2017年10月25日

コードネーム・ヴェリティ/エリザベス・ウェイン

 ずっと「早く読みたい」と思っていたのだが、いろいろ諸事情で後回しになってしまい(そういう本は他にもいっぱいあるんだけど・・・)、図書館の予約優先物を返し終わったタイミングでやっと読み始めた。
 で、10ページ行く前に第一部の語り手の置かれている現状が行間から伝わり、もう泣きそうになっている(あぁ、この感覚、ジョン・ハートの『ラスト・チャイルド』にも似ている)。 これはもう、やられてしまいそうな予感。 そしてその予感は、的中。

  コードネームヴェリティ.jpg 「謎」の第1部。「驚愕」の第2部。そして、「慟哭」の結末。 ← 帯の文句。

 舞台は第二次世界大戦時のナチス支配下のフランス。 若きイギリス特殊作戦執行部員がスパイとして捕虜となり、過酷な尋問(拷問)を受けている。 親衛隊の大尉に、彼女は尋問をやめてほしければイギリスに関する情報を手記にするよう強要され、負ける。 毎日綴られるその手記には、彼女の親友である女性飛行士マディの戦場での日々が、まるで小説のように書かれていた・・・という話。
 彼女は何故、手記を他者の視点で物語風に書いたのか、というのがこの小説のミステリとしての核。 けれどあたしはこの物語自体に心打たれてしまい、ミステリであろうがなかろうがどうでもいい、という気持ちになった。 いえ、ミステリを軽んじたのではないのです。 ジャンル小説の枠を超越しているというか、それと意識させなかったというか。
 これは、二人の少女の運命という名の<友情>の物語なのだ!
 そういうキーワードにあたしが弱いということもあるのだけれど・・・すごいよかった!
 エドガー賞YA部門受賞作とのことですが・・・またしても諸外国のYA小説の層の厚さに打ちのめされる。 日本にはないジャンルだからな・・・(それにあたるのがマンガなのだと思っているけれど)。 児童書と一般書の間が開きすぎなんだよな〜、そこを埋めるのがライトノベルになってしまっているんだろうけど、ジュブナイルと呼ばれていた時代と違って今はジャンルが固定化しすぎな気がして。
 まぁ、それはともかく。
 二人の少女、と書いたけれど、実際の二人の年齢は明らかにされていない。 無線技士やパイロットとしての技術を身につけ、スパイ活動までするのだからそれなりの年齢かもしれないけれど、戦時下で人が足りないから能力のあるものをどんどん抜擢していったという雰囲気でもあるので、あたしは16歳〜18歳くらいではないかと思った。 手記を書かされる彼女が涙で文字がにじんでしまうのも、のちのちそれを読むことになる彼女が大泣きをしてしまうのも、その若さ故だと感じたし(つまりはそんな若い人たちが参加させられる戦争というものの悲劇と、そんな折には感情を封じ込めるべきとされる無言の圧力に対する抵抗でもあるといえる)。
 イギリスの階級社会故に、もし戦争がなかったらこの二人は知り合うことがなかったのかもしれない、と思うのもまたやるせない。
 勿論フィクションではありますが、作者は可能な限り歴史に忠実に描こうとしているし、イギリス人少女が主人公でも枢軸国側を絶対的悪として描いてはいない。 戦争そのものがダメなんだ、レジスタンスという形でも戦争を終結させようとした人々の思いを忘れてはいけない、という気持ちがずっと根底にある。 だからすらすらと読めてしまったのかもな(一応YAだから残酷描写は少し控えめ、ということもあるかもしれない)。
 「飛行機を飛ばして、マディ」、そして「キスして、ハーディー!」。
 不意にこの台詞を聞いたら、泣いちゃいそう。
 今年もいろいろ読んできたけど・・・これは忘れられない一冊になりそう。

ラベル:海外ミステリ
posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | ☆ 読んじゃいました | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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