2018年07月10日

ワンダー 君は太陽/WONDER

 ウーム、これは微妙だ、と思った。 泣かせる系の話はちょっと気が重い(結果的に泣いてしまうのは構わないのだが、最初からそれが予測されるのは別)。 でも向こうの話は日本のように「お涙頂戴」になることは少ないし(しかも監督は『ウォールフラワー』のスティーヴン・チョボスキー)、あの『ルーム』天才子役ジェイコブ・トレンブレイくんが出てる! でもその母親役がジュリア・ロバーツってちょっと歳離れてない? とはいえトリーチャー・コリンズ症候群に興味はあるし・・・一回レイトショーから消えたので(そのあと戻ってきたけど)、タイミングが合わずに観に行くのが遅れてしまいました。
 結果的に、観に行ってよかった!

  ワンダーP.jpg やさしさの半分は 勇気でできている。

 オギー・プルマン(ジェイコブ・トレンブレイ)、10歳。 彼は自分が“普通の子供”ではないことをよく知っている。 遺伝子の病気とやらで人とは違う見かけで生まれたから。 27回も手術を受けた。 外出するときは宇宙飛行士のヘルメットをかぶり、学校にも通わず自宅学習でこれまでやってきた。 会うのは家族だけ、それでオギーは平穏だった。
 しかし5年生となる区切りで、母親のイザベル(ジュリア・ロバーツ)はオギーを学校に行かせようと決断する。 父親の夫のネート(オーウェン・ウィルソン)の「まだ早い」と反対するが、「自宅学習では子供同士の社会性は身につけられない。 一生家にいるわけにはいかない」とオギーを説得。 「学校、行ってもいいよ」と言わせる。
 新学期が始まる前、オギーとイザベルは校長先生(マンディ・パティンキン!)に会いに行く。 オギーの事情を理解し、必要以上に同情しない校長先生にオギーは好感を持つ。 しかし学校を案内する、と現れたのはジャック(ノア・ジュプ)、ジュリアン(ブライス・カイザー)、シャーロット(エル・マッキノン)という3人の同級生。 お金持ちの意地悪少年ジュリアンにさっそく顔をからかわれたオギーだが、逃げることはしないと決めた。
 そして新学期が始まる当日、オギーは両親と姉のヴィア(イザベラ・ヴィドヴィッチ)に見送られて校門までくる。 オギーの学校生活が始まる・・・という話。

  ワンダー1.jpg おかあさん、押しが強すぎる。
 もともと大学院で論文を書いていたところで妊娠し、オギーが生まれたため彼の家庭学習をすべて母親がやっていた、ということもあり・・・この一家ではイザベルに誰も勝てないのでは、と思わせる強さが。 ジュリア・ロバーツ、ナチュラルメイク風で若く見せようとしてますが・・・貫禄がありすぎてオーウェン・ウィルソンが年下夫にしか見えない(でもキャリアに差があるだけで、実年齢的にはそれほど違いがないはずなんだけど)。
 そしてオギー、トリーチャー・コリンズ症候群にしては(劇中で具体的な病名は出てこないが)、しかもこういう表現が正しいかどうかわからないが、顔の違和感は少な目。 口がうまく開かないからものが食べづらいといった表現は出てくるものの、特に日常生活に支障がある感じはしない。 いじめっ子の問題の話になっちゃうのかな・・・と思っていたら、視点が変わってオギーのまわりにいる人たちの話になっていく!

