2018年01月06日

優しい密室&鬼面の研究【新装版】/栗本薫

 懐かしついでに、勢いがついちゃったのでこれらも。

優しい密室【新装版】
 もともとあたしは<名探偵>に弱い。 だから伊集院大介さんにも子供の頃から憧れていた(だから彼のモデルであるさだまさしも好きになったのかな・・・音楽はこれを読む前から聴いていたけれど、相乗効果?)。 いつかあたしもホームズ的な人物と出会い、ワトソン的役割を果たすのだ!、という心ひそかな野望は、もしかしたらこの『優しい密室』によって確立されたのかもしれない。 だって、森カオルさんは17歳で、大介さんと出会ったのだから(なおこのとき、あたしは11・12歳である)。

  優しい密室新装版.jpg 旧版と表紙が違う気がするけど、装画・装丁は同じ人のような。
 カオルが通う中高一貫の女子高に、教生(教育実習の先生)として伊集院大介がやってきた。 高校で息苦しさを感じていたカオルは、学校のどんな先生とも違う大介の雰囲気に、<外の世界>への興味をかきたてられる。 そんな中、校内であるチンピラの死体が発見され、自分の力で事件を解決しようと奮闘するカオルなのだが・・・という話。
 さすが、ずっと前とはいえ3回以上は読んでいるから内容は結構覚えていました。 だからカオルの素っ頓狂な思い込みや早合点が痛々しい。 でも、一人称ながら「17歳の、あの頃の恥ずかしい自分」を承知の上で振り返って書いているので、その青臭さはそんなにひどくない(一緒に反省も書かれているからね)。 とはいえ、その頃の年代の自分の記憶はあたしにもあるわけで、カオルさんの痛々しさはそのまま過去の自分にも向けられる内容でした。 風俗的に多少古いとはいえ、携帯電話やスマホのない時代、という意味ではあたしの時代もこっちのほうに分類されるわけで、完全に懐かしいわけではないのだけれど(あたしは共学の普通高校に行ったので、私立の女子高の雰囲気は想像の範囲でしかない)、自意識過剰でいつか自分は何者かになれると疑わず、理想主義であることを恥ずかしいとも思わず、知識や知性がもっとも尊いと思っていた<あの頃>を、あたしもまた赤面しそうになりながら思い出す。
 多分、あたしは少しは大人になった。 でも<あの頃>の自分もまた、しっかりまだここにいるのだ。


鬼面の研究【新装版】
 『優しい密室』の続編。 あの事件から10年近い時間が流れ、カオルさんは女流作家として一本立ちしてときにはテレビの仕事とかしてしまったりするようになり、大介さんは<名探偵>として知る人ぞ知る、という存在になっている。 なのに、本作におけるカオルさんときたら、ひどい。 作家としてリアルタイム視点のせいか前作ほどの反省が見られず、やりたい放題で大介さんの手をわずらわせ、不用意な発言をしてときに事態を悪化させる。 これも内容は覚えていたので「あ、犯人この人」とかすぐわかりましたが・・・カオルさんの言動がこんなにひどいとは思わなかった。 12歳前後のあたしにはわからなかったポイントであろう(というか、こんなに我儘でも許してもらえるってどういうこと!、みたいな感じですかね・・・)。

  鬼面の研究新装版.jpg 旧版の表紙は鬼の面がもっと小さかったような・・・。
 九州のある隠れ里にドキュメンタリー番組を撮るために訪れたテレビクルーたち。 カオルは出演者として呼ばれ、心配になった大介はマネージャーとして同行する。 深い山の中、つり橋を通ってしか渡れない村は、カオルにとっては横溝世界そのもの。 自分たちのプランで撮影したいクルーたちと、村のしきたりを守ってほしい村人たちとの間でいさかいが起こり、天候の悪化とともにつり橋が落とされ、第一の殺人が。 嵐の山荘・見立て殺人等々、本格ミステリのギミックがてんこ盛りの、自己言及的ミステリ。
 大介さんがいい人すぎるんですけど!、とあたしは泣きたくなりました。
 しかし、大介さんというのはそもそもそういう人なのだ。
 社会という日常生活に気分・精神的に適応できない人々に対する彼の優しさは最初からずっと一貫しているではないか。 だからこんな場合によってはイライラしてしまうカオルさんの言動にもまったく動じず、ただただはげまして支える。 なんとありがたい人であろうか。
 あたしの読み込み具合が<伊集院大介初期三部作>+『伊集院大介の冒険』(当時は講談社ノベルズ版)、あと『猫目石』(伊集院大介と『ぼくらの時代』の栗本薫くん共演)あたりがいちばん深いというのもあるけれど、このへんで大介さんのあたしの中のイメージが固まってしまった感がある。
 だから、『天狼星』以降(つまりシリウス登場以後)、「どうも大介さんのイメージ、変わっちゃったな・・・」と思っていて、『天狼星』前と後ではなんとなく違う人という目で見るようになってしまっていた。 でもそれは、ただ単にあたしの好みの問題で、好きだと思っていた人の意外なところを見たせいで「そんな人だとは思わなかった」とひいていたのかな・・・と今ならば気づく。 『絃の聖域』の由紀夫くんもそうだし、『天狼星U』の胡蝶なんか最たるタイプではないか。 ただ、かつてのあたしは嫉妬していただけなのですよ。 ほんとにすみません。
 となれば、『冒険』や『猫目石』も読み直したくなっちゃうな・・・(そして今、『絃の聖域』を読み直しています)。
 なんとなく、名探偵としての、個人としての彼をいちばん堪能できるのは短編集かもしれないと思ったりもするので(エラリー・クイーン的ロジックも炸裂)、『冒険』・『新冒険』・『私生活』が優先かしら。

ラベル:国内ミステリ
posted by かしこん at 20:04| Comment(0) | ☆ 読んじゃいました | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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