2017年12月30日

ビジランテ

 入江悠監督、またもインディペンデンスに帰ってくる!
 2017年に観た映画、最後がこれとは・・・なんとも印象深い年になっちゃいました。 (← 体調を崩す前に観たものです。 なのでほんとはもっと年内に映画を観に行く予定だった・・・)

  ビジランテP.jpg 容赦しない運命が暴れ出す

 多分関東エリアの閉鎖的な地方都市(埼玉県と思われるがはっきり言及されてはいない)にて、市議会議員をしている暴力的で強権的な父親(菅田俊)のもと、一郎・二郎・三郎の三兄弟は父親の影におびえる日々を送っていた。 父の暴力に耐えかねた長男・一郎が出奔し、30年の月日が流れた。 二郎(鈴木浩介)は父親の跡を継いで市議会議員となっており、三郎(桐谷健太)はデリヘルの雇われ店長として糊口をしのいでいる。 父が死んだことで二人は少し楽になった気がしたが、ある日、姿をくらましていた一郎(大森南朋)が戻ってきたことで、あやういバランスが崩れ出す・・・という話。
 <ビジランテ>とはよく「自警団」と訳されるが、「基本的に自分たちのことは自分たちで守るーというかカタをつける、という発想」と考えたほうがわかりやすいかも。 あまりにあまりな展開に、「警察呼べよ」と言いたくなる人もいるでしょうが、地方の小都市(「市」と名がついていても、県庁所在地でもないただの市、特定の産業も収入もない市)においての独特な閉塞感をここまで容赦なく描いてしまわれては・・・地方出身者として悲しいものがある。 でも、ある種のリアルなんです。 ただ「腐敗」という言葉では足りない、これにリアルさを感じないのは、大都市・金銭的に余裕のある街でずっと生活している人だけだ。

  ビジランテ4.jpg 最後まで謎の存在、一郎。 彼の描かれていない過去がどれだけ壮絶なものだったか想像することしかできないが・・・15・6歳で家を出て一人で生きてきたのだ。 それだけで一本の映画になるだろう。
 ただ一郎さん、服のセンスがダサすぎ! ・・・ファッションとは無縁の世界で生きてきた(衣食住のうち衣の優先順位が低かった)ということなのかもしれませんが。 何も語らない、けれど目で訴えてくるその佇まい、『アウトレイジ 最終章』のときより大森南朋はいかれた人でした。

  ビジランテ2.jpg 意外に主役、三郎。
 クレジット的には三人のトリプル主演ですが、実質的には桐谷健太が主役といってもいいかもしれないくらい出番も多く、セリフも多い。 その分、三郎くんはいちばんひどい目に遭うことになりますが・・・(本人も、まわりの人も)。 末っ子っぽい純粋さを失いきれないところ、彼の新境地というか、現時点での代表作と言えるかも。

  ビジランテ3.jpg いちばん意志が弱いように見える二郎。
 子供の頃からあれだけ父親をきらい、恐れていた三人なのに、結局その跡を継ぐことになった二郎。 一郎が出て行ってしまったからかもしれないけれど、残された二人は協力し合うしかなく、町を出そびれてしまったのかもしれない。 この町に順応しているように見える二郎(妻も子供もいるしね)、出ていけないことに鬱屈しているのか、あきらめているのかわからない三郎。 対極的な兄弟ですが・・・一郎も含め、それぞれの立場でしか見えないものがある、というのが痛い。 女同士ならまた違う形になったのかもしれないけれど、男兄弟はなかなか話し合わないよね・・・。
 年齢的なものもあるだろうけれど、多分、二郎は一郎と三郎に挟まれる形で、いちばん広い視野を持ちえたのかもしれない(一郎失踪後は長男の役割を求められただろうし)。 けれどこの町限定なのが惜しいんだけど。

  ビジランテ1.jpg 三人がぶつかるときは、いつも冷たい川だった。
 <暴力>は常に重低音でこの物語の根底に存在している。
 それを誰よりも憎んでいるのに、暴力で育てられてしまったからそれ以外の方法がわからない、と言ってしまえば「よくある話」になってしまうけど、愛憎の絡まり具合がそれどころじゃない。 周囲の人間も誰も彼らに手を差し伸べないーむしろ、父親と同じような価値観で生きている人たちばかりだから救いなどあるわけがない。
 オリンピックだ、おもてなしだなどとはしゃいでいる場合ではないのである。 地方はそれほど疲弊している、この町を出ていく力もないほどに。 この町で生きていくためには体制に取り込まれるか(それは容易に他者排斥へと変貌する)、ときに身の危険をかえりみず抵抗していくしかない。
 そうなれば、頼れるのは自分しかいない。
 <ビジランテ>とは、法も秩序も存在しない世界で集団で生きることの恐怖、その集団に背を向けることの恐怖でもある。
 物語は三兄弟のそれぞれの選択について描いたけれど、三兄弟に限った話じゃないという恐ろしさ。
 これは財政難に苦しむ地方のどこで起こってもおかしくないことで、これが日本の現実なのだ。

posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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