  ワンダー5.jpg 特におねえちゃんの話が突き刺さる。
 難病を抱えた弟を持った姉。 母親に「世界一手のかからない子」と言われてしまっているヴィア。 好きで姉に生まれたわけじゃないのに、家族内の役割として常にしっかりとした姉でいなければならないヴィアは、自分の心配事を家庭に持ち込むことも、自分が悩みを持っていることすら両親に悟られないようにしなければならない(それでなくとも両親はオギーに注意を向けがちなので、ヴィアのことは気づかれないままなんだけど)。 それがなんか、「すごいわかる!」って感じで。 ここまで極端ではないにせよ、ヴィアの悩みは<第一子長女あるある>で、非常に切ない。 オギーが小学校初日の日、ヴィアも高校初日だったのに母親全然心配しないし・・・(寝る前に父親は「高校どうだった?」と声かけたけど)。

  ワンダー2.jpg そしてジャック。
 くるくる巻髪がかわいい彼が、学校でのオギーの友人第一号。 「確かに最初はびっくりしたけど、顔なんて見てたら慣れるよ」という一言、かっこいいよ! しかしジュリアンたちとの付き合いは長く、いかにも男の子っぽいバカな見栄を張ってしまったせいで一時期オギーと気まずくなることも。 子供ってバカだよねぇ、と思いつつ、子供だからこそすぐやり直しがきくわけで、そこで学習できるか否かが今後の人生を左右することになるんだな、と実感。 シャーロットは芸能活動をする「自分大好き女の子」で、ちょっと種類の違うおバカなので、彼女は彼女で自分の道を行けばいいと思う(問題は、彼女に理由なく付き従っちゃう女の子たちの方)。 そしていじめっこジュリアンは・・・両親がそもそもやばい人たちってことで、なんか納得。 他の子たちに比べてジュリアンの描写が少ないので消化不良感はあるも、彼のその後は観客に想像してほしいということかも。

  ワンダー3.jpg 自主的に行動したサマー(ミリー・デイヴィス)。
 実はオギーの本名はオーガスト。 「オーガスト(8月)とサマーで、<夏同盟>ね」と手を差し出すサマーのキュートなこと!
 そんなふうにオギーと仲良くなる子供たちはかなり魅力的に描かれているんだけど、勇気がない(?)その他大勢は空気のようで(そのへん、モダンホラーテイスト?)。 露骨ないじめに加担せずとも制止しなければ同罪なのか、接点のない人と無理やり仲良くする必要はない自由ととらえるべきなのか、大人であればそうなるだろうけど、子供なんだから全部経験で勉強だと思いなさいよ。
 だからオギーが主役かと思いきや(最初の章では確かに主役なんだが)、その後は実は狂言回し的役回りという・・・顔に特殊メイクを施されていても、宇宙服着ていても、オギーの感情が些細な動きから伝わるんだから、ジェイコブ・トレンブレイくんはすごいね! アメリカの子役の層の厚さをまたしても実感させられる(ジャックを主役にしても映画になりそう)。
 そしてなにより校長先生ですよ。 登場した瞬間「ギデオン!」(『クリミナルマインド』の)って思っちゃいましたが、穏やかで心が広く、すべての子供にチャンスを与えたいと思っている教育者感が漂っているのですよ。 「正しいことと優しいこと、どちらかで迷ったら優しいほうを選ぼう」という視点ですよ!

  ワンダー4.jpg そしてパパ。
 妻には頭が上がらないけど、実は子供二人をちゃんと見ている・・・というかなり理想的なパパなのですよ。 何の仕事をしているのかいまいち不明ですが、かなり高収入のようで。
 そう、この映画で引っかかるとしたら、「それ全部、お金持ちの家だからできることじゃない?」というところ。
 ジャックは奨学金をもらって通っていると言っていたから、あの学校はそれなりの格式のある学校なのであろうし(となれば各家庭で「いじめはよくない」という教育がされているのは前提のはず)、これまで自宅学習だったとはいえ学校に来てからオギーが賢くて成績優秀であるとわかればある程度敬意を表するはず。 なによりお金持ちだから27回も手術できたしこれまで家庭学習で十分な成果を出せていた。 もし裕福な家じゃなかったらそこまでできたのか、という話。
 もちろんこれはフィクションであるし、必要以上に現実の醜さを表現することはない。 病気がオギーにとって個性であるように、すべての人の特性や属性もすべて<個性>の範疇におさまる。 そう思えばみんなハッピーだよね、という話。
 音楽の使い方もよかったし、そのあたりも監督の個性ですかね。

posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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