2017年07月14日

ポーの一族 春の夢/萩尾望都

 『ポーの一族』、40年振りの新作!、ということで掲載雑誌が即日完売で全然手に入らない・・・という事態が続いた昨年の悲劇(?)をへて、待望の単行本化!
 実は新連載第一回の『月刊Flowers』は電子書籍化されていて、のちにあたしはそれを購入したのだけれど・・・連載一回目しかないわけですから、「こ、この続きは!」と飢餓感が半端なかった。 いっそのこと読まない方がよかったのかもしれない、と思うほどに。 でも山岸涼子の対談や『訪問者』の再録など、読みどころはあったので損した気はしなかった。
 熱狂的なファンの方々からは「絵が、線が全然違う」という文句もあったようですが、あたしはずっと萩尾望都マンガをリアルタイムで読める分は読んできたので(多分、『マージナル』あたりで追いついた気がするので、それ以前の作品の線の細さなどの違いをあたしはその段階で受け入れている)、あたしは全然気にならない。 そりゃ40年もたてば絵が変わるのは当たり前だし、むしろはっきりした線のおかげで「子供のはずなのにずっと大人みたい」と思われるエドガーたちの特徴が強調されたように思う。

  ポーの一族 春の夢.jpeg 『春の夢』はシューベルトから。

 ときは第二次世界大戦末期。 空襲を避け、イングランド郊外の田舎町にやってきたエドガーとアランはある山荘で暮らし始める。
 町中でエドガーは印象深い少女を見かける。 のちに、その少女ブランカは弟とともにナチスドイツから逃れてきたドイツ人(実はユダヤ人)であることがわかる。 過去から逃れてきた姉弟、しかし二人の心には幸せだった時期の記憶も残っていて・・・エドガーはその悲しみに共鳴する。
 これだけだったら、これまでの流れで断片的なエピソードのひとつだったかもしれない。 だが、物語は大きく転換を見せる。
 ポーの村にいる他の一族とエドガーのつながり、一族ではないバンパイア(バンピール?)・ファルカの存在、ついに大老キング・ポーの登場!、など、これまで触れられてこなかった一族の秘密について少しずつですが出てくることに違う種類のどきどきが。
 この物語はこれ一冊で終わっていますが、来年から新たな『ポーの一族』の連載が始まる様子。 叙情的ではなく論理的に進む話になるかもしれませんが、それもまた時代の変化というか、そういう流れのほうが求められているような気がするし(むしろそれはあたしの好みである気がする)。
 個人的にはアランの我儘さ・きまぐれさがちょっと・・・だったあたしとしては、本作でその理由がわかって納得でした(子供だったあたしは理解できてなかったです、ごめん)。 でもアランのそんなある種の無邪気さがエドガーの救いになっていたことは感じ取っていたので、それが確信に変わってよかったです。 ブランカの変容は、『すきとおった銀の髪』にもつながるようで・・・切り口は変わってもやはり世界観は揺るがないのだとためいき。 ストーリーテラーとしての萩尾望都の衰えを知らない確かなチカラを思い知らされました。
 だって、あたしが生きてきた時間よりもずっと長く<現役>なんだもんなぁ。
 常に期待は裏切られる、いい方向に。 そして常に度肝を抜かれる。

ラベル:新刊 マンガ
posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | TrackBack(0) | ☆ 読んじゃいました | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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