2018年01月10日

御子柴くんと遠距離バディ/若竹七海

 てっきり、新刊案内でこの本のタイトルを見たときは、<遠距離バディ>とは小林警部補のことだと思い込んでいた。 でも、御子柴くんにしてみたら小林警部補は元上司だし、尊敬する先輩。 バディという関係になるかな・・・と思い直し、警視庁で培った人間関係が新たなバディを生むのかな、とぼんやり考えた。
 しかし・・・読み始めてみたらなんと、前作からすでに三年が経過しており、御子柴くんは更に成長していて(というか、あれほど嫌がっていた“政治的駆け引き”からうまく身をかわす方法を身につけている)、しかも小林警部補は定年退職されてしまっているではないか!
 仕事に変化はつきものとはいえ・・・小説世界でもそうなってるってなんだかかなしいわ。

  御子柴くんと遠距離バディ.jpg 相変わらずコメディタッチではあるが、前作よりビター度は高めか。
 というわけで、小林警部補の手助けもなく、刑事としてもひとり立ち。 でもその分、なんだかお疲れモード。 35歳になった御子柴くんは「自分ももう若くない」ということを日々実感する年齢になってきており、かといってベテランの域に気分的にもなれるわけもなく、そんな中途半端な位置にちょっといらいら・もやもやな日々。 しかし事件はなんだかんだと日々起こるわけで・・・の連作短編集。
 あたしもそんな中途半端感に見舞われる時期を通過してきたので、御子柴くんの気持ち、よくわかる!
 そして本作から登場した御子柴くんの相棒・江戸っ子竹花くんもいいやつで。 あえて「そっすよね」みたいな口調で明るく喋るけど、心の中にはいろいろ・・・というところ、すごくいい!
 事件は起こるし、その解決のために御子柴くんも竹花くんも、その他刑事さんたちも奮闘するんだけど、そしてその<事件>はさらっと描かれているけれど背景はかなり重くて、短編故に後味も微妙によろしくないんだけど、実は「警察という組織で生きている、ある意味サラリーマンとして仕事をしていく上で、大事なのはやっぱり人間関係ですよね」という話でもあったりするわけで。 <警察小説>と言ってしまえば横山秀夫のライト版みたいになっちゃうけど、情報をもらったり協力してもらったり、所属の違いなどでギスギスしそうなことも個人対個人の関係がうまくいっていたら何の問題もなく、事件解決にスムースに貢献出来たりするわけで。 御子柴くんや竹花くんがしようとしてることは、せめて捜査手順ぐらいは不快な思いをせず、楽しくやろうよ、ということのような気がして、そんな仕事観はあたしに近いです! なのでいつも以上に共感ポイント多めで読んでしまった。
 大きな組織であればあるほど、命令系統や上下関係に理不尽さを覚えることも多いけど、それとは関係ないところで自己裁量でやれる部分は自分たちで何とかしよう、という心意気。 それをちゃんと見ていて、評価してくれる人がいなければその組織は終わるけど、でも大概は多少なりとも報われることはあるわけで。
 なので、これは切れ味鋭いミステリでありながら、実はお仕事小説でもあったのでした。

ラベル:国内ミステリ
posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | ☆ 読んじゃいました | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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