2018年01月27日

猫目石/栗本薫

 そんなわけで、まずは『猫目石』から。
 図書館で探したら角川文庫版しかない! しかも書庫。 そのうち処分されてしまうのではないか・・・時の流れの無常さをまた感じる。

  猫目石1角川文庫.jpg猫目石2角川文庫版.jpg これは昔とはいえ何回か読んだので、大筋は覚えていた。
 ある夏、出版社の命により軽井沢のホテルでカンヅメになることになった流行作家の栗本薫(作中人物:一人称は<ぼく>)、付き合いであるパーティーに顔を出し、同じく作家の森カオル女史とあの名探偵伊集院大介に会う。 更には売れっ子作家の藤波女史に気に入られ、彼女の新作の映画化のシナリオを書けと言われてしまい、女史の別荘に招待される羽目に。 しかし<ぼく>にとっての運命の出会いは、16歳の美少女アイドル朝吹麻衣子だった・・・という話。 そして別荘で起こる連続殺人に、<ぼく>は伊集院大介とは違うアプローチで事件の真相に迫るのだ。
 28歳自由業と16歳人気絶頂アイドルとの恋愛、という部分だけ今の目で見ると「中二病?」という感じになってしまいますが、これが書かれた時代にはそういう言葉はなかったし、栗本薫(作者のほうの)世界では結構よくあることなので当時(あたし中学生か?)はなんの違和感もなく読んでいたなぁ。 改めて読んでみると、麻衣子の美少女振りの描写は他の作品でも読んだことがある感(勿論まったく同じではないんだけど、その語り口というかが。 『グイン・サーガ』におけるアルド・ナリスとか、それこそ『天狼星U』の芳沢胡蝶にも通じるような)。 『猫目石』が薫くんの一人称で書かれているから余計にそう思うのだろうなぁ(そしてグインは薫くんが書いているもの、という設定だし)。
 で、薫くんの森カオル描写を見て、「えー、森カオルってこんなに感じ悪くうつっちゃうの? 同族嫌悪っぽいけどな〜」と思い、最初に読んだ時もそう思ったこともまた思い出すのだった。
 畳みかけるように死体が増えていくところなど、『かまいたちの夜』はこれを参考にしたのではないかと思えるほどのスピード感で、それ故に「殺されるためのキャラクター造形」と言えないこともないんだけど・・・薫くんにとっては自分が大切に思う人以外に特に感傷はない、みたいな性格的傾向があるので、そういうことなのかと。
 薫くんの一人称で進むため、どうしても大介さんの出番は制限されるんだけど(かつてのあたしは「大介さん、結局薫くんの引き立て役じゃん、と思った記憶あり)、大介さんのすごさを薫くんが心底認めるところで、探偵としての二人の資質の根本的な違いが明らかになり、それで伊集院大介は最大級の賛辞を受けていると、今のあたしは気づくことができました。
 結局のところ、いろいろ懐かしかったのでした。 殺伐とした、大介さんが珍しく本気で怒るようなひどい事件だったにも関わらず。
  猫目石1講談社ノベルズ.jpg あたしが昔読んでいたのはこっちのノベルズ版。
 乱歩賞作家描き下ろし企画の中の一冊。 サブタイトルに<伊集院大介VS栗本薫>とある。 でも別に直接対決するわけではないんですけどね。

 角川文庫版の解説で、日下三蔵氏が「(伊集院大介が)正統派名探偵(?)として順調に活躍していただけに、『天狼星』シリーズで、いきなり江戸川乱歩風通俗スリラーの世界が展開されたときには、度肝を抜かれた。」と述べていて・・・あ、一緒です!、と思う。
 伊集院大介初期三部作はきっちりと設計図がひかれ、横溝的世界を現代に違和感なく移管させた推理小説を目指して書かれたものだとしたら、『猫目石』で薫くんと共演してしまったが故に(薫くんの世界は何でもありだから)、古典的かつ正統派推理小説の枠をどんどんはみ出していくことは必然だったのかもしれない。
 あたし自身は読者として<ぼくらシリーズ>(薫くんの一人称、親友の信とヤスも出る話)よりは<伊集院大介もの>のほうが好きではあるんだけど、作者栗本薫作品で最も好き・もしくは印象深い作品は『魔境遊撃隊』(薫くんの一人称で、時間軸的には『猫目石』の前、南海の孤島で起こる謎と冒険活劇)だったりするので・・・薫くんに対しては愛憎半ば、という感じです。
 じゃ、次は『怒りをこめてふりかえれ』を取り寄せるか〜。

ラベル:国内ミステリ
posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | ☆ 読んじゃいました | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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