2017年10月18日

スイス・アーミー・マン/SWISS ARMY MAN

 タイトルの『スイス・アーミー・マン』とは、スイス・アーミー・ナイフ、いわゆる<十徳ナイフ>からきた言葉(だと思う)。
 使い方がわからないとどうしていいかわからないけれど、どう使えばいいのかわかればこの上なく便利という道具。
 船が難破し、無人島に一人流されてしまった主人公が出会ったのは、そんな多機能死体だった・・・というサンダンス映画祭出品作らしいワンアイディア勝負の話。 でもそれを、ポール・ダノ&ダニエル・ラドクリフでやっちゃうっていうんだから、やるほうもやらせるほうも、引き受けるほうも勇気ある。

  スイス・アーミー・マンP.jpg 大切な人が、待っているんだ。
    世界が絶賛した奇想天外な青春・サバイバル・アドベンチャー!!

 船旅に出ようとしたのか(詳細は不明)、結果的に難破して遭難、無人島に辿り着けたはいいものの、まったく助けが得られない状況に絶望したハンク(ポール・ダノ)はもうこれまでと、無人島に流れ着いてくるごみを使って首つり自殺をしようとしていた。 紐(?)を首にかけ、べこったバケツを蹴ろうとしたとき、海岸に流れ着いたらしき男性(ダニエル・ラドクリフ)が目に飛び込んでくる。 慌てて駆け寄ろうとしてバケツから落ち、首をつって死にそうになるが、急ごしらえのものなので割とあっさり切れる。 咳き込みながらその人のもとへと辿り着くと、彼は死んでいた。 しかしその死体からは腐敗ガス(?)が出ていて、水上バイクのように動き出す。 それに飛び乗ったハンクは無人島から脱出して大陸側か人が住んでいそうな大きな島に無事移動できた。 しかしその海辺は森に覆われていて、人里に到着するまで先は長そう。
 しかしハンクはメニーという名前の死体とともに帰ろうと努力する・・・という話。

  スイス・アーミー・マン1.jpgスイス・アーミー・マン3.jpg なにしろ相手は死体なので、こんな感じで苦労しながらの移動。
 明らかに邪魔というか足手まといなんだけど、それだけハンクにとっては孤独のほうが重い。 おまけにいろんなことに役に立ってくれるので手放したくないというのもわかる。 ロビンソン・クルーソーとフライデーの関係をさらに三・四歩前に進めた感じですかね。
 ただ、<生者>と<死者>を明らかにわける一つの大きなラインをたやすく飛び越えてしまうので・・・「ほんとに死体ですか?」という疑念がわく。 それがわかるのがもうちょっとあとだったら、ハンクの妄想なのかメニーが謎の研究の成果物なのかなどなどいろいろ想像できたんだけど。 でもそんな死生観の違いもまた文化なんだろうか。

  スイス・アーミー・マン6.jpg いつしか深い友情が。
 ハンクは意外と器用で、森にあるものでいろんなものを作る。 旅に出る前、バスでよく会う(でも会話はしたことない)憧れの女の子の話をするために、実際に座って位置関係を説明できる架空バスをつくってメニーも乗せる。 そのハンドメイド感は、道に迷っててそもそも助けてもらえるのかわからない状態にいるのにほのぼの感を強く打ち出していてファンタスティック! ダニエルズ監督(二人のファーストネームがダニエルなので、そういう名にしたものと思われる)の演出には、初期の頃のミシェル・ゴンドリーのポップさを思い出させるものがあるかな、方向性は違うけど。
 「この話って一体どこに着地するんだろう? いや、そもそも着地するのかどうか」と二人の行く末とはまた別の意味でハラハラさせられたんだけど、ちょっとBL展開っぽくなったのにはびっくりした。 正確には片方が女装するのでBLではないのかもしれないけど・・・でも、極限状態において生じる信頼関係とは、ある意味恋愛感情よりも強く心に突き刺さるものなのかも。

  スイス・アーミー・マン4.jpg ラドクリフくん、死体役がはまりすぎ。
 『ハリポタ』のイメージを払拭するためか、変な映画を選んで出ている気もしないでもないが・・・(『ホーンズ』もそうだったけど)、多分もう働かなくても一生食べていけるだけのお金は稼いだんだろうから、実験的な映画に優先的に出るという姿勢は彼の俳優としての心意気なんだろうな、と感じる。
 そしてポール・ダノも同じく子役出身で、大ヒット映画には出てないけど賞レースに絡むような重厚な作品に出ることが多く、同じような年頃の青年俳優になった今、それまでのキャリアの積み重ね方が全然違う二人がこうやってほぼ二人芝居をやっていることに勝手に感慨深くなってしまいました。 二人はこの映画の撮影中、仲良くなったかな?

  スイス・アーミー・マン5.jpg メニーの歯のおかげで伸び放題だったヒゲや髪をキレイにできちゃった。 ポスターの人と同一人物とは思えない。
 突き詰めれば「生きていることに絶望していた人間が、“生きるよろこび”を見い出して再出発する」という話なんだけど、そのためにこんなへんてこな展開を用意するか・・・もしくは、このヘンテコ設定を生かすために意外に壮大なテーマを組み立てたのか、どっちだろ? ふとそんな気がしてしまう独創性はすごい。 そりゃ、ポール・ダノもダニエル・ラドクリフも出演するって決めちゃうよね。
 しかもエンディングは意外に感動的というか・・・力技ではあれどねじ伏せられちゃった。 十徳死体の意味はさっぱり分からないんだけど、妙なさわやかさに襲われる不可思議さ。 納得いかないことはあるけど、でもなんか面白かった。 忘れがたい一品。

ラベル:映画館 外国映画
posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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