2018年07月03日

オンリー・ザ・ブレイブ/ONLY THE BRAVE

 消防士もの、好きです。 古くは『タワーリング・インフェルノ』から『バックドラフト』、最近ではドラマ『シカゴ・ファイア』まで見られるものはほとんど見てます。 『マクリーンの渓谷』も読んでいる。 何故好きなのか、と言われると困りますが・・・人知が及ばない<火>という生き物に対して本気でぶつかっていく感じ、みたいなものですかね。 デスゾーンに向かうサミッターの方々を見る気持ちと似ているのかも。 また今回、ジョシュ・ブローリンとジェフ・ブリッジス、マイルズ・テラーというキャスティングが堅実すぎて王道感すら感じるし。
 ただ、住宅火災と森林火災は全然違う。 この映画は森林火災の方で、つまり『マクリーンの渓谷』現代版というべきか。 しかしこの認識を、あたしはラストで悔やむことになる。

  オンリー・ザ・ブレイブP.jpg 炎は怖くない。恐れるのは、愛する人の涙だけ。

 舞台はアリゾナ州。 地元の森林消防隊のチーフであるエリック・マーシュ(ジョシュ・ブローリン)は火の動きを風の状況などから予測し、「火をもって火を制す」という発想で消火を考えるタイプだが、理論派かつ直感型であるが故に他の消防隊チーフや上層部と衝突し、なかなか彼の才能を理解してもらえない。 唯一の理解者である先輩のデュエイン(ジェフ・ブリッジス)の力を借り、<ホットショット>の位を狙うことに。 <ホットショット>とは農務省森林局の特殊チームのことを指し、いわば森林火災のスペシャリストのこと。 <ホットショット>の名を持たないが故にマーシュの発言は「Bクラスチームの戯言」と取り合ってもらえず、過去に森林火災を長期化させたことがあった。
 山火事多発地帯の湿度は低いため、ひとつの落雷が大火事のきっかけになる。 また森林火災のシーズンがやってきて、マーシュのチームは次の出動で<ホットショット>認定試験を受けることになる。 そして森林消防隊の隊員募集の応募に、ブレンダン・マクドナウ(マイルズ・テラー)がやってきた・・・という話。

  オンリー・ザ・ブレイブ5.jpg 明らかにヤク中、というビジュアルで登場してびびりました。
 ブレンダンはほんとにダメ人間だった。 母親からも見捨てられ、恋人(?)が妊娠したことも人の噂で知る始末。 しかし子供が生まれると知って、このままでは父親として顔向けできないと思ったのか、たまたま見つけた森林消防隊募集に志願。 マーシュは一目で彼がヤク中上がりだと気づくが、チャンスをやるんだよね! 他の隊員たちは「こんなやつに足引っ張られるのは勘弁」みたいな態度をとるんだけど(そりゃそうだ)、ブレンダンの根性でしがみついてくる姿勢にちょっとづつ心を開き、「ドーナツ」(名字のマクドナウ → ドナウ → ドーナツ←“穴が開いてる・ポンコツ”の意も含む)と呼ばれるように。 男子の体育会系のノリ、あたしはあまり好きではないのですが・・・まぁ、ここはそういう世界なんだろうね、と(でも明らかに誰かがやりすぎたら、他のやつがたしなめる図式はあったので、守るべきラインはあったようだ)。 ブレンダンにちょっかいを出しつつ、最終的に親友になるマッケンジーがテイラー・キッチュだって最後まで気づかなかった! 主演で二枚目系だったころと全然違うんだもん。 でもこういう役ができるほうが役者としては長生きできるよね。
 そんなわけで、森林火災がメインになるかと思いきや、訓練や人間関係といった地味な話にかなりの時間が割かれます。
 もしかして、これって結構な時間がたっているんじゃないの?、と感じても時間の経過についてははっきりあらわされず、そうかと思うといきなり<半年後>とテロップが出たりして戸惑う。 実話ベースだから何年もの間の出来事を一年半ぐらいにまとめちゃっているのかな、という気がした。

