2017年03月22日

相棒 劇場版W 首都クライシス 人質は50万人! 特命係最後の決断

 『相棒』の劇場版のサブタイトルは土ワイ時代を思わせる。
 なんでそんなにベタなのか? 東映のドル箱的存在になっても、ゲストの顔触れがどれほど豪華になろうともキャスティングでだいたいのことが想像できてしまう、というところもまた土ワイ的。 原点を忘れず、ということなのか、むしろベタであるほうが受けるから、ということか。 ともかく、監督・脚本とも新しい顔ぶれ(とはいえお二方ともテレビシリーズを手掛けているが)になった4作目、そのベタさ加減をどうまとめるのだろう、という興味で。
 いやいや、いちばんの目的は、神戸くんを見たいがためですけど、なにか?
 テレビドラマの映画化にはあたしはどちらかといえば否定的というか、マイナスの印象ですが・・・好きなドラマだったら<お祭り>として受け入れられることに気づきました。 勝手なものです。 『相棒』の映画もここまできたら、ある意味恒例行事ですしね。
 テレビシリーズ放送中の劇場公開は2作目に続いて。 でもそれと違ってストーリーに直接絡むわけではなく、謎の組織<バーズ>の存在を事前告知していたというくらいでしょうか(あとは警視庁・警察庁内の力関係ね)。

  相棒劇場版4−P.jpg あなたは、生きるべきです。

 警視庁・特命係の杉下右京(水谷豊)と冠城亘(反町隆史)に、国際犯罪組織<バーズ>とそのリーダーと目される<レイブン>を追って来日した国連犯罪情報事務局の元理事マーク・リュウ(鹿賀丈史)の補佐をしろという指示が出る。 マークの依頼を受け、<レイブン>の情報を掴んだ現役の国連局員のモリス(ダンテ・カーヴァー)から「天谷克則(あまがいかつのり)」という名前が伝えられるが、3人が駆けつけたときにはモリスはすでに殺されていた。 そして、7年前に起きた在英日本領事館関係者の集団毒殺事件で、唯一の生存者だったがその後、<バーズ>によって誘拐されてしまい、現在まで生死不明であった当時の外交官の娘、鷺沢瑛里佳(山口まゆ)の現在の姿の動画がアップされる。 何故今、彼女の姿をさらしたのか。 <バーズ>の目的は一体・・・という話。

  相棒4−4.jpg 7年前の事件について感想を述べる峯秋さんの口調がちょっと金田一さんが入っていて、ついニヤリ。
 冒頭、イギリスにある日本領事館で起こった集団毒殺事件が少女の目線で描かれるのだけれど、建物はゴシック様式でありながらその描写はまるでキューブリックの『シャイニング』(ホテルの廊下のシーン)を思い出させる。 橋本一監督はあまり作家性の強くない、来た仕事はなんでも受けますという職人タイプの人かと思っていたけれど、過去作品へのオマージュ入れちゃう人なんだな、と感じたりして(ということは『二流小説家』での突然の『砂の器』も、あれもオマージュだったのかな。 あまりにそのまんますぎて引いちゃったんだけど。 ということはオマージュを忍ばす手法も洗練されてきているということなのかも)。
 後半、右京さんが車いすに乗って独房(?)を訪れるシーンがあるのだけれど(当然、冠城くんが押してます)、カメラが檻のこちら側にいて、右京さんは向こう側にいるにもかかわらず、右京さんの前に鉄格子があるように映るそのショットでは、右京さんがまるで『羊たちの沈黙』のレクター博士のように見えた。 これって、「杉下右京の正義は暴走する」へとつながる不気味さの暗示ですかね?!
 まぁ、それはともかく、今回のゲストは鹿賀丈史さんです。
 てっきりこの役のために髪を染めたのだと思っていたけれど・・・今まで白髪染めをしていて、やめてみたらこうなってた、らしいです。

  相棒4−2.jpg あ、神戸くん!
 マーク・リュウは国際派なので、ダークスーツが基本の日本の警視庁の人間たちの中にあって明るい色のスーツ着ちゃうけど違和感ないね! 長台詞多かったですが、しっかり<相棒ワールド>にはまっていたのがさすがです。 まわり、舞台系の人が多いからかなぁ。
 ちなみに<暴かれる国家の罪>ですが、『劇場版V』での主張があまりに反日的過ぎて(というかそういう主張が強すぎて肝心の事件解決の比重がおろそかになったため)コケた、という反省をいかしたのでしょうか、「その時代故のどうしようもなさ」に重点を置いて特定のなにかを非難しない、というバランス感覚で乗り切っていた感があり・・・描かれる内容は架空の出来事でしょうが(でも近いことはあったのか?)、全然関係ないし違うのにあたしは『南の島に雪が降る』のエピソード(これは実話)を思い出してしまったりして。
 それは、フィクションでも思いがこもっていれば事実に近付ける、という証明ではないかと思う。
 あまり事件について語るとネタバレになるので、<お祭り>らしくキャラクターの話で盛り上がりたい。

