2018年03月19日

コマドリの賭け/ジョー・ネスボ

 <ハリー・ホーレ>シリーズ第3弾(とはいえ、2作目は未訳)。
 シリーズの後半から先に邦訳が出ているので(そして本書が『ネメシスー復讐の女神』・『悪魔の星』と密接なつながりがあると噂で聞いていたので)、一作目『ザ・バット 神話の殺人』しか読まずに待っていたんですよ。 でも待っていて正解だった。 この途中の衝撃を先に知っていたら、ここまでのめりこめなかったかもしれない。 結構な勢いで読んでしまった。
 そういう展開になることは上巻後半から匂わせていたものの・・・ほんとにそうなるとは! ハリー、ひどいよ! うっかりにもほどがあるよ!
 まぁ、だからこそ彼はその後もずっとその十字架を抱えて生きていくことになるんだろうけどさ・・・そういう意味でも、ハリーの人間として・刑事としての生き方を決定付けた事件でもあり、何故これが飛ばされて(正確には翻訳は出ていたんだけど、集英社文庫が『スノーマン』を出したときにはもう絶版だったから)『ネメシス』が刊行されたのか意味がわからない。
 本作ではハリーについて、オーストラリアとバンコクの事件についての言及があるので、バンコクの事件とやらが2作目なのだろう(『ザ・バット』の舞台がオーストラリア)。 ということはシリーズ3作目にして初めて自国ノルウェーが舞台、ということになる。 なんでこれから刊行しなかったのか、やっぱり意味がわからない。

  コマドリの賭け1.jpgコマドリの賭け2.jpg 大人の事情ですか・・・。
 アメリカ大統領がノルウェーを訪問することになり、警察は厳戒態勢をとる。 ハリー・ホーレも警備に駆り出されることになるが・・・仕事熱心さ故にミスをしてしまう。 だが、アメリカ・ノルウェー両国の上層部にとって「それはミスであってはならない」ため、アクシデントは隠蔽され、更にハリーは警部の昇進し、公安警察局(POT)に異動となる(昇進はしたが、実態は閑職)。
 しかし机に張り付いているだけでは性に合わないハリーは、ノルウェーにメルクリン・ライフルという高性能にして破壊力抜群の武器が密輸された可能性をある報告から感じ取り、独自に捜査を始める。 異動前の相棒、エッレン・イェルテン(女性)の手を借りながら背景に迫ろうとするが、メルクリン・ライフルを手に入れたものは第二次世界大戦中に東部戦線にいた元兵士で・・・動機は過去から続いていた、という話。

 昨年末、『ヒトラーに屈しなかった国王』という映画がやっていて(あたしは残念ながら機会を逸したのだが)、その映画ではナチス・ドイツの軍門に下るかどうかを迫られたノルウェー国王がロンドンに亡命し、それでも国のために尽くした的な内容っぽい印象であった。 ホーコン7世は本国では偉大な王様と思われているのかと思いきや、一部の人々から(それこそ、大戦で戦った兵士たちなどから)「国を、国民を捨てて逃げ出した裏切り者」と認識されていたりするようで・・・勿論、その時代を知らない世代のほうが増えているから「現在のノルウェーにとって都合のよい解釈をする歴史家」が優遇されていたりと、歴史修正主義は結構どこの国でもあることなのねと驚く。 そういう内容を警察小説で読む、ということに北欧ミステリの層の厚さもしみじみと感じる。 島国の人間にはわからない、陸続きの国の人の苦悩というか。
 時間も場所も行ったり来たりするが、章立てがわりと短いのでそんなに混乱しない(ときどき、逆に短すぎて「クリフハンガーかっ!」と思わされて切りのいいところで読み終わることができない)。 エッレンの留守番電話にハリーが伝言を繰り返し吹き込む場面は、「ハリーのバカ!」と思っていたあたしの怒りを冷ます効果が十分にありましたよ・・・。
 それにしても、ハリーよりもエッレンのほうが刑事として有能なのでは・・・でも有能すぎる人を主人公にしては盛り上がりに欠けるのか? まわり道して、美人にうつつを抜かし、政治や権力闘争などに出し抜かれつつ、真相に気づきかけているのに深く突き詰めずに別のほうに意識が行ってしまったせいでいろんなものを取り逃がし、これ以上ないくらいの犠牲を払ってやっと辿り着く。 そういうところが<普通の人間>っぽいのでしょうか。
 <メルクリン・ライフル事件>は解決を見るけれども、読者は知っている別の真相にハリーはまだ気づいていない。 この続きが『ネメシス』かよ! もう、すぐ読まなきゃ!
 しかし、そういうときに限ってどこにあるかわからないのだった・・・『悪魔の星』はあるんだけど。 そして探している最中に<クリフトン年代記>の続きを見つけたし。 探さないほうが、見つかるのか?

posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | ☆ 読んじゃいました | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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