2017年10月30日

スチーム・ガール/エリザベス・ベア

 これはちょっと間違えて手に取ってしまったことはすでにお知らせの通り。
 『スチーム・ガール』と聞いて「蒸気の女の子?」と考える人はそんなにいないとは思うが、「スチームパンクSFの世界観で女の子が活躍する話ね!」と瞬時に気づける人はまごうことなきSFファンである。

  スチームガール.jpg 描きたいのは<ガール>です!

 ということでさっそく読みだす。 買ってすぐの速いペースは最近珍しい!
 舞台はゴールドラッシュに沸くアメリカのある港町ラピッド・シティ。 物語はスチームパンクであり西部劇でもあり、切り裂きジャック的な殺人事件も絡ませ、高級娼館で働く人々の暮らしを活写しつつ、語り手の<わたし>の成長を鮮やかにキラキラと描き出す。
 ちなみに原題は“Karen Memory”。 カレン・メメリーは主人公の名前。
 男らしさとか女らしさとかにこだわることなく、自分を偽らず正直に生きる人たちはたいていなんらかのハンディを抱えている社会的弱者。 対して悪役たちは文化的男女の違いに忠実で、頭が固くてあくどいから権力を手に入れている。 そんな一部紋切り型の構図がまったく気にならないほど、<わたし>たちは生き生きとしていてとても前向きでナチュラル。
 この感覚、今でこそ必要というか、これが常識になってほしいというか。
 カレンもつらかったらすぐに泣くし、気持ち悪いものを見ちゃったら吐きそうになるし、職業が縫い子である以上他人に見られることをいつも意識しているはずなのに、そのオンオフスイッチの切り替えは早い。 でも亡き父親を思い出させてくれる副保安官の存在や、なにより恋するプリヤのおかげでカレンは勇気や強さのようなものをどんどん自分で勝ち取っていく。 その姿が爽快。
 ラノベと勘違いしちゃってすみません(別にラノベを下に見る気はないんだけど、一部表紙があまりにもマニア向けなんで知らないとちょっと引いてしまうのです)。
 描かれている時代は19世紀だけど、21世紀だからこそ生まれたスチームパンクSFでした。
 読後感も最高!
ラベル:SF
posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | ☆ 読んじゃいました | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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