  相棒4−5.jpg 米沢さん!
     「となれば、そこはやはり米沢守!」 「何故このタイミングでフルネーム・・・」
 出番は少ないながらも、米沢さんの右京さんへの複雑怪奇なねじれた愛情(ずっと尊敬してきた相手だけれど、オレってやっぱり都合よく利用されているだけ? いやいや、お役に立てるならそれでいい・・・でもやっぱり認めてほしい! 認めてくれないならもう付き合うのやめる! でも・・・)が確認できました。
 「男の嫉妬は女よりも深くて醜い」とはよく言われますが・・・自己承認要求もこじれちゃうと大変なのね。 あぁ、米沢さん、かわいそう。
 それもわかった上でやっぱり米沢さんを利用する(本人は頼っているつもりなのか?)、右京さんはひどい人です。 それともフルネームで呼ぶことで謝罪の意を含めたつもりとか?
 その昔は「カミソリ右京」とか呼ばれてたくせに最近はすっかり人柄が丸くなっちゃったように見せて、完全無欠の人のようになってはおりますが、本来この人は「他人の心を慮れない人」なんですよ! 亀ちゃんや神戸くんたちのおかげでだいぶ優しくはなったものの、むしろ「自分が信頼する相手には更に気を遣わない」という「釣った魚にえさをやらないタイプ」なわけですよ。 それがわかっていても怒りたくなる米沢さんの気持ち、わかるなぁ。
 神戸くんは今警察庁で、日常的に右京さんに会えない環境にいるから「好きでしょうがない」オーラ出してますけど(まぁ、神戸くんはもともと誰かへのマイナスの感情を表に出す人ではないし、特命係時代も右京さんと考え方は違ってもその“違い”を尊重していたしね)。

  相棒4−6.jpg もはや安定感を醸し出す4ショット。
     やはり右京さんはグレー系のスーツが似合いますね。

 北九州でのパレードの撮影が大変だった、みたいな話をいろんなところでされていますが、正直『ラ・ラ・ランド』のオープニングに比べたらそこまですごいとは思えなかったです、すみません(そもそも比較してはいけないのかもしれないけど)。 まず銀座に見えないし。 日本での大規模ロケの限界を感じます。 でも日本各地で<映画村>ができたり、<映画の街>を名乗るロケに協力的な地域が増えてきたのは、LAにちょっとでも近付く足掛かりになるようでうれしいです。 各地にとっては町おこしの意味もあるみたいだし(神戸市も映画撮影の誘致には比較的積極的で、任意団体が神戸シネマガイドというロケ地マップを毎年つくっています)。
 ちらっと幸子さん(鈴木杏樹)が登場したのは、「ここは銀座」であることを強調したかったためですかね(あと、すんなり携帯電話を貸してくれる人が必要だった)。

  相棒4−7.jpg 右京さん、走る!
 傍若無人な右京さんですが、『劇場版T』同様、そんなに助走なしでガードレールをさっと飛び越えることができ、前傾姿勢で走る姿も相変わらず(しかも結構早い)、普段鍛えている気配がまったくないのに運動能力が衰えないのは何故なのか? 頭脳を鍛えている分だけ、とっさの場合は運動神経に十分な指示が出るようになっているのか? 謎です。
 「一応、僕も頭脳派なんで」と普段は積極的に乱闘などには加わらない冠城くんも、実はできる人なのでしょう。 設定的にこの事件のときはまだ彼は法務省から出向していた時期、警察学校の訓練を受けるのはこの先のことなので、Season15以降はときどきアクションにも期待したいところです(アクション重視では『相棒』ではなくなっちゃいますが・・・捜査一課の伊丹・芹沢両名と協力しての捕り物とか、いいですねぇ)。

  相棒4−8.jpg なんか、こういう役多いよなぁ・・・。
 そして哀しきテロリスト(北村一輝)。 彼は佇まいだけで「絶対何か理由があってこういうことをしているのだな」と感じさせてしまうのがうまい。 明らかに事情があるとわかっているので、完全な悪役としては見れず、彼の背景に思いを馳せてしまう。
 そういう意味でキャスティングに文句はないのですが・・・よく考えるとところどころツッコミどころが(汗)。 まぁ前作が結構ひどかったし、それを差し引いても今作のまとまりは過去の劇場版の中ではいちばんかなとも思うので・・・キャストの熱演にごまかされている感はありますが。
 ただ監督が変わったため、これまでならここをもっと重要視して撮りそうなところを比較的あっさり映しちゃったり、スローモーションが多用されていたりなど、観客側も和泉監督の画づくりに慣らされていたことを自覚しました。 太田愛さんの脚本も、人間の情といった部分を核にして書く人だし。 キャストだけでなくスタッフ側も世代交代ということなのかしら。
 ただ、劇場版となるとスケールを大きくしないといけないというプレッシャーがあるのか、それが今後重荷にならないことを望みます(お説教抜きで、本格的クローズドサークルミステリーをやってほしいのだけれど・・・それはテレビシリーズのスペシャルで十分なのか)。
 なんだかんだいって、世界レベルでみれば日本は平和なほう。 だから過去の過ちを振り返ることができる余裕がある、ということなのでしょうか。

  相棒4−3.jpg 意外にウマの合いそうな二人。 ともにエリートながら種類がちょっと違うところが。
 実は隠れて飲みにいってそう。 そんで右京さんの話題で盛り上がるんだけど、「こいつ、杉下さんのことを右京さんって呼んでるんだ・・・」と神戸くんは心穏やかではいられないに違いない(個人的妄想)。

 思っていたより神戸くんの出番は少なかった・・・(『劇場版V』よりは多いけど)。
 でも、特命係時代の空気感にすぐ戻れる・右京さんの望むことをすぐ察することができるあたり、彼もやっぱりできる人で。 亀ちゃんとは違う意味で右京さんも神戸くんのことを信頼していて会えたらうれしいくせに、それを面にあらわさないんだから・・・右京さん、ツンデレ?(いや、デレがないか・・・)。
 その分、神戸くんがデレデレしっぱなし、ってところが大変かわいらしくて。 米沢さんと違ってこじらせてないからですかね(「利用されている」ではなく「協力できるのがうれしい!」って感じだから)。
 イタミン言うところの<特命係ネットワーク>は今後どうなっていくのでしょうか。
 いろいろ含むところが多そうなSeason16を待ちたいと思います。

ラベル:映画館 日本映画
posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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