。
 石黒版の『銀英伝』は、その声と演技で原作以上のイメージになってしまったキャラはたくさんいるが、ヨブ・トリューニヒトはその最たるものではないか。 似非カリスマ性のようなものを振りまきながら、ふてぶてしいまでに憎たらしい、「こいつ、絶対踏んずけてやりたい!」と何度思わされたかわからない。 図々しいを絵に描いたような、でもちょっとチャーミングな面をしっかり見せて、それすら結果的に腹立たしい、という“民主主義の妖怪”ぶりに惚れ惚れしたものです。 それが、「マイアミの太陽よりも熱い男」を! それで、すっかり好きになってしまった。
 ホレイショとしてすごい台詞をはいているのに、ご本人の見かけはなんだか好々爺で、そのギャップにも!
 しかも『CSI:マイアミ』のアフレコ中に「なんでこんなに大袈裟にポーズつけるんだろう、カメラもなんでこんなに無駄に下からあおるんだろう」と思っていたという。 そういう冷静な視点があるからこそ、大仰で気障な台詞がしっかり言えるんだろうなぁ。
 マイアミが終わってからも、『ハウス・オブ・カード』以降はケヴィン・スペイシーで、『96時間』以降はリーアム・ニーソンで、『99.9』は運昇さんのナレーションを楽しみに観ていたところがあるし(だからファーストシーズン最終回で裁判官として登場したときには盛り上がり、セカンドシーズンはご出演がないからがっかりした)、新しい『銀英伝』はメルカッツだったし、今放送している『BANANA FISH』ではパパ・ディノ。 海外ドラマのゲストでもよく出てくるし、ずっとリアルタイムで現役で、まだまだ運昇さんの声は聴けると思ってた。
 リーアム・ニーソンでマッド・スカダーをもう一本ぐらいつくってほしいと思っていたのに、できたらどうするの?!
 ひどい、ほんとうにひどい。
 あたしがこうして今も生きていられるのは、大好きな人たちがたくさんいるおかげなのに。 なのに大好きな人たちがいなくなってしまったら、過去の作品にしがみつくしかないじゃないか。 あたしの生きる目的がなくなってしまうじゃないか。
 ひどい、今年は本当にひどい。 漣さんだけでなく、運昇さんまで奪っていくなんて。

posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | 日記のようなもの | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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