  オンリー・ザ・ブレイブ2.jpg 森林火災の専門家としてはほぼ完璧なマーシュだが、妻のアマンダ(ジェニファー・コネリー)からすれば不平不満がたくさんあるようでして・・・。
 要は、「仕事に夢中になりすぎて妻である自分を、家庭をないがしろにしている」ということなんですが・・・この仕事してたらそりゃそうだろ、と思ってしまうのはいけないことでしょうか。 山火事のシーズンオフにはマーシュはかなり奥さんを優先してるし、そもそもアマンダだって馬の調教師の仕事を持ってて日常的に馬のTシャツを着ているくらい馬バカなのに、何故そんなにも夫を責められるのか不思議(これって日本人的発想なのか)。 残念ながら、アマンダには感情移入できなかったな〜、これがアメリカ人にとって普通の感覚ならば、離婚率が高いのは納得だ。

  オンリー・ザ・ブレイブ1.jpg 彼もいつの間にやら一人前っぽくなってきました。
 火の描写、その迫力もまたすごくて。 マーシュがかつて見た“燃え盛る森、火にまかれて逃げるクマ”の場面は(彼の記憶の中のことということもあり)CGっぽいんだけど、それ以外はあまりCG感がない。 近距離の火はほんとに燃やしてるんじゃないか、と思えるくらいで。
 日本も山林が多く、時々山火事が発生しますが・・・原因が人為的なものだったり(キャンプ等の火消しミスとか)、広範囲に延焼することは更にまれだったりするから日本の消防には山火事専門のチームってあるのかな?、と考えたりした。 それくらいアメリカの山林火災対策は徹底していて、それでも抑えきれないほど森林が大きすぎるし湿度の低さも驚異的で(劇中では3〜8%だった)、日本の感覚では理解は無理。 美しく見える木の連なりも、ひとたび火事が起こればそれは大量の燃料に変わる、というエリック・マーシュの言葉が重い。
 そして2013年、彼らの地元にほど近いヤーネルヒルで山火事が。
 このためにそれまで山火事のシーンを最小限に抑えていたのか、と思うほどの火災シーンの連続。
 『マクリーンの渓谷』は1949年に実際に起こった森林火災に対して、消火に当たったスモークジャンパー(森林降下消防士)たちの話だった。 そのときにも火に火をぶつけて燃料になるものをすべて焼き尽くすことで消火する、という手法が出てきた。 それから60年以上たっているのに、それぞれの場所で地形の違いというものもあるでしょうが、完璧な計画がちょっとしたミスでひびが入る、みたいなことは変わらないのね・・・というむなしさがこみ上げる。 いかに新しい技術ができようとも、扱う人間そのものが変わらなかったらどうしようもない、というのはどのジャンルでもいえること。
 そして無線が届かない場所に入ってしまえば、連絡が取れなくなって生死がわからん、ということもまたどうしようもなく。

  オンリー・ザ・ブレイブ4.jpg 残される者たちは、いつだって非力。
 ひとりひとりの背景を描くためのゆっくりとした前半だったのだな、と気づく。 そしてアメリカではとても知られた話であるからこそ、映画的テクニックを使わずにあえて冗長と思われる手法をとったのだろうな、と。 事実を知っているか知らないかでは、この映画に対する評価が全然違ってしまうだろうことも。
 『マクリーンの渓谷』を連想していたのにそのことに気づけなかった自分に対しても、怒りを覚えてしまうほどに。
 エンドロール、現実の人々の写真が出る。 2013年当時の彼らの年齢に衝撃を受ける。 大半の隊員は20代、ベテラン風に見える副長ですらも30代そこそこという若さ! この隊だけが特別というわけではないだろうから、アメリカの森林消防隊はかなり若いメンバーで構成されているのだろう(ブレンダンみたいに道を踏み外して他の仕事から受け入れてもらえないという場合もあるかもだが、きつい仕事だから若いうちが頼りということもあろうし、若者の就職先が少ないという可能性も・・・)。
 いろんなことを考えてしまう。 それが「実話映画化」の重みか。

posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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