2018年04月13日

湖畔荘/ケイト・モートン

 『悪魔の星』の上巻をそろそろ読み終えようかという頃、図書館からお呼び出しの連絡が。
 あれか! あれがついに来るか!
 ケイト・モートンの『湖畔荘』である。
 予約まだ詰まってる! 早く引き取って早く読んで返さなければ!、とさっそく翌日図書館に(それまでの間に、『悪魔の星』は下巻に突入。 いいところに来ているのに断腸の思いだが、優先順位というものがある。 いったんお休み)。
 早速頭を切り替えて『湖畔荘』に没頭するのであった。

  湖畔荘1.jpg湖畔荘2.jpg ノスタルジック・・・。

 2003年、ロンドン。 ロンドン警視庁所属の刑事セイディは、子供が一人きりで家に一週間も置き去りにされた事件で、母親の自主的な失踪によるものという上層部の判断に納得できず、事件性があると一人訴えていたがうまくいかず、結果謹慎の身となることになり、祖父の家があるコンウォールへ。 苛立ちまぎれのジョギングの最中にたまたま、古びているが独特の雰囲気を持つ<湖畔荘>に出くわす。 実は70年前、その屋敷で赤ちゃんが行方不明になった事件があり、今も未解決のままだった。 気持ちも暇も持て余すセイディは調査に乗り出す。
 1932年、コンウォール。 <湖畔荘>に住む少女アリスは大好きな父親からもらった革の手帳に物語を書き込むようになる。 謎解き小説を書いて世間に発表する野望を抱くティーンエイジャーのお嬢様から見た屋敷の様子と、そこに集う人々の姿。
 主にこの二つの年代(ちょっと1910年代も入る)を行き来しながら、この二人をメイン人物としながらも様々な人々の視点から見た部分を織り交ぜつつ、<湖畔荘>をめぐる出来事がタペストリーを作っていく。
 主役の一人は刑事だし、現在でも過去でも子供をめぐる事件が起きているのだけれど、厳密にいうとこの物語はミステリではない。 『忘れられた花園』や『秘密』同様、特に女性の生き方に重きを置いた人間ドラマです。
 また、翻訳物にはなくてはならない<登場人物一覧表>がこの本にはない。 ネタバレになるから、というよりも、セイディが出会っていく人々を読者もまた同時進行に知っていくほうが面白いから、それに10代のアリスと80代のアリスの間を埋める“時間”もこの物語のもう一つの主役であるから、かしら。
 登場人物はそれなりに多いんだけど、順番に出てくるし章をおいて何度も登場するから自然と頭に入ってしまう(というか、今回あたしは一気読みをするつもりで読んでいるけれど、一気読みせざるを得ない内容なので忘れようがないというか)。 「えっと、この人は誰?」となることは一度もなかった。 説明不十分のまま時代を飛んだりするにもかかわらず。
 そして重要なキーワード、コインシデンス(偶然)の存在。
 セイディが<湖畔荘>を見つけたのも偶然、コンウォールの図書館員がセイディに協力的な人なのも偶然、<湖畔荘>に関する古い情報がたまたま見つかって修復に出され、閲覧可能になったばかりという偶然、などなど・・・細かいところから真相にかかわることまでコインシデンスがちりばめられている(登場人物たちもあまりの偶然の多さに驚嘆の声を上げるほど)。
 それを「ご都合主義」ととる人も多いかもしれない。 でもあたしはあえて断言する。 偶然も、いくつか重なればそれは必然である。
 えっ、こんなことがこんなことに?、という経験、ある程度の年数を生きてきたら誰しもあるはず。 ただそれを「たまたまそうなっただけ」と思って流すか(もしくは気づきもしないか)、その意味を考えるか(そうすると大袈裟にも“運命”という言葉が浮かんでしまうのだが)の違いで。 なので、そんな“必然”を理解する人にとって必読の書!
 まぁ、でも個人的には前作『秘密』のほうが心動かされたかなぁ、と読みながら思っていましたが、終盤で不意に落涙。 またやられてしまった・・・。
 更にエンディング、描かれるべきところをさらりと省略し、一言でその過程を全部想像させるところはすさまじく、それもこれもここに至るまでのことを読者に読み込ませていたからで、そこも「やられた!」って感じ。
 デュ・モーリアをリアルタイムで読んでいた読者もこんな気持ちになったのかなぁ、とまた“時間”に思いをはせてみたり。

 しかしながら・・・東京創元社の本にしては珍しく、誤植というか校閲ミスのようなものが目立ち(、が。になっていたり、助詞が抜けていたり、など結構何か所も)、残念な印象。 出版社に連絡すべきかと思ったが、発売されて結構たってるし、連絡すべき人がしているだろうし、多分向こうも把握しているだろうから、重版以降は直っているのかもしれない。 文庫になるときには間違いなく訂正されているだろうから、購入はその時に。
 というか、『秘密』を早く文庫化して!
 そんなわけで無事期間内に余裕をもって読了。 次の人、どうぞ!
 さ、『悪魔の星』に戻るぞ!!

ラベル:海外ミステリ
posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | ☆ 読んじゃいました